自動車型録美術館

フェラーリ512BB/フェラーリのカタログは、問答無用。実に文字が少ない【自動車型録美術館】第5回

第5回フェラーリ512BB/FERRARI 512BB

小さめのクルマが続いてしまいました。このあたりでフェラーリを。まずはBBです。

サイズは縦×横が27.3cm×H27.1cm。全13ページで、P3、11がトレーシング・ペーパーの様な薄紙、P6、9、12が折り込みページ。

180度V12エンジン

さすがにこの頃のクルマになると、発売当時の雑誌記事を鮮明に覚えています。今でもはっきり記憶に残っているのは、バンク角180度のV12エンジン(※)についての記述。

(※)編集部注:フェラーリの公式HPでのBBエンジン形式表記は「水平対向エンジン」とされています。

BBはご存知のようにベルリネッタ・ボクサーの略なのですが、そのボクサーとは本来、向かい合うピストンの動きがボクシングの打ち合う様子に似ていることに由来する愛称です。

ところがフェラーリのBBはV型エンジンを180度に開いたものなので、対となるピストンはボクサーが打ち合うようには動かないのです。

V型エンジンの特徴は、コンロッドとクランクシャフトを締結するクランクピンが、向かい合うピストンで共有される点にあります。2気筒の場合、V型エンジンではクランクシャフトの凸部はひとつ。一方、水平対向エンジンは、クランクピンが気筒の数だけあるので、2気筒だとクランクの凸部はふたつになります。したがって180度V型エンジンでは向かい合うピストンは仲良く同じ方向に動き、水平対向エンジンでみられる、まるでパンチの応酬のような状況にはならないわけです。そんな知識を授けてくれたのが、ほかでもないフェラーリのBBでした。

フェラーリBBのカタログ

フェラーリBBのカタログに理屈っぽい記載は皆無です。スペックのページ以外、潔く写真だけで構成されています。

この頃のフェラーリのカタログは、正方形に近いカタチで、艶のあるコーティングの施された紙に印刷されています。全く同じ体裁の365GT4BBのカタログと、この512BBのカタログをつぶさに見較べて、両車の差異点を挙げ連ねたりするのも、カタログ趣味の醍醐味のひとつだと思っています。今回は表紙(下のカタログ)だけですが、いつか365GT4BBのカタログも、こちらでご紹介したいと考えております。どうぞおたのしみに。

こちらが365GT4BBのカタログ。512のオレンジに対して、表紙は濃い茶色。

Text:板谷熊太郎 /Kumataro ITAYA カー・マガジン457号(2016年7月号)より転載

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