メルセデス・ベンツ

【徹底研究】メルセデスの電動化戦略と「EQ」

電動化車両の新たなサブブランドを立ち上げ
市販第一弾モデルEQCがリリース!

電動化車両のサブブランドとして立ち上がった「EQ」。その市販第一弾となるEQCが市場投入された。メルセデスの電動化戦略が大きく動き出そうとするいま、同社の戦略やその大義、そして電動化の流れをダイジェストでおさらいしていこう。

 

ひと言で電動化といえどメルセデスの戦略は多様

EV、EVと草木もなびく今日この頃。トヨタが電動化技術を外販すると発表した途端、某TV局は「やがですべのクルマがEVとなる……」と報道。今のメディアは、このような認識なのかと頭を抱えたくなったが、実際に、その大義はいったいどこにあるのか?

Archive 01 Generation EQ Concept
メルセデスの今後の電動化計画を示唆

2016年9月にパリ・サロンで登場した「EQ」ブランドのコンセプトカー第1弾で、EQCのルーツである。このコンセプトカーは、0-100km/h加速5秒以下、最大航続距離500kmを標榜し、コネクテッド、オートノマス(自動運転)、シェアリング、エレクトリック(電動化)の頭文字からなる造語「CASE」とともにお披露目され、メルセデスのその後の方向性を明確に示した。

とはいえ、ガソリン自動車を産んだメルセデスでさえも、電動化強化の勢いは留まることを知らない。しかし、メルセデスのエンジニアに話を聞くと、バッテリーで走るEVだけでは限界があり、Well to Wheel(油井から車輪までの総合効率)という物差しと、LCA(ライフサイクルアセスメント)という物差しで環境負荷を考えるべきだと主張。総合効率では、水素燃料のFCVの方が充填時間や高速走行性においてはバッテリーEVを凌ぎ、プラグインハイブリッドも欧州の中では優遇措置がなされている。

Archive 02 EQA Concept
3ドアハッチバックのコンパクトEV

「EQブランドのAクラス」のコンセプト。’17年9月にフランクフルト・モーターショーに登場した。全長4285mm、全幅1810mm、全高1428mmとコンパクトだが、ホイールベースが2729mmと長い。前後に合計で272psと500Nmを発揮する2基のモーターを搭載する4WDで、0-100km/h加速は約5秒、60kWhのリチウムイオンバッテリーを積み、航続距離は約400km。

このように電動化と言っても様々なシステムが考案され、その用途に応じて使い分ける必要がある。内燃機関だけで走るクルマも絶対数は減ってもゼロにはならないだろう。その上で、メルセデスの電動化は進められているのだ。

Archive 03 Vision EQ Silver Arrow
80年以上前の名車がEVで復活

2018年8月にペブルビーチ・コンクール・デレガンスで初公開され、翌月のパリ・サロンにも登場したEVレーシング・コンセプトカー。1938年に432.7km/hの最高速度を記録したW125のレコードブレーカーにインスパイアされた美しいデザインで、最高出力748psで、バッテリー容量は80kWh、1回の充電での航続距離はWLTPで400km
以上となっている。

EQブランド初の市販EV「EQC」

「EQ」とはメルセデスの電動化車両のサブブランドであり、バッテリーだけで走るEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグインハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と規定している。EQCのジャパンプレミアは桜が咲く前の3月初旬に披露されたが、ここではEQCと家庭を繋げる「EQハウス」という斬新なコンセプトが披露された。クルマと家が電気エネルギーで繋がる時代が訪れたのである。

Archive 04 EQV Concept
次の量産モデルに近いコンセプトカー

この3月にジュネーブ・モーターショーでお披露目された、VクラスのEV仕様を示唆したコンセプト。フロア下に100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、最大400㎞の航続距離を実現。既存のVクラスはFRだが、EQVは203psの電気モーターをフロントに搭載した前輪駆動で、最高速度160km。9月のフランクフルト・モーターショーでは市販バージョンが登場予定だ。

EQCはGLCをベースに開発されたが、そのカットモデルを見ると、エンジンとギアボックスが存在していたスペースにパイプ製のケージが設置されていることに驚く。そのパイプの内側にはフロントモーターが置かれ、上部にはインバーターが配置されている。このパイプ製ケージの役割は、衝突安全においてエンジンと同じ強度を持たせる役割がある。つまりエンジン車と同じモジュールでデザインできると言うわけだ。

Archive 05 EQC
市販開始! 5月には国際試乗会も開催

2016年のジェネレーションEQコンセプト公開から2年で登場したEQCは、「EQ」ブランドとして初の市販EV。全長4761mm、全幅1884mm、全高1624mm、ホイールベース2873mmのSUVで、合計で407psと765Nmを発揮する電気モーターを前後に計2基搭載する4WDだ。リチウムイオンバッテリーはフロア下に搭載され、容量は80kWh、重量は650kgある。1回の充電で約320km(WLTP)の航続距離を実現。出力110kWのウォールボックスなら、40分間で80%の充電が可能だ。

インパネには2つのディスプレイを1枚のガラスサーフェスで一体化した横長のディスプレイを装備。ブルーのアンビエントライトとローズゴールドのアクセントが特徴的だ。

バッテリーは、車体中央に寄せて搭載されている。センターコンソールはシンプルなデザインで、専用設計のMBUXを搭載。充電コネクターの規格は、欧米ではCom
bo、日本ではCHAdeMOとなる。

EQCの加速性能は前後2つのモーターで最高出力402ps、最大トルクは約750Nm。EQCの0-100km/h加速は5.1秒と俊足なので、音がしないAMGなのかもしれない。気になる航続距離は450km。リチウムイオンバッテリーの容量は80 kW/hで、床下に格納されるから、走りは安定していると期待できる。とかくバッテリーEVは環境性能で語られることが多いが、商品の魅力に目を向けると、静かで振動もない高級車に相応しいキャラクターなのではないだろうか。エンジンに魅了されたおじさん達も、新しいモーターの魅力に引き込まれる日が来るのかもしれない。

電動化ソリューションを下支えする燃料電池とハイブリッド

EQ Power
プラグインハイブリッドも拡大中!

E350eやS560eロング、GLC350eといった、メルセデス・ベンツのプラグイン・ハイブリッドがEQパワーと呼ばれる。高性能と低燃費を両立し、レスポンスの良いパワフルな走りと、ロングレンジを実現。EV走行も可能だ。コネクティビティも高レベルで、車外から専用アプリで様々な操作が可能。乗車前にあらかじめエアコンを作動させることもできる。

EQパワーの各モデルは車体後部にバッテリーを搭載。写真のS560eロングは122ps/440Nmの電気モーターを搭載する。充電用ウォールユニットは、日本でも設置可能だ。

 

F-CELL
燃料電池車の可能性もしっかりフォロー

2017年9月のフランクフルト・モーターショーではEQAコンセプトと同時に、GLCをベースにした燃料電池車、GLC F-CELLもお披露目された。現時点ではリース販売のみだが市販モデルである。高効率な水素燃料電池スタックに加えて13.8kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、外部からの充電も可能な「プラグイン燃料電池車」である。

フロア下に容量4.4kgで700バールの内圧に耐えるカーボン製水素タンクを2本搭載。航続距離はNEDCで約430kmを実現。バッテリーの電気でのEV走行は最大51kmとなる。

 

リポート:清水和夫/K.Shimizu、竹花寿実/T.Takehana フォト:ダイムラーAG ル・ボラン2019年6月号より転載
LE VOLANT web編集部

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