メルセデス・ベンツ特集 2019

【徹底研究】メルセデスの電動化戦略と「EQ」

EQブランド初の市販EV「EQC」

「EQ」とはメルセデスの電動化車両のサブブランドであり、バッテリーだけで走るEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグインハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と規定している。EQCのジャパンプレミアは桜が咲く前の3月初旬に披露されたが、ここではEQCと家庭を繋げる「EQハウス」という斬新なコンセプトが披露された。クルマと家が電気エネルギーで繋がる時代が訪れたのである。

Archive 04 EQV Concept
次の量産モデルに近いコンセプトカー

この3月にジュネーブ・モーターショーでお披露目された、VクラスのEV仕様を示唆したコンセプト。フロア下に100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、最大400㎞の航続距離を実現。既存のVクラスはFRだが、EQVは203psの電気モーターをフロントに搭載した前輪駆動で、最高速度160km。9月のフランクフルト・モーターショーでは市販バージョンが登場予定だ。

EQCはGLCをベースに開発されたが、そのカットモデルを見ると、エンジンとギアボックスが存在していたスペースにパイプ製のケージが設置されていることに驚く。そのパイプの内側にはフロントモーターが置かれ、上部にはインバーターが配置されている。このパイプ製ケージの役割は、衝突安全においてエンジンと同じ強度を持たせる役割がある。つまりエンジン車と同じモジュールでデザインできると言うわけだ。

Archive 05 EQC
市販開始! 5月には国際試乗会も開催

2016年のジェネレーションEQコンセプト公開から2年で登場したEQCは、「EQ」ブランドとして初の市販EV。全長4761mm、全幅1884mm、全高1624mm、ホイールベース2873mmのSUVで、合計で407psと765Nmを発揮する電気モーターを前後に計2基搭載する4WDだ。リチウムイオンバッテリーはフロア下に搭載され、容量は80kWh、重量は650kgある。1回の充電で約320km(WLTP)の航続距離を実現。出力110kWのウォールボックスなら、40分間で80%の充電が可能だ。

インパネには2つのディスプレイを1枚のガラスサーフェスで一体化した横長のディスプレイを装備。ブルーのアンビエントライトとローズゴールドのアクセントが特徴的だ。

バッテリーは、車体中央に寄せて搭載されている。センターコンソールはシンプルなデザインで、専用設計のMBUXを搭載。充電コネクターの規格は、欧米ではCom
bo、日本ではCHAdeMOとなる。

EQCの加速性能は前後2つのモーターで最高出力402ps、最大トルクは約750Nm。EQCの0-100km/h加速は5.1秒と俊足なので、音がしないAMGなのかもしれない。気になる航続距離は450km。リチウムイオンバッテリーの容量は80 kW/hで、床下に格納されるから、走りは安定していると期待できる。とかくバッテリーEVは環境性能で語られることが多いが、商品の魅力に目を向けると、静かで振動もない高級車に相応しいキャラクターなのではないだろうか。エンジンに魅了されたおじさん達も、新しいモーターの魅力に引き込まれる日が来るのかもしれない。

リポート:清水和夫/K.Shimizu、竹花寿実/T.Takehana フォト:ダイムラーAG ル・ボラン2019年6月号より転載

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