モータースポーツ

名勝負が繰り広げられた24時間を振り返る「ル・マン24時間レース」リポート

トヨタ2連覇だけではなかった今年のル・マンの見どころ

WEC2018~2019年スーパーシーズンの最終戦として開催された第87回ル・マン24時間レースで、トヨタTS050が昨年に続き同レースでの2連覇を成し遂げた。

WECシリーズは、昨年からシーズンの区切りが変則的となり、2018年はル・マンを含む5戦、2019年は6月のル・マンを最終戦とする3戦、計8戦を2年にわたって行うシーズンとして構成され、現在、唯一ハイブリッドプロトを走らせるトヨタが、メイクス、ドライバーの両タイトルを獲得した。

優勝したトヨタ8号車のクルー。右からF・アロンソ、中嶋一貴、S・ブエミはWECのドライバータイトルも獲得。

現在はWECシリーズの1戦としても開催されるル・マン24時間は、大別するとプロトタイプ(LMP1、LMP2)とGTカー(LM-GTE PRO、LM-GTE AM)によって構成され、LM-P1クラスはハイブリッド動力のLM-P1 Hと内燃機関動力のLM-P1に分けられ、トヨタTS050は前者、ハイブリッドクラスに組み入れられている。

レースはトヨタ7号車がリーダーとなり8号車が2番手で追走するパターンで展開した。

さらに、LM-GTEクラスは、メーカーを対象とするPROクラスとプライベーターを対象とするAMクラスに分けられ、PROクラスは今シーズン、ポルシェ、BMW、フェラーリ、フォード、GM(コルベット)、アストン・マーチンの6メーカーが参戦中。市販GTカーをベースに、熾烈な順位争いが繰り広げられるクラスで人気を集めている。

今年のレース展開は、スピードで勝る2台のトヨタTS050が、終始主導権を握ってリードした。とくに7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)は、予選から僚友の8号車(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ)をリードする速さを見せ、3分15秒497のタイムでポールポジションを獲得。2番手の8号車は0.5秒差の3分15秒908だった。

深夜のピットサービスを受けるレースリーダーのトヨタ7号車。順調に周回を重ねていた。

決勝レースもスタートから7号車がリードを広げ、スタート4時間目にはその差が1分近くとなっていた。もっとも、レースが折り返しを迎える12時間を経過したあたりでは、いったん10秒前後の差に縮まったが、明け方から再びその差は開き始め、レース4分の3を終了した日曜午前9時頃には、2分近いリードを築いていた。

誰の目にも今年のル・マンはトヨタ7号車のレースと映っていたが、チェッカーまであと1時間少しを残す段階でドラマは起きた。トップを快走していた7号車のインジケーターがタイヤ(右フロント)の異常を表示。スローパンクチャーと判断してタイヤを交換。ピットアウトするが、依然として異常表示は消えず、再びピットインして4輪(ユーズドタイヤ)を交換する事態に。

日曜早朝、ダンロップブリッジ下を力強く駆け上がるトヨタ7号車。トップは万全だった。

この2度のピットストップの間に8号車がトップに立ち、残る1時間を走破。懸命に追走する7号車に17秒の差をつけ2年連続でル・マンを制覇すると同時に2018~2019年シーズンのWECドライバータイトルも獲得。トヨタは昨年に続きル・マンを2連覇、メイクス/ドライバーの両タイトルも獲得するWEC完全制覇を成し遂げた。なお、7号車を見舞ったタイヤトラブルは、その後の原因追求でセンサーの配線トラブルだったことが判明。タイヤ自体に異常は認められなかったという。実は7号車、水曜日の予選終了後にモノコック交換を行っていたが、通常3~4日かけて行う作業を20時間弱で済ませる離れ業で対処していた。結果的に、こうした急場の作業がトラブルの遠因になっていたようだ。

あと1時間を残すところでまたハプニング。優勝したのは7号車に17秒差をつけた8号車だった。

 なお、トヨタは2019~2020年シーズンもWECへの参戦を表明。アロンソはチームを離れるが、代わってブレンドン・ハートレーが加入。ル・マン3連覇を目指している。

LM-P1より熾烈な争いを繰り広げるLM-GTE PROクラス

一方、6メーカーが参戦するLM-GTE PROクラスは、見方によっては総合優勝を争うLM-P1クラスより熾烈、激烈なクラスとして注目を集めている。言うまでもなくメーカーの代理戦争となっているからだ。参戦車両はポルシェ911RSR、BMW M8 GTE、フェラーリ488 GTE EVO、コルベット C7-R、フォードGT、アストン・マーチン・ヴァンテージで、いずれもメーカーもしくはメーカー直系のチームが走らせている。

参戦車両は、市販モデルの改造版を前提としていたが、最近はLM-GTE専用モデルが開発投入され、たとえばポルシェ911はミッドシップ方式を採用したりする。また、特定の車両が速くなることを防ぐ目的で、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)による性能調整が図られている。今回も予選終了後に予選タイムを参考にした性能調整が行われ、アストン・マーチンにターボ過給圧制限を課す一方で、コルベットを除くポルシェ、フェラーリ、BMW、フォード、アストン・マーチン5車の最低車両重量を5kg軽減する措置がとられていた。

予選タイムは各車接近し、アストン・マーチンの3分48秒000を筆頭に、フォード、コルベット、ポルシェが3分48秒台、BMW、フェラーリが3分49秒台前半をマーク。この結果を元に性能調整が加えられたため、決勝レースでの混戦が容易に想像できた。

レース後半、コルベット63号車とトップを争っていたフェラーリ51号車がLM-GTE RROクラスを制した。

決勝レースをリードしたのはコルベットとポルシェだったが、1時間目を終了した段階でトップ10が10秒以内で競り合う激戦、混戦の様相を見せていた。こうした熾烈な争いは、レース4分の1を終了した6時間目の段階でも変わらず、トップのポルシェ911から9番手のフォードGTまでが同ラップ、30秒以内の差で競り合う状態だった。

レースも折り返しの12時間目になると、ピット回数の違いから正確なトップを特定することは難しい状況となっていたが、それでも7台が同ラップで競り合い、まったく予断を許さぬ展開となっていた。

こうした状況は、レース4分の3を終了した18時間目になっても変わらず、コルベット63号車をクラスリーダーに、フェラーリ、ポルシェ、フォードGTの6台が依然として同ラップを走る展開。トップ争いはコルベット63号車とフェラーリ51号車が、わずか10秒ほどの差で激しく争っていた。また、この頃になるとBMWとアストン・マーチンが優勝争いから脱落。35秒、50秒の差で追走する2台のポルシェまでが優勝圏内だった。

フェラーリ51号車にわずか50秒遅れでLM-GTE PROクラスの2位に入ったのはポルシェ91号車だった。

この流れに異変が起きたのは21時間目を迎える頃だった。ここまでトップを守ってきたコルベット63号車がアクシデントで後退。フェラーリ51号車がトップに立ち、ポルシェ2台、フォードGTの2台が1ラップ遅れでフェラーリを追う状況に変わっていた。

結局、この流れは24時間目のチェッカー時まで変わらず、ポルシェ2台とフォードGTの1台が、フェラーリ51号車と同じ342ラップでゴール。24時間戦って4台が同ラップ、2位が50秒差、3位が1分7秒差という僅差の展開は、メーカーが死力を尽くした戦いの結果と言えるだろう。ファンの人気を集める理由がよく分かる内容だった。

今シーズンいっぱいでWEC、IMSAシリーズからの撤退を発表したフォードワークスは67号車が4位に食い込んだ。

ちなみに、アマチュアを対象としたLM-P2クラスは、アルピーヌ36号車とGドライブ26号車が中盤までトップを争っていたが、26号車が後退したことで36号車が2番手に1ラップの差をつける368ラップを走って優勝。総合でも6位に入る健闘だった。

LM-P2
Gドライブのアウルス01とトップ争いを繰り広げた末にLM-P2クラスを制したのはアルピーヌA470だった。

また、LM-GTE AMは、ただ1台のフォードGT85号車が終始クラスをリード。トップでチェッカーを受けたが、燃料補給時間、さらに燃料タンク容量の規定違反で失格となり、ポルシェ911RSR56号車の繰り上がり優勝となった。ポルシェとフェラーリが主勢を占めるこのクラスで、フォードGTの快走は光る存在だったが、プライベートチームでは関与しきれない車両規定の部分で失格となったのは、なんとも残念な出来事だった。

終始クラスをリードしていたフォードGTが失格。代わってLM-GTE AMの優勝車となったポルシェ56号車。

リポート&フォト:大内明彦 A.Ouchi
LE VOLANT web編集部

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