国内試乗

【国内試乗】「ラングラー」こそがジープの正統後継車

ここ数年、ジープの販売台数(JAIAデータによる)は、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、BMW、アウディ、ミニ、ボルボに次ぐ7位をキープしている。中でもラングラーは38%のシェアで断トツでヒットしているモデル。昨年登場した新型はCJをオマージュしたデザインを採用したという。ここでは、そのルーツをたどり1983 年式のCJと最新のルビコンを連れ出し、受け継がれてきたジープの血統と人気の秘密を探っていきたいと思う。

連綿と受け継がれた精神とDNAを進化させた唯一無二のデザインと無敵のオフロード性能

第二次大戦時に軍用の小型偵察車として開発された四駆車。愛称として「ジープ」と呼ばれたそのモデルは、戦時下において既に民間用としての転用も考えられていたという。1945年の終戦直後、早速それはシビリアン・ジープ=CJの名で発売された。

JEEP CJ-7

撮影車は’83年式CJ-7。キャブ仕様のV8エンジンということで、被らないように点火系を調整しているほか、社外オプションのフェンダーや、足回りは3インチアップが施されている。

CJシリーズは1945年から1986 年という長きに渡って作られ、世界の各地でライセンス生産も行われた。日本でお馴染みの三菱ジープもCJの一派ということになる。その後、YJ、TJ、JK型と続き、現在はJL型。すなわちラングラーシリーズこそが、ジープのルーツから紐付けられる正統後継車ということがおわかりだろう。

日本におけるJL型のラインアップは4つが用意されており、うち3つが4ドアロングボディのアンリミテッド。ご存知の通り、今日のジープブランドの販売をも支える大ヒットモデルだ。一方で受注生産ながら2ドアショートボディも残されている辺りに、オフローダーとしての精神性が重視するインポーターの姿勢がみてとれる。もちろん極限の悪路走破性能においてもショートボディの優位に疑いはない。それもあってか、搭載されるエンジンはトルクリッチな3.6L V6のペンタスターユニットが選ばれている。そしてアンリミテッドの側で唯一、3.6L V6を搭載するのが、新たに設定されたルビコン。悪路走破性能を高めた伝統のグレードだ。

アンリミテッド・ルビコンは、悪路において強い駆動力を必要とする場面で有効な「ロックトラックフルタイム4×4システム」を装備。岩場や凹凸のある急勾配路を、極低速で地を踏みしめるように進む場面で威力を発揮する。

ルビコンは他の3モデルと異なるロックトラックフルタイム4×4システムを採用。副変速機をローギアード化し、極低速域での駆動伝達力を高めている。加えてデフロックは後軸のみ、前後軸の2パターンが選択可能だ。前後の両アクスルにはタフネスぶりに定評があるデーナ44の最新世代を使用している。また、ルビコンならではの装備となる、前軸のスタビライザーをフリーにすることで前輪のストロークを高めるフロントスウェイバー・ディスコネクトシステムも先代に引き続き採用された。

インテリアには、ルビコン専用のレザーシートや、レッドカラーのインスツルメントパネル(ボディ色がパンプキンメタリックの場合はシルバーカラー)が装備される。

内外装ではサイドステップを岩場でのヒットにも耐えうるロックレールとし、17インチの専用ホイールとの組み合わせとしてBFグッドリッジのマッド&テレーンタイヤを選択。ボンネットサイドの定位置に貼られたルビコンのデカールを見ずとも、悪路志向の仕立てになっていることが伝わってくる。オンロードスポーツカーに例えるなら、サーキット走行を充分に意識したクラブスポーツ的な銘柄ということになるだろうか。

エンジンはスポーツと同じ284psを発揮する3.6L V6エンジンを搭載。

買い物から家族でのドライブまでこなすブラッシュアップ

そんなモデルでありながら、ルビコンは日常域での快適性にも差し障りはない。乗り心地は細かな突き上げも丸く収め、無駄なバウンジングや派手なロールに見舞われることもなくフラットかつスムーズに速度を乗せていく。先代からの大きな進化点である静粛性についても他モデルに劣るところはないが、高速域ではタイヤ由来の高音的なノイズが増すのは致し方ないところだ。その特性を思えば、コーナーでは無理せず、速度は控えめにというのがルビコンの正しい乗り方ということになろう。ちなみにこのモデルはピュアオフローダーでありながら、ACCやブラインドスポットアシストなどのADASも標準で用意されている。

ルビコン専用の17インチアルミホイールには、マッド&テレインタイヤが組み合わされるほか、標準仕様のサイドステップは車体のダメージを緩和するロックレールへと変更される。

ルビコンを含めたアンリミテッドを日々のアシとして扱うに、その敷居は高くない。操作に対する応答の穏やかさは悪路走破において欠くことのできない要素だが、街中での交差点や駐車時などの繊細な速度コントロールには、それが扱いやすさに少なからずプラスとなる。そして新型では後席の居住性も高められており、大人4人のロングツーリングさえそつなくこなしてくれるだろう。相変わらず気遣うことといえば高床ゆえの乗り降りのしずらさや、ロングホイールベースゆえの小回りの効かなさくらいだろうが、それとて絶望的なほどではない。JL型ではバックカメラもスペアタイヤカバーの中央に据えられ、視認の平衡性が高まっている。先代を購入したユーザーの多くに該当するだろう、平日はお母さんが買い物などに使い、休日はお父さんが運転して家族でドライブというファミリーカー的な用途にも丁寧なブラッシュアップの跡は端々みてとれた。

リアシートを倒すと約2,000Lの広大なカーゴルームが出現。

とはいえ、ルビコンの本懐がどこにあるかといえばゴリゴリにハードなオフロードセクションだろう。その名の由来は、ジープが長きに渡って性能指標のテスト地にしているユタ州の山間路にあるが、以前そこを先代のアンリミテッドで走った時は、ロングホイールベースをものともしない強力無比な走破性に心底驚かされた。

独立した副変速機を持つのは、昔も今も変わらぬジープのアイコン。新型ではマニュアルで切り替える伝統的なパートタイム4×4に加え、自動的に前後輪に駆動力を分配するフルタイム4×4システムを初採用。

もちろん、日本で使うにそこまでの能力を発揮する機会は滅多にない。が、とかく独善的になりがちな自動車趣味において、家族や仲間や日常生活との調和をとりながら、ドライビングプレジャーだけでなく自らのポリシーもライフスタイルまでもアピール出来るクルマとあらば、このラングラーシリーズに勝るものはないと思う。

【SPECIFICATION】JEEP WRANGLER UNLIMITED RUBICON
■全長×全幅×全高=4870×1895×1850mm
■ホイールベース=3010mm
■車両重量=2050kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V/3604cc
■最高出力=284ps(209kw)/6400rpm
■最大トルク=347Nm(35.4kg-m)/4100rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=リジット:リジット
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/75R17:255/75R17
■車両本体価格(税込)=5,886,000円
■問い合わせ先=FCAジャパン 0120-712-812

撮影に協力してくださったのは、鈑金塗装からボディカスタムまでを得意とする「HEAT1」の杉山英治さん。今回のCJも杉山さんの手によるもの。お好みのクルマに仕上げてほしい方はぜひご相談を!

取材協力=ヒートワン
TEL=055-987-5047
http://www.heat1.jp

リポート:渡辺敏史/T.Watanabe フォト:郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年8月号より転載
LE VOLANT web編集部

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