
VRやAIを織り交ぜたユニークなアイディアで未来のモビリティ戦略を示すアウディ。将来的にはレベル3の自動運転を可能とする先進技術や最新インターフェイスが盛り込まれたA8及びA7スポーツバック、そしてA6とリリースされたが、それに続く新しいモデルとしてQ8が日本に上陸をした。今回はいち早く実車のステアリングを握る機会に恵まれ、一般公道で試乗を行なった。まずはその第一印象をお届けしよう。
さりげなく表現されたクーペスタイルの美点
世界的なSUVブームのなか、日本でもコンパクトSUVを中心にその勢いは増すばかりだ。アウディも、2006年に同ブランド初のSUVとなる「Q7」を発売して以来、“Qファミリー”のラインナップが急速に拡大。アウディの販売に占めるQファミリーの比率はいまや4割に迫り、2025年には約半分がQファミリーになるという。
そんな重要な役割を担うSUV群において、新たなフラッグシップモデルとなるのが「Q8」だ。全長こそ、Q7よりも75MM短いが、スポーツ性とプレステージ性を高めることで、Q7を超える存在として位置づけられたのだ。
Q8のハイライトは、Q7の基本設計を受け継ぎながら、最新のQファミリーのデザインにクーペスタイルを採り入れたことと、フラッグシップモデルにふさわしい最新のテクノロジーを満載しているところだろう。なかでも、そのスタイリッシュなデザインは、一番の見どころである。
最新のQファミリーには、専用にデザインされた8角形のシングルフレームグリルが装着されるようになっている。さらに、新型Q3以降は縦のバーを強調するデザインとなっており、このQ8にもその流れが受け継がれている。
それだけでも最新のアウディであることが印象づけられるが、加えてQ8では4ドアクーペの要素を採り入れたのが新しい。具体的には、いわゆるサッシュレスドアを採用し、全高がQ7に比べて30mm低められている。リアピラーに向かってアーチを描くルーフラインもクーペらしさを際立たせている。さらにこのQ8では、特徴的なブリスターフェンダーやリアピラーを与えることで、往年の名車「アウディ クワトロ」とのつながりを強調したあたりは、ファンならずとも見逃せないところだ。
個人的には、テールゲートの後端、細いライトストリップの上に設けられる一体型スポイラーが、SUVではなく、まさにクーペの雰囲気をつくり上げているのがとても印象的だった。
やや高い位置にあるシートに陣取ると、高めのアイポイントが生み出す視界の良さにSUVらしさを感じる一方、コクピットは最新のA6やA7と共通のモダンな雰囲気にまとめ上げられている。とくに最新の上級モデルでは、ダッシュボードの中央部分に上下二段のタッチパネルを配したMMIタッチレスポンスを採用し、これまで以上にシンプルで上質なデザインを実現しており、この数年でアウディの上級モデルのインテリアが、さらに大きく進化したことをあらためて実感した。
Q7を超える存在として新たなフラッグシップモデルとなるのが「Q8」
さっそくドライブすると、その走りにも最新のアウディらしさが感じ取れる仕上がりになっている。Q8 55 TFSIクワトロには、過給器付きの3LV6エンジンが搭載されている。同じ3LでもQ7がスーパーチャージャーで過給するのに対して、Q8ではターボチャージャーを用いる最新エンジンを採用。最高出力が340ps、最大トルクが500Nmと、Q7のアウトプットをそれぞれ6ps、60Nm上回るのだ。それだけに、車両重量が2200kgに達するQ8に対しても余裕あるパフォーマンスを発揮し、1500rpm手前あたりの低回転域から豊かなトルクを絞り出してくれる。一方、アクセルペダルを大きく踏み込んだときの加速も爽快で、3500rpmを超えたあたりからさらに力強さを増し、レブリミットの6500rpmまで勢いは衰えない。
一方、スーパーチャージャーに対して、低回転域の反応の鈍さ、すなわちターボラグを心配していたが、このQ8ではアクセルに対するレスポンスが良く、街中でも気持ちの良い運転ができた。Q8には、48V電源システムに加えて、リチウムイオンバッテリーとベルト駆動式オルタネータースターターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムが採用されているが、加速時にこのモーターがエンジンをアシストしているようで、それが低回転域でのターボラグを補っているようなのだ。
もちろん、マイルドハイブリッドシステム本来の機能が燃費の向上に加えて、さまざまなメリットをもたらしている。たとえば、アイドリングストップ時でもエアコンが効くし、エンジンの再始動も軽い。高速走行時にアクセルをオフにすると、短時間だがエンジンが完全にストップするなど、これまでのアイドリングストップ機構とは一線を画する快適さがうれしいところだ。
試乗車はよりスポーティなSラインで、アダプティブエアサスペンションスポーツを標準装備。さらに、285/40R22という見た目にもアグレッシブなサイズのタイヤが装着されていた。しかし、その乗り心地は22インチとは思えないほどマイルドなもので、常用するオートモードで使用する限りは十分快適である。高速道路でも落ち着いた動きを見せる。
感心したのは、オプション装備として選択されていた4輪操舵のオールホイールステアリング。低速では前後ホイールを逆位相に動かしてクイックな動きに、反対に高速では前後ホイールを同位相に動かして安定性を増すというもの。その効果は偉大で、大きな車体であっても意外なほどにも狭い道で切り返しせずにUターンができるほど回転半径が小さいし、一方、高速ではレーンチェンジの安定感が高く、その際のロールもしっかりと抑えられるため、運転し始めると、大きなSUVであることを忘れてしまうほどだ。
もともとサイズに余裕があるQ8だけに、後席は大人が座っても十分過ぎるほどのゆとりがあるし、ラゲッジスペースも、少なくとも私には広すぎるくらいだ。ドイツ本国ではQ7がマイナーチェンジし、このQ8とほぼ同じ内容にバージョンアップしている。そうなると、クーペスタイルのQ8と、3列シートが用意されるQ7という2つの選択肢から、ライフスタイルにあった一台を選べば良いが、よりスタイリッシュなQ8に惹かれるのは私だけだろうか?
【Specification】アウディQ8 55 TFSI クワトロ・デビューパッケージ Sライン
■車両本体価格(税込)=11,020,000円
■全長×全幅×全高=4995×1995×1690mm
■ホイールベース=2995mm
■トレッド=前1685、後1695mm
■車両重量=2210kg
■エンジン型式/種類=DCB/V6DOHC24V+ターボ
■内径×行径=84.5×89.0mm
■総排気量=2994cc
■圧縮比=11.2
■最高出力=340ps(250kw)/5200-6400rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1370-4500rpm
■燃料タンク容量=85L(プレミアム)
■燃費(JC08)=10.3km/h
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前後ウィッシュボーン/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後285/40R22
問い合わせ先=アウディジャパン0120-598-106