試乗記

【比較試乗】「ランドローバー・レンジローバー・イヴォーク vs ボルボ XC40 vs ジャガー Eペイス vs BMW X2」デザインコンシャスなコンパクトSUVはいかがですか?

新しいプラットフォームを採用した2代目イヴォーク

ランドローバーは1948年の誕生以来、そのモデルシリーズ全体にわたり、本格的な4×4を製造する老舗ブランド。今回、コンパクトSUVのレンジローバー・イヴォークがフルモデルチェンジを果たした。イヴォークはコンパクトセグメントの中でも、モダンなエクステリアデザインとオンオフを両立する走破性が魅力のモデル。ここでは、プレミアム感あふれるデザインコンシャスなライバルたちとそれぞれのキャラを比べてみた。

ランドローバー レンジローバー・イヴォーク SE P250:特徴的なクーペスタイルのシルエットをより洗練させた新型イヴォーク。独特の傾斜したルーフラインとリアに向かって上昇するウエストラインが、紛れもなくレンジローバーファミリーであることを印象付ける。

レンジローバー・イヴォークとジャガーEペイスは、エンジン横置きのプラットフォームを共有する従兄弟のような関係にある。でも新型イヴォークはフルモデルチェンジにより、ドアヒンジ以外のすべてが刷新された。PTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャ)と呼ばれるエンジン横置きの新しいプラットフォームは、この2代目イヴォークを頭出しに次期Eペイスなどにも展開されるという。したがって今回の2台に限って言えばもはや遠い親戚くらいの関係になってしまった。

PTAは電動化にも対応可能な設計となっており、新型イヴォークのトップレンジとなる“P300”は2Lの直4エンジンとモーターを組み合わせたMHEV(マイルドハイブリッド)仕様で、床下にコンバータと48Vのバッテリーを搭載している。MHEVはベルトドライブの大型スターター(=モーター兼ジェネレータ)を備えていて、EV走行はできないもののエンジンのアシストや回生ブレーキによる充電ができる。このシステムはメルセデスのBSGとよく似ている。新型イヴォークはこの他に4気筒ディーゼルターボを1種類、2L直4ガソリンを2種類を用意しているので、計4種類のパワートレインから選べる。
4輪駆動システムは前後のトルク配分が60:40をデフォルトとし、低負荷時には前輪駆動となるが、MHEVのP300のみ通常は50:50で、状況に応じて後輪左右に最大100のトルク配分を行う。新しいプラットフォームになってホイールベースが20mm長くなって、後席の足元やラゲッジルームが広くなったそうだが、個人的には乗り心地の向上を期待していた。レンジローバーを名乗るには、やっぱりゆったりとした乗り心地を期待してしまうものの、従来型はそうでもなかったからだ。新型はゆったりというよりも骨太な印象が強い。路面からの入力はそれなりに身体まで伝わってくるものの、ボディやシャシーの剛性感が高いので不快ではない。エアサスを使わず、それでもレンジローバー並みのオフロード走破性も兼ね備えたサスペンションとなると、乗り心地はこれくらいでもやむを得ないのかもしれない。操縦性は素直かつ正確で、従来型よりもずっと洗練された。

すべてがスポーティなセッティングのEペイス

旧型となってしまったプラットフォームを使うジャガーEペイスは、“スポーティ”を全面に押し出したSUVである。スポーツカーのFタイプからインスピレーションを得たというスタイリングは、実は全長/全幅比がFタイプとほぼ同じだったりするし、センターコンソール周りの景色もFタイプによく似ている。

ジャガー Eペイス D180 R-DYNAMIC HSE:Eペイスは、ピュアスポーツカー「F-TYPE」からインスピレーションを得たデザイン、スポーツカーのようなドライビングパフォーマンス、そしてSUVならではの広々とした室内空間と実用性を兼ね備える。

ステアリングゲインの高いハンドリングはイヴォークと明らかに異なるセッティングで、真っ直ぐ走るよりはステアリングを切っている時のほうがずっと気持ちがいい。ちなみに、従来型のイヴォークのホイールベースはEペイスよりも20mm短かったので、新型はEペイスと同値なのだけれど、Eペイスのほうがステアリングレスポンスも回頭性もよかった。
レスポンスがいいのはスロットルペダルも同様で、例えば同じエンジンを積むP250同士では最高出力も最大トルクも同じ数値だが、Eペイスのほうがスポーティに感じる。車両重量はEペイスのほうがやや重く、そのためか最大トルクの発生回転数がイヴォークより200rpm低いことも影響しているかもしれない。
どちらのクルマも全長が短く全幅が広い独特のプロポーションを持つものの、それぞれのブランドのスパイスがしっかりと浸透していて、まったく別物の乗り味になっている。比類なきオフロード性能とオンロードでの快適性を両立させて、思わず目を惹くスタイリッシュなボディを身にまとうイヴォークと、スポーツカーメーカーの名に恥じない運動性能をSUVに付与したEペイス。作り手のこだわりが伝わってくるこの2台が、いずれも英国ブランドであるというのは、きっと偶然ではないはずである。

気分よく乗れるFFのBMW

今回のように複数台を集める企画では、BMWだけがエンジンを縦置きにする後輪駆動の場合が多かったのもいまや昔の話。X2は横置きエンジンの前輪駆動ベースなので、今回の4台のエンジンレイアウトはいずれも同じである。そもそも4輪駆動なんだし、縦置きか横置きかFRベースかFFベースかなんてことに興味がある人はほとんどいないのかもしれないけれど、エンジンとトランスミッションが直列に繋がっている縦置きはいってみれば“平屋”、エンジンの下にトランスミッションがぶら下がっている横置きは“2階建て”だから、前後重量配分や重心高は異なるし、当然のことながらそれは操縦性や運転フィールに大きな影響を与える。

BMW X2 M35i:ヘッドライトやフォグランプ、キドニーグリル、ミラーキャップは、専用のセリウムグレーを採用するなど、エクステリアには、Mパフォーマンスモデルの専用装備を組み合わせることで、ダイナミックさを際立たせている。

それでも継続は力なりというか、ずっと横置きのクルマを作ってきたメーカーの中には、長年の経験と実績から縦置きに勝るとも劣らないハンドリングを確立しているところもある。一方で、ずっと縦置きを作ってきたメーカーが横置きを作るというのはなかなか難しい所行らしく、メルセデスやBMWも最初の頃はなんだかピンとこなかった。ところが現行のAクラスやこのX2などはついにまったく違和感なく気分よく乗れるようになった。

XC40もイヴォークも、車検証によれば前軸重のほうが後軸重より300kg以上も重いのに、X2は230kg。さすがに50:50は無理だったようだけれど、なんとかしてそれに近づけようとした努力の跡が窺える。実際、フロントの重さは他のクルマほど感じないし、ステアリング操作に対する車体の初期応答などは後輪駆動のBMWにちょっと似ている。
試乗車はM35iというもっともスポーティなモデルで、コツコツと突き上げはあるしエンジン音もずいぶん勇ましい。18iや20iのスタンダードモデルのほうがきっとX2の真価を味わえると思う。東京に暮らす人間にとっては機械式駐車場にも入る1535mmの全高も嬉しい。

日常から解放されたいアナタにオススメ

この4台の中で、もっとも快適だったのはXC40だった。“快適”というのは、乗り心地のみならず室内の居心地とか操縦性とか動力性能なんかを全部ひっくるめた印象である。ナーバスになったり気構えたり慎重になったり躊躇したりすることがただの一度もなかった。最初から最後まで平常心というか、平常心よりもさらに血圧が安定しているような気分だった。

ボルボ XC40T4 AWD INSCRIPTION

室内を見渡すと、目に入ってくるものがどれも柔らかい。ダッシュボードの造形やドアトリムのデザインやメーターのグラフィックなどは、決して華美ではなくシンプルでいながらどこか上質感のような雰囲気があって、そして柔和なのである。シートに腰を下ろした途端に居心地のよさを感じるクルマはそんなに多くない。
運転を始めると、当然のことながら手足を動かさなくてはならないのだけれど、居心地は相も変わらない。もちろん、運転行為に伴う緊張感は持っているものの、リラックスもしているという妙な心境である。その理由のひとつは、おそらくステアリングやペダルの操作荷重、車両側の反応速度が揃っているからだろう。ステアリングやペダルは軽すぎず重すぎず、エンジンのレスポンスやコーナリングフォースの立ち上がりは早すぎず遅すぎない。トルクの出力特性も線形だから、加速感はあくまでジェントルだ。こうした一連の所作が極めて自然でリニアなので、緊張感は必要最小限に抑えられ、リラックスした気持ちと同居できるのだと思う。
イヴォーク並みのオフロード走破性は持ち合わせていないし、Eペイスほどスポーティでもなければ、X2のようなコンパクトなボディでもない。それでも、普通の人が普通に運転する常用域での乗り心地や操縦性や動力性能や快適性は無難どころかかなり高いレベルでそれぞれ成立している。とげとげしい日常から解放されたいと思った時にドライブするにはうってつけの、マッサージチェアのようなクルマである。

RANGE ROVER EVOQUE SE P250

モダンなエクステリアデザインに加え、ユーカリ、ウール、再生プラスチックから生まれた新素材など最新テクノロジー満載のラグジャリーなインテリアも魅力。全長は従来とほぼ同じながら、ホイールベースを長くし、リアシートのスペースは20mm拡大された。

【Specification】ランドローバー・レンジローバー・イヴォーク SE P250
■全長×全幅×全高=4380×1905×1650mm
■ホイールベース=2680mm
■車両重量=1787kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1997cc
■最高出力=249ps(183kw)/5500rpm
■最大トルク=365Nm(37.2kg-m)/1200-4500rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/50R20:235/50R20
■車両本体価格(税込)=6,460,000円
問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-18-5568

E-PACE D180 R-DYNAMIC HSE

2019年モデルでは、ラインアップに2L直4インジニウムガソリンエンジンを新たに追加し、全30機種に拡充したEペイス。AI学習機能を備え、ドライバーの好みに応じて、温度設定やシート位置等を自動調整する「スマート・セッティング」も標準装備。

【Specification】ジャガー Eペイス D180 R-DYNAMIC HSE
■全長×全幅×全高=4410×1900×1650mm
■ホイールベース=2680mm
■車両重量=1920kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1999cc
■最高出力=180ps(132kw)/4000rpm
■最大トルク=430Nm(43.8kg-m)/1750-2500rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:ストラット
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/45R20:245/45R20
■車両本体価格(税込)=6,630,000円

問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-050-689

X2 M35i

X2 M35iには、専用にチューニングされたサスペンションやディファレンシャル等を採用し、ヘッドアップディスプレイを標準装備。シルエットは、クーペモデル特有のルーフラインを取り入れながら、BMWのXモデルらしい強固な印象も残し、躍動感を表現。

【Specification】ビーエムダブリュー X2 M35i
■全長×全幅×全高=4375×1825×1535mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=306ps(225kw)/5000rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1750-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/45R19:225/45R19
■車両本体価格(税込)=6,840,000円

問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

XC40 T4 AWD INSCRIPTION

ボルボならではの先進の安全支援技術に加え、室内の使い勝手をリサーチし、スマートフォンやタブレット、バッグ、ティッシュボックスなどを置く(隠す)場所や、カードホルダーなど、車内の収納スペースへ解決方法を提案したユニークなインテリアも魅力。

【Specification】ボルボ XC40T4 AWD インスクリプション 
■全長×全幅×全高=4425×1875×1660mm
■ホイールベース=2700mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1968cc
■最高出力=190ps(140kw)/4700rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1400-4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/50R19:235/50R19
■車両本体価格(税込)=5,090,000円

問い合わせ先=ボルボ・カー・ジャパン 0120-922-662

フォト=郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年9月号より転載

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