ポルシェ

新型ポルシェ911のテクノロジーを詳細解説!「NEW 911 TECHNOLOGY ILLUSTRATED」

いうまでもなく技術的にも新機軸が数多く採用されているタイプ992。ここでは改めての新型911に採用されたテクニカルハイライトを解説する。

新型911テクニカルハイライト解説

BODY ボディ:アルミニウムの割合が増え、さらに頑丈なボディに
最新世代のMMBプラットフォームを採用する。先代モデルではスチールの割合が63%だったが新型では30%と半分以下になった。外板パネルはバンパーをのぞけば、フロントボンネットやフェンダー、およびリアエプロンにいたるまで完全にアルミ製。またロッカーパネルやフロア補強材などにも約25%にアルミ押し出し材を使用。ピラーやルーフフレームなど乗員を包みこむ構造部品には高強度熱間成形スチールを採用。初のカーテンエアバッグも搭載する。ねじれ率および曲げ特性において先代比で5%向上しながら、ホワイトボディは単体で240kgと12kgの軽量化を実現している。

ENGINE エンジン:ターボチャージャーを刷新しパフォーマンスを向上
新型の水平対向6気筒エンジンは、ガソリンパティキュレートフィルター(GPF)を装着することで最新の排ガス規制に準拠する。一方で電気制御式ウエストゲートバルブを備えた新型の大型ターボチャージャーはタービンの直径を3mm大きく48mmに、コンプレッサー側も4mm増え55mmへと拡大しシンメトリーにレイアウト。インタークーラーも再設計することでエンジンの真上に配置を変更。新開発の軽量鋳造マニホールドの採用や圧縮比の向上、そしてピエゾインジェクターの初採用により、出力やレスポンスが向上している。カレラSの最大ブースト圧は約1.2barに到達する。

TRANSMISSION トランスミッション:完全新開発の8速デュアルクラッチトランスミッションを採用
ポルシェの2ドアスポーツカーとしては初の8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)を採用。991の7速から1速を低く(ギア比4.89)、8速を高く(0.61)へとギアレシオを広げることで効率化を図っている。また制御オイルポンプおよび改良型摩擦調整剤の採用で出力損失が低減、よりスムーズな変速を実現。最高速度には6速で到達する。またクイックシフトファンクションを新採用しており、マニュアルモードおよびスポーツプラス選択時のシフトアップの際に作用する。特に高回転および高負荷時にその効果を発揮し、素早いレスポンスとギアシフトを実現する。

AERODYNAMICS エアロダイナミクス:さらに進化したアダブティブエアロダイナミクス
新型のアダプティブリアスポイラーは、走行状況および選択された走行モードに応じて、ふたつのポジションに変化し、空力効果が働く範囲が45%増加している。90km/hを超えるとエコポジションに、150km/h以上の速度に達するとパフォーマンスポジションに移行する。そしてフロントのクーリングエアフラップは、フラップは温度、負荷および速度など状況に応じて開閉。70~150km/hの範囲ではフラップは完全に閉まっており燃費を低減。150km/hから開き始め、170km/hでは全開になる。リアスポイラーと連携し、高速での最適な空力バランスを実現する。

SUSPENSION サスペンション:さらにスポーティで快適になったPASM
サスペンション形式はフロント:マクファーソン・ストラット、リア:マルチリンクと991を踏襲する。カレラSではフロントトレッドを46mm、リアトレッドを39mm拡大し、フロントに20インチ、リアに21インチの前後異径のタイヤをはじめて装着する。ポルシェアクティブサスペンションマネージメント(PASM)も徹底的に改良。磁力による無段階調整可能な制御バルブを介して、路面からの入力に対し数ミリ秒以内に減衰力が立ち上がるため、以前のシステムよりも快適性も向上している。またステアリングのギア比は11%高められ、よりクイックな操舵フィールとなっている。

TIRE&BRAKE タイヤ&ブレーキ:直径と幅が異なる前後のタイヤ、ブレーキローターのサイズ拡大
フロントに20インチ、リアに21インチの前後異径のタイヤを装着したことで、シャシーのセッティングも刷新。ウェットグリップ性能や転がり抵抗も低減している。リアのホイールを大径化したことでそれにあわせてリアブレーキディスクの直径を330mmから350mmへと拡大。さらに、ブレーキペダル比が短くなっている。ペダルはスチール、炭素繊維および合成樹脂から合成されたオルガノシートを素材としており、従来のスチール製のものよりもおよそ300g軽くなった。またブレーキのブースターは空気式から電動式に変更されており、より精緻なブレーキフィールを味わうことができる。

WET MODE ウェットモード:世界初の路面感知システム、ウェットモードを標準装備
ウェットモードは、滑りやすい路面を走行する際のリスクを軽減する世界初の革新的なシステム。フロントホイールハウジング内に音響センサーが仕込まれており、路面の濡れや舞い上がる水しぶきを感知すると、PSM(ポルシェスタビリティマネジメント)およびPTM(ポルシェトラクションマネジメント)システムが路面の状態に合わせて予め調整される。そして、システムがドライバーに手動でウェットモードに切り換えるように通知。作動させると、PSM、PTM、エアロダイナミクスなどが協調制御、ドライブトレインのレスポンスを抑制し、走行安定性を確保する。

SAFETY 安全運転支援システム:新たなオプションを備えたアシスタンスシステム
必要に応じてフルブレーキングまでを行う自動緊急ブレーキをはじめ、オプションでストップアンドゴー機能を備えたアダプティブクルーズコントロール(ACC)を設定。可能な限りコースティング機能を使用し燃費を低減する。また車線逸脱時にステアリングをサポートするLDWや緊急停止状況ではサイドウインドーおよびサンルーフが自動で閉まり、ドライバーと同乗者のシートベルトテンショナーが作動する機能も備えた。新機能としては赤外線カメラを用いたナイトアシストをオプションで設定。赤外線カメラが300m以内の範囲で、暗闇の中にいる人や動物を認識してドライバーに通知する。

INTERIOR インテリア:アナログとデジタルを融合した完全新開発のコクピット
996以降、縦基調でデザインされてきたインテリアが、初代911をモチーフに横基調のものへと刷新された。911の伝統である5連丸型メーターの中央にはアナログレブカウンターが備わり、その周囲はさまざま表示が切りかえ可能な液晶式だ。ダッシュボード中央には10.9インチのPCMタッチスクリーンが配置され、その下に5つのクラシックな形のトグルスイッチがある。ハザードやオプションの車高を40mm高めるリフトシステムのスイッチなどが集約される。新デザインのステアリングは直径360mm。またシートも新設計されたもので、約3kgの軽量化を実現している。

ル・ボラン2019年10月号より転載

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