SUV全盛の昨今にあって、当然のごとく台頭してきたのがハイパフォーマンス系。先陣を切ったのはドイツ勢だったが、ここにきてジャガーやアルファ・ロメオも満を持して参戦してきた。そこで今回は、走りが自慢のミドルSUVを集めた。新型マカンを軸に各モデルのキャラクターを比較してみる。
高い実用性と走りを兼ね備えた猛者が集結
どこの自動車メーカーにとっても販売を支える稼ぎ頭であり、最も競争の激しいジャンルのひとつであるSUVは、スポーツカーや高級サルーン並みにメーカーのキャラクターが出やすいジャンルということができる。
今回集まった5台も、走りに一家言を持つメーカーが送り出した猛者ばかりだが、その中でも価格、スペックともに別格なのがジャガー FペイスSVRだ。
ハイパフォーマンス専門のスペシャルビークル・オペレーションズ(SVO)が手がけたFペイスSVRは、FタイプSVRをそのままSUVにしたという表現がふさわしい。ドライブモードをダイナミックにしてアクセルを踏み込むと、5L V8スーパーチャージャーは550psのパワーと680Nmのトルクにものをいわせて猛然と加速する。その上どのような路面状況でもトルクベクタリングと、Fペイスに初採用となったリアエレクトロニックアクティブディファレンシャルの相乗効果で、がっちりとホールドしてくれるのだが、電子デバイスで徹底的に押さえつけるのではなく、AWDでありながらお尻で挙動を感じる“ホットロッド”的な味付けを残しているのが好ましい。お行儀の良い優等生ばかりの昨今のクルマたちにあってはかえって新鮮だ。
それに加えてFペイスSVRが凄いのは、ドライブモードをコンフォートにすると、本来Fペイスが持っているしなやかで滑らかな“ジャガーネス”が前面に現れることだ。この2面性、リアシートの居住性や650Lの容量を誇るラゲッジルームを含めた実用性、そして使い慣れたレザーが織りなす上質で機能的なインテリアなど、全体のレベルも非常に高い。
同じ500ps級でも、アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオは対照的な振る舞いをみせる。とにかくこのクルマの魅力はフェラーリのV8から2気筒分をカットしたという素性をもつ2.9L V6ツインターボに尽きる。その最高出力は510ps、最大トルクは600NmとSVRには及ばないが車重が1910kgと軽い分、走りは快活。というかV6を可能な限りフロントバルクヘッド奥まで押し込んで実現したフロントミッドシップの旨みを存分に生かしたシャシーのバランスは見事。5000rpmを超えるとクオーンと澄んだエキゾーストノートを響かせるV6と、クイックかつバランスのいいシャシーの組み合わせは、まさにスポーツカーそのものだ。
ただし全体のセットアップは3つのドライブモードのうち、最もスポーティなDモードに合わされているようで、常にクルマに急き立てられているような感じがするのも事実。今回の中では最もエモーショナルでスポーティなのは間違いないが、あらゆるシチュエーションに対応する万能選手というよりも、一芸に秀でた天才肌と言ったらわかりやすいだろうか。
ではX6でSUVの世界にいち早くクーペの概念を持ち込んだBMWのX4はどうか? 誰よりもクーペであることを強調するボディは、インテリア共々スポーティでアグレッシブなデザインとなっているが、リアシートにしっかりとヘッドクリアランスが確保されていたり、ラゲッジルームにも500Lの容量があったり、意外にも使い勝手は悪くない。