いい意味で一番期待を裏切られたのがマカンS
今回試乗したX4 M40iのウリは360psのパワーと500Nmのトルクを生み出す3L直列6気筒ターボだが、スムーズかつパワフルな直6が主張しすぎるということはない。むしろノーズに直6を収めているとは思えないほど軽やかでスポーティでありながら、快適性も全く犠牲にしていないシャシーとのバランスが見事で、街中を流してもワインディングを飛ばしても一切破綻を見せない高い完成度を誇る。さすがは長年にわたりSUVのトップランカーとして業界を引っ張ってきたBMWだけはある。そういう意味でも派手な見た目と違い、今回の中では最もコンサバティブで優等生的なキャラクターの持ち主であった。
ここまで紹介した3台と一線を画するのがアウディSQ5だ。まず目につくのがボディサイズで、全長4685mm、全幅1900mm、全高1635mmとほかよりもひと回り小さい。またエンジンは354ps/500Nmを誇る3L V6ターボを搭載しているのだが、車重1970kg(サンルーフ装着車)とX4より100kgも重いこともあって、取り立てて速いという印象もない。
ところが乗っているうちに段々と印象が変わってくる。軽めのステアリングフィール、レスポンスの良いスロットルなど操作系のセッティングもあり、運転した感覚はどれよりも軽やか。コーナーでもロールを抑えたフラットライドに徹し、乗り心地も良く、遮音も効いていてストレスフリー度では一番。「ドライバーとの対話こそが命」という方にSQ5の振る舞いはクール過ぎるかもしれないが、毎日乗るのであれば、SQ5は俄然有力な候補となるはずだ。
そして最後に紹介するのがポルシェ マカンSだが、超個性のライバルを前にして、実は個人的にはあまり期待をしていなかった。というのも、マカンのプラットフォームは先代Q5がベースで、このたびに行われたマイナーチェンジも外装の意匠変更、10.9インチのタッチスクリーンを採用したインテリアがメインで、3L V6ターボはパワーとトルクを14ps、20Nmずつ上乗せ。あとは足回りの小改良が施された程度に過ぎないと思っていたからだ。
しかし、今回の取材において良い意味で一番期待を裏切られたのがマカンSだった。そもそもマカン自体、フラットライドでありながら乗り心地も良く、バランスのとれたモデルではあったが、マイチェンによりツルリとひと皮剥け、さらに洗練された印象なのだ。
リリースを見るとフロントアクスルにバネ下重量を1.5kg軽減するアルミ製スプリングフォーク、操縦特性をニュートラルにするためのスタビライザーのセッティング変更、さらに新しい油圧ショックアブソーバーを採用したオプションのエアサスペンションなど、シャシーの改良箇所は見えない部分で多岐にわたっているのだが、シャシーの剛性感、一体感、俊敏性、乗り心地、どれを取ってもマカンの出来は抜群。
エンジンスペックは354ps/480Nmと一番大人しいにも関わらず、7速PDKとの相性も抜群で、ヒラヒラと小気味の良い、まるでSUVのライトウェイトスポーツと呼びたくなるような気持ちのいい走りをみせてくれるのだ。
取材車はオプションのエアサスペンション、PTVプラス、スポーツクロノパッケージ、20インチホイールなどのオプションを満載し、総額1228万5000円とFペイスSVRに肩を並べる価格であったが、実力でも決して負けておらず、その価値は十分にある。