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【比較試乗】「ポルシェ 718 ケイマン vs トヨタ GR スープラ vs BMW Z4 vs アルピーヌA110 vs ポルシェ 718 ボクスター」ベンチマークとしての718

2シータースポーツカーの雄、718ボクスター/ケイマン。曲がる・止まるのクルマの基本性能から、ドライブフィールを昂らせる味付けまで高い完成度を誇り、このカテゴリーのメートル原器とも言えるモデルだ。ここでは、718をベンチマークにしたであろう旬なライバルを集め、各モデルの個性を浮き彫りにした。

絶対的完成度から指標となる“718”

ひと昔前に比べると911はパフォーマンスも価格も上級移行してしまった。それよりも手の内に収まってくれそうな718ケイマン/ボクスターが気になっている人は多いことだろう。車両価格は600万円台からで、オプションでまあまあ贅沢してもおよそ1000万円に収まる。実はこのほどよい価格帯のスポーツカーは、プリミティブなモデル以外にそう多くはなく、しばらくライバル不在が続いていたが、ここにきて気になるモデルが続々と登場してきた。昨年にはアルピーヌA110、今年に入ってトヨタGRスープラ、BMW Z4がデビュー。駆動方式や重量、サイズなどはそれぞれ異なるが、700-800万円の価格帯でスポーツカーを狙うならば大いに悩むことになりそうだ。

718ケイマンのシャシー性能は文句ナシで素晴らしい。

おそらく、どのモデルも718ケイマン/ボクスターをベンチマークにしているだろう。ガチンコのライバルとして超えようとしてはいなくても、走りに定評のある718ケイマン/ボクスターをひとつの指標、モノサシとして見立てて性能を見極め、その上でそれぞれの目指す方向に向かっていっているはず。ちなみにアルピーヌA110は718ケイマン/ボクスターをライバルではないとしているが、開発テスト時には操縦安定性や俊敏性などそれぞれの性能が718ケイマン/ボクスターに対してどれぐらい違うのか、ということはチェックされていた。

2シータースポーツの絶対基準としての高い完成度を誇るポルシェ718ケイマン/ボクスター。公に発表しなくとも、718はスポーツカーを作る上で欠かせないモノサシだ

自信を持って走らせることができる!

まずは718ケイマンから走り出す。ベースグレードの2Lフラット4ターボは、今どきの直噴ターボとしては最大トルク発生回転数が高めで、走り出しから溢れ出すトルクで押していくという雰囲気ではない。だがそれは今回唯一のMTとの組み合わせだから、かえって印象が良くて好都合だった。低回転域からトルクが充実しすぎていると、MTで乗る意味が感じづらくなるからだ。活発に走らせるときはある程度以上の回転をキープするべく積極的なシフト操作をするのが楽しい。

先代までの6気筒NAから4気筒ターボに換装された718ボクスター/ケイマン。ダウンサイジングとターボによる過給のネガなイメージやフィーリングをファンに抱かせなかった、まさにタウンサイジングターボの成功例と言えるパワーユニットだ。

アイドリングから低回転域では独特のビート感があって好きになれないが、3000rpm以上ではあまり気にならなくなり活気が漲ってくる。7500rpmのレブリミットまで引っ張ってシフトアップしていけば、気分はグングンと高まる。300psで0→100km/h加速5.1秒の性能は、公道で無闇に速すぎず、ちょうどよく楽しめるのがいい。
シャシー性能は文句の付けようがないぐらいに素晴らしい。ボディの剛性感が高く、サスペンションはしなやかに動いて、常にタイヤをピタリと路面に張り付かせている。ステアリング周りの剛性感も極めて高く、コーナーへ向けて切り込んでいくとほどよくシャープな感覚でノーズがインへ向いていく。シャープだが連続性のある動きなので挙動が分かりやすく、インフォメーションも豊かなので自信を持ってドライビングできるのがポルシェならではのクオリティ。ハードなコーナリングの時、リアが凹凸にのると少しズレる感覚はあったものの、やはり掴みやすい挙動のおかげでコントローラブルだった。
718ボクスターも基本的には同様のフィーリングだが、クーペボディの718ケイマンのほうがサスペンションのフィーリングが少しだけシットリとしている。それゆえ荒れた路面のワインディングを攻めて走ると、時折ホップしながらジャジャ馬的な動きを見せるのだが、これがかなり楽しめる。ちょうどいい速さだということもあって、攻め込んでいく気にさせてくれるのだ。
こちらも2Lのフラット4ターボだったがPDKとのマッチングも良好だった。低回転域のトルクはそれほど充実していないものの、賢いシフトプログラムで常に適切なギアを選んでくれるからストレスを感じることはない。また、オープンにしていると加速時のサウンドが格段に良かった。4000rpmからトップエンドあたりまで、背後からシャーっという吸気音が聞こえてきて情感を誘うのだ。

Z4もGRスープラもTOYOTA GR SUPRA RZ直4搭載モデルがオススメだ。

5台の中心的存在はケイマンとボクスターだ

同じミッドシップながらA110は軽量コンパクトにこだわったモデル。車両重量はわずか1100kgでケイマンよりも250kg軽いから、動きはまるで違う。1.8Lターボは252psだが、0→100km/hは4.5秒。ケイマンのPDKよりもわずかに速い。
A110のハイライトは実に俊敏性の高いハンドリングだ。今回の5台のなかで飛び抜けて軽量で、唯一4輪ダブルウイッシュボーンを採用していることからもそこへのこだわりは見て取れるが、ワインディングでも常にニュートラルな感覚でまったくストレスなく曲がっていくのは痛快だ。たっぷりとストロークをとってもアライメント変化が少ないダブルウイッシュボーンだから、俊敏性としなやかさが両立されている。718ケイマン/ボクスターほどスタビリティは高くなく、ほどよい感覚でテールスライドも起こすが、コントローラブルだからあえてこの特性にしてある。マニアックにハンドリングを楽しみたい向きには堪らないモデルだ。

Z4は古典的なハイパワーFRの興奮を具現化したモデルだった。3L直6ターボは低回転から強大なトルクを発生しつつ6500rpmまでシャープかつ滑らかに回り、じつに官能的。アクセルを踏みつければ即座にエクスタシーに登り詰められるほどだ。
ミッドシップから乗り換えるとノーズの重さを感じるのは否めないが、それでもワイドトレッド&ショートホイールベースにこだわったことでFRとしては異例なほどの俊敏性をみせる。BMWらしいのは、コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと外側前輪がスッとストロークしてわかりやすい動きをしてくれること。狙ったラインにのせていきやすく、ワインディングランでのリズミカルに走れる。
基本骨格やエンジンを共有するGRスープラは、クーペでピュアスポーツを標榜しているとあってもう少しハードな設定だった。コーナー入り口ではあまりロールを感じさせずミズスマシのような動きをみせる。ワインディングではZ4のほうが素直で走らせやすいと感じたが、GRスープラはサーキットなどもっと高負荷域で真価を発揮するのだろう。エンジンも基本的には同様だが、サウンドデザインの違いからかZ4のほうが澄んでいてよりシルキー6らしさが出ていた。
Z4もGRスープラも直6の官能性でライバルを寄せ付けないが、ハンドリングを楽しむという観点ではややノーズが重たく、下位グレードとして用意される2L直4のほうが向いているだろう。
今回の5台はドライビングプレジャーが高い上に、デイリーユースにも適している秀逸なモデルばかりだったが、やはり718ケイマン/ボクスターはど真ん中にデンと構えていることを強く感じた。俊敏性ではA110が、エンジンの官能性ではGRスープラ/Z4に分があるが、シャシーのクオリティは圧倒的に高く惚れ惚れするほど。ワインディング、サーキット、そしてロングドライブと、どんな場面でも高い満足度を与えてくれるから、長く付き合っても飽きが来ないだろう。

PORSCHE 718 BOXSTER
ベースモデルの他に、2.5Lの4気筒ターボを搭載するGTSもラインアップする(ボクスターも同様)。また、718スパイダーの予約も開始されている。

【Specification】PORSCHE 718 BOXSTER
■全長×全幅×全高=4385×1800×1280mm
■ホイールベース=2475mm
■車両重量=1390kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHV16V+ターボ/1987cc
■最高出力=300ps(220kw)/6500rpm
■最大トルク=380Nm(38.8kg-m)/1950-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前後マクファーソンストラット
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前235/45ZR18、後:265/45ZR18
■車両本体価格(税込)=7,662,000円
お問い合わせ
ポルシェジャパン 0120-846-911

 

PORSCHE 718 CAYMAN
搭載パワーユニットやトランスミッション(6速MTおよび7速PDK)はボクスターと共通。ケイマンGT4も追加設定され、こちらもすでに国内で予約を開始。

【Specification】PORSCHE 718 CAYMAN
■全長×全幅×全高=4385×1800×1295mm
■ホイールベース=2475mm
■車両重量=1390kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHV16V+ターボ/1987cc
■最高出力=300ps(220kw)/6500rpm
■最大トルク=380Nm(38.8kg-m)/1950-4500rpm
■トランスミッション=6速MT
■サスペンション=前後マクファーソンストラット
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前235/45ZR18、後265/45ZR18
■車両本体価格(税込)=6,800,000円
お問い合わせ
ポルシェジャパン 0120-846-911

 

TOYOTA GR SUPRA RZ
企画やデザインはトヨタ主導だが、様々な部分でシナジーを感じ取れる。GRスープラには、Z4にはない190ps/400Nmを発揮する中間グレードのエンジンスペックが用意される。

【Specification】TOYOTA GR SUPRA RZ

■全長×全幅×全高=4380×1865×1290mm
■ホイールベース=2470mm
■車両重量=1520kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHV24V+ターボ/2997cc
■最高出力=340ps(250kw)/5000rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1600-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前ストラット、後マルチリンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前255/35ZR19、後275/35ZR19
■車両本体価格(税込)=6,900,000円
お問い合わせ
トヨタ自動車 0800-700-7700

BMW Z4 M40i
ロングノーズ/ショートデッキの古典的シルエットでありながら中身は現代的にアップデートした3代目。先代のリトラクタブル式ルーフから初代のソフトトップに回帰した。

【Specification】BMW Z4 M40i
■全長×全幅×全高=4335×1865×1305mm
■ホイールベース=2470mm
■車両重量=1570kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHV24V+ターボ/2997cc
■最高出力=340ps(250kw)/5000rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1600-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前ストラット、後マルチリンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前255/35ZR19、後275/35ZR19
■車両本体価格(税込)=8,350,000円
お問い合わせ
BMWジャパン 0120-269-437

 

ALPINE A110 LINEAGE
初代がRR駆動だったのに対し2018年にデビューした2代目A110はミッドシップレイアウトを採用。エンジンは252psを発揮する1.8Lターボで、トランスミッションは7速DCT。

【Specification】ALPINE A110 LINEAGE
■全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm
■ホイールベース=2420mm
■車両重量=1110kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHV16V+ターボ/1798cc
■最高出力=252ps(185kw)/6000rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1600-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前後Wウイッシュボーン
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前205/40R18、後235/40R18
■車両本体価格(税込)=8,290,000円
お問い合わせ
アルピーヌ・ジャポン 0800-1238-1100

フォト=山本佳吾/K.Yamamoto ル・ボラン2019年10月号より転載
石井 昌道

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