草食っぽいがパワーコントロールは難しい
ジュリアが登場するまで、長らく存在しなかったアルファ・ロメオの後輪駆動車。しかもそのシャシーはカーボンモノコック。横置きとはいえ小排気量エンジンのフラッグシップとなる1750ターボユニットをミッドシップにして、これをデュアルクラッチ式のトランスミッションで制御する。
スペックだけを見ても、アルファ4Cスパイダーは刺激的だ。そして肝心な走りも、時代を読み違えたのではないか? と思うほどワイルドかつダイレクト。フロントにエンジンを搭載しないハンドリングは、切れ味が遠慮なく鋭い。アシストのないステアリングは低速では重ため。路面からのキックバックも躊躇なく伝える性格だが、速度が上がるほどに操作性が良くなり、そのクイックな応答性に対応することが可能となる。
自然吸気エンジンの官能性が失われたことに対する鬱憤は、炸裂するパワーとサウンドが晴らしてくれる。カーボンモノコックを投じたにも関わらず車重は1トンを超えおり、ロータス・エリーゼのような軽さは感じられないが、それでもこの車重に240psのパワーをぶつければ、体感する速度感は抜群に高い。これをパドルとブレーキで操りながら駆けぬけるワインディングは、スポーツカー本来の魅力を甦らせてくれる。
それだけに4Cスパイダーには、日常性が大きく欠如している。かたや、ここをきちんと学んだアルピーヌA110は、取りあえずの成功を収めた。しかし、そもそもこうしたスポーツカーは、万人受けを狙うクルマではない。真のアルフィスタだけが、この素晴らしさと獰猛さを理解すれば良いのだ。
ご存じの通り124スパイダーは純粋なイタリアーノではなく日本(マツダ)とのハーフだ。そしてその影響が、良くも悪くもクルマに出ている。一番の特徴はFRのオープンスポーツという点だが、その味付けは本家とはひと味違う。
1.4Lのターボエンジンは3000rpm以下のトルクが細く、しかしながら回すほどにパワーがなぎるキャラクター。これが慣れないと、プロですらエンストをしでかす羽目になる。
しかしだからこそ〝アバルト〟なのだ。というのも本国には、もっと穏やかな〝普通の124スパイダー〟があるのだから。
イタリア勢念願のFRレイアウトは、車重がロードスターより遙かに重たいこともあってか、その乗り味は意外にもGT的だ。
そしてサーキットなど飛ばせる場所では大きくオーバーハング重量を感じさせるが、それゆえオーバーステアに持ち込むことは容易。そしてここにターボパワーを炸裂させれば、やはり本家よりも自在にドリフトコントロールができる。
同じアバルトでも595シリーズと比べるとドライブフィールは大人しく感じるが、サソリの毒はしっかり隠し持っている。これをとびきり辛口な、自分好みの一台に仕上げるのもまた夢があるのだ。