戦後日本の自動車市場で憧憬の対象であったマッチョでタフなアメリカンスポーツカーは、グローバルな合従連衡と相次ぐ日本撤退によって、いまやこの同門2モデルに絞られた。その根底に流れるスピリットに触れつつ、この難しいコンペティションを決着に導こう!
最新テクノロジーにより時代に適合したV8
排出ガスの削減は地球規模の課題であり、政権の意向はさておきアメリカも無関係ではいられない。クルマとも深く関わるため、エンジン排気量のダウンサイジングや電動化は不可欠。ところが、アメリカンスポーツはそうした動向はどこ吹く風、大排気量V8エンジンが現在でも主役だ。
日本市場に正規輸入されるアメリカンスポーツのツートップは、シボレー・コルベットとカマロだ。試乗車のグランスポーツとSSは、どちらも6.2LのV型8気筒LT1型エンジンを搭載。バルブ駆動は、何とシリンダー下部のカムシャフトから伸びるプッシュロッドが担うOHVだ。旧式と誤解されかねないが、第7世代となる現行コルベットを期に新開発されたエンジンである。直噴システム、可変バルブタイミング、高Gでも確実なオイル供給が可能なドライサンプ方式を採用する。
それでも、エンジンを始動する際にはコルベットとカマロは同じようにマッスルエンジンらしくブォンと吼える。シリンダーボアが103.2mmもあるから、アクセルを踏み込めば、中回転域までは巨大なピストンがどデカい爆発エネルギーを受け止める実感が鼓動音として伝わってくる。
だが、ドドドッという鼓動音はエンジン回転数の上昇ともに間隔が狭まり連続音に変わる。アクセルを踏み続けるとコォーン! という高周波音に変わり、「スポーツ」や「トラック」モードなら排気系のブォーンという低周波音が重なって、まさに爆音が豪快な加速に感覚的ブーストをかける。
最高出力は少し異なり、コルベットが466ps、カマロは453psを発揮。エンジンそのものの強大なトルク感や伸びのあるパワー感に違いはない。だが、アルミニウム製フレーム構造のボディを備えるコルベットは、スチール製モノコック構造のカマロよりも車両重量が110kg軽い。そのため、加速はよりシャープであり、乗車位置の直後に後輪があるので超ド級の駆動力が腰のあたりをグイグリ押し出す実感が強い。
しかも、8速AT(6速MTも用意)をデファレンシャルと組み合わせるトランスアクスルを採用するので、リアの重量配分が大きくエンジンのパフォーマンスが最大の効率で路面に伝わる。もちろん、トラクションコントロールを解除してアクセルをベタ踏みにすれば、ホイールスピンが発生。それはカマロも同様で、その際にはフロントのブレーキだけが介入するラインロック機能により、停止状態でホイールスピンさせるバーンアウトさえ可能なのだ。
さらに、カマロは新開発の10速ATを備える。このATをマニュアルモードにしてパドルを指先で弾くと、キレっキレのレスポンスを示す。シフトアップ時はババッ、ダウン時はバォン、アクセルを戻しているとバリバリッというエンジン音が重なるので、操作に対してクルマがリアルに反応する走りの臨場感が際立ってくる。