スバルは完全にトヨタ傘下に。日本メーカー同士の出資関係を改めて再確認してみる
8月末にスズキとの資本提携を発表したばかりのトヨタ自動車が、今度はスバルへの出資増を発表。スズキ、スバルともに株式の持ち合いはあるものの、トヨタ側からの出資金額が多く、トヨタの豊田章男社長の言う「仲間作り」は予想以上の早いペースで進んでいるようだ。
トヨタとスバルの提携関係は、日産自動車に続いて米ゼネラルモーターズ(GM)がスバル(当時は富士重工業)の株を手放した後の2005年に始まる。その後、2009年には出資率を16.8%まで高めて連携を強化。そこで生まれたのがトヨタ86/スバルBRZだったが、今回はさらに750億円程度の追加出資で出資率は20%超まで持っていくとしている。20%を超えるとスバルはトヨタの持ち分法適用会社となり、スバルの損益の一部はトヨタの連結決算対象となる。これでスバルは完全にトヨタグループの一員となった形だ。
トヨタの主な出資企業を見渡すと、自動車メーカーでは100%子会社のダイハツを始め、スバル(出資率20%)、マツダ(同5.1%)、スズキ(4.94%)と乗用車メーカー4社に加えて日野自動車(同50.2%)、二輪車大手のヤマハ発動機(3.58%)と国内メーカーの半
数以上を占める。さらに世界最大手のサプライヤーであるデンソー(同24.4%)に加え、アイシン(同24.8%)などグローバルレベルの有力企業が名を連ねる。この体制はフォルクスワーゲン・グループ(VW)、ダイムラー、GMをも上回るもので、豊田社長がよく口にする「100年に一度の変革」への対応でもリードしていると見ていいだろう。
また、見逃せないのが提携する国内メーカーの持つ強みで、スバルは4WDシステムや高性能モデルの開発、スズキは小型車開発の技術とインドなどでのネットワーク、マツダは走る楽しさを実現する独自のクルマ哲学など、トヨタにはないものを持っている。その半面、財務面ではトヨタのように磐石ではなく、先行きを考えるとトヨタとの関係を保っておきたい、と考えている面も垣間見える。
一方でこのトヨタグループに対抗するホンダ、日産自動車、三菱自動車の存在も忘れてはならない。ホンダは独自のクルマ作りとブランド力の強化で北米ではトヨタに対抗する勢力であり、日産と三菱はタッグを組んでグローバル戦略を展開している。ルノーと提携する日産はここにきて業績不振に喘いでいるが、開発力と販売ネットワークでは世界のトップメーカーと伍する力を持っている。2018年の世界販売台数ではルノー、日産、三菱のアライアンスがトヨタグループを上回っており、ルノーと日産の相互出資、日産の三菱への出資といった関係が平穏に保たれれば、グローバル市場での存在感が失われることはない。
今後、日本においてこの3つのグループが存在し続けるのか、あるは再編につながる資本提携が行なわれるのか予断を許さないが、電動化が必至の環境対策、自動運転、モビリティサービス、コネクティッド分野など従来のノウハウでは対応しにくく、莫大なコストが予想される状況下で相互協力は欠かせなくなる。正念場を迎えるメーカーやグループがどんな動きを見せるのか。今後も目が離せない状況が続くことになりそうだ。