海外試乗

【海外試乗】「プジョー ニュー208/e-208」満を持して登場した新世代フレンチコンパクト

生硬さも目立つが先々の伸び代も際立つ

今回試乗したのは3気筒1.2Lターボのピュアテック130psにアイシンAW製8速ATのガソリン仕様と、100kW(136ps)のEV仕様、それぞれのアリュールとGTラインにGT(EV版)という計4グレードだった。まず17インチのパイロットスポーツ4を履くガソリンのGTラインを、低速域での街乗りや路面がやや荒れた国道、平滑な高速道路で乗ってみた。まだ走行距離4000kmに満たない個体のせいか、小さい・短い入力に対してサスの初期の動きが全般的に渋く、フラットというよりは固めのライド感だ。ところがワインディングのような場面で足回りへの入力が大きくなると、途端に208は輝きを増す。本国スペックで1165kgという軽量さも手伝い、敏捷でしなやかなフットワークは痛快そのもの。一方で高速巡航では申し分ないスタビリティを見せつける。

EVのスポーツ版「GT」はグリル形状こそガソリンのGTラインと同じだが、凸面はボディと同色に。急速充電は100kWまで対応、30分で50kW/hバッテリーの約80%が充電可能。WLTPモードでの最大レンジは340kmという。

続いてガソリンの16インチ仕様、同じくミシュランだがプライマシー4装着のアリュールに乗り換えた。コンフォートタイヤでハイトも増した分、乗り心地は少し穏やかになるが、やはりダンパーの初期ストロークはもっと欲しいと思わせる。同じプラットフォームで、ストローク量で有利なSUVボディでタイヤのライドハイトもそもそも分厚めのDS3クロスバックと比べて、価格帯もブランドの性格もあるが、遮音性と静粛性でもDSに一歩譲る。

キャッチ—な外観と裏腹に、エンジンルームにセクシーさを求めないあたりがフランス的。ピュアテック130psのマナーはスタート&ストップ機能も含め模範的なスムーズさだった。

だがピュアテック130ps+アイシンAWの8速ATという、ガソリンのパワートレインの仕事ぶりとマナーは、相当に優れている。踏み込んだ時の音質も勇ましいが、100km/h巡航では1800rpm程度の控えめさだ。それでいて駆動系のダイレクト感は損なわれず、変速ショックも限りなくスムーズにまとめられている。

前列シートの快適性を重視した内装。EV版はシフトレバーをDモードから手前に引けば回生の強まるBモードで、完全停止はしないがワンペダルで停止寸前までもっていける。i-コクピット3Dの立体表示の他、トグルスイッチ下にはスマホのワイヤレス充電トレイを備え、インターフェイスもかなり先進的。

むしろ動的クオリティの点で、もっとも当面の説得力に満ちていたのは、50kW/hのバッテリーをフロア下に収め約300kgほど車重を増し、17インチのプライマシー4を履いたEVの「GT」だ。アクセルを踏み込んでも、これ見よがしの強烈な加速感で人をてらうEVではない。スポーツモードでも0→100m加速は8.1秒に過ぎない。しかし低重心が効いて重量も1.5トン弱に収まっている分、好ましい落ち着きがドライバビリティに感じられる。同銘柄で16インチ履きのアリュールEVは、ステアリングの中立域も少し拡がる感触で、微低速では気にならないがパワーアシストで操舵力の軽い小径ステアリングのためか、コーナーによっては操舵ゲインが強過ぎるきらいがあった。

パワートレインごとに足回りは異なるとはいえ、アリュール系とGT系の違いを純粋にタイヤとサイズだけで性格づけているため、セッティングがどっちつかずの印象は残る。ただしホットハッチに寄せて「中央値を狙わない」あたりが、新しい208のポジショニングにして存在理由でもある。上の価格帯にDS3クロスバックが控え、後々に次世代2008もやってくる分、快適志向のユーザーはそちらへ誘導し、あくまで208はスポーティなBセグハッチとして屹立すべきなのだ。

思えば、現行208も初期型から後期型へと、別物といっていいほどの洗練ぶりだった。日本市場への導入は来年半ば以降で、欧州でのフィードバックを受けて熟成が進む可能性はある。剛性感と足さばきの余裕という、そのポテンシャルの高さは疑う余地はない。

フォト=プジョー・シトロエン・ジャポン/PEUGEOT CITROEN JAPON ル・ボラン2019年12月号より転載
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南陽一浩

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