CLS53のコンフォートとアグレッシブを使い分ける巧みさ
高い運動性能と彫刻のように美しいルックス。セダン比+15Lのトランク容量をも得て無敵感すら漂うRS5スポーツバック。これにCLS53がどう対抗するか見物だったが、さすがはメルセデスといえる貫禄を走りで見せつけた。
AMGの名前を背負いながらも、そのエンジンはマイスターのネームプレートを持たない量産ユニット。しかし補機類の電動化等によってコンパクトに復活を果たした「M256」ユニットは、直列6気筒の魅力を存分に発揮する。
低速ではマイルドハイブリッドがもたらすモーターパワーに加え、電動スーパーチャージャーがトルクをアシスト。ここにエアサスの包容力を交えながら、CLSは20インチタイヤの横揺れを巧みに御した快適性を実現してくれる。
しかしお楽しみは、アクセルを踏み込んでからだ。エンジン出力435ps/520Nm、モーター出力22ps/250Nm。システム総合出力は明記されず、これを額面通りに足した数値にはならない。車重もRS5に対し200kgほど重たいため、その加速力は圧倒的とは言いがたい。しかしこの直列6気筒ユニットの吹け上がりは何にも増して気持ち良く、回すほどに漲るパワー特性にはうっとりさせられる。「SPORT+」のダンピング制御は硬く、ステアリングは過敏でやり過ぎ感が強い。RS5同様、日本の速度域にスィートスポットは見当たらないが、それでもこのエンジンのレスポンスと、バチバチと排気音をまき散らすエンタメ性は、富裕層の心を鷲づかみすると思う。このコンフォートとアグレッシブの両極を使い分ける巧みさは、RS5スポーツバックにはない魅力である。