エンジン車から乗り換えても違和感なく作られているEQC
i3が何から何までスペシャルメイドなのに対して、EQCはエンジン車用プラットフォームをベースに開発されたという点で成り立ちが異なる。それでも80kWhの大容量バッテリーを搭載しているのは、それなりのボディサイズで高さにも余裕があるSUVタイプだからだ。ただし、車両重量は2480kgにもおよぶ。
しかし、少なくとも一般道を走らせている限りは、その重さをネガと感じることはない。なにしろ前後2基のモーターのシステム最大トルクは765Nm。AMG GLC63Sをも上回るのだから、アクセルを踏みつければそれこそ猛烈なダッシュをみせる。
とはいえEQCの最大の見所は、驚くほど静かで乗り心地もいいという圧倒的な快適性の高さにある。いざとなればスポーツカー顔負けのパフォーマンスを内に秘めているが、普段乗りではそういった主張はしてこない。まさにメルセデスそのものであり、振動・騒音が抑制されるBEV化によって異次元の世界に登り詰めたといえる。i3はBEVならではの運転感覚としてワンペダルドライブが持たされている。アクセルオフでの回生ブレーキが強く、ブレーキペダルに触れなくても大体のシーンを走れてしまうのが面白いが、慣れは必要であり回生の強弱を選べないのがちょっと惜しい。EQCはデフォルトのDレンジではエンジンブレーキに近い自然な減速感があり、パドルシフトによって任意に回生を調整できる。
BEVによる新しい世界を切り開こうとするi3と、従来のエンジン車から乗り換えても違和感がないように作られているEQCは対照的だ。また、i3は駆けぬける歓び、EQCは快適性に、それぞれ磨きをかけているのが興味深いところ。BEVは走りの個性が出しづらいと言われることもあるが、両車はそれに抗い、ブランドアイデンティティを強く打ち出そうという姿勢が見て取れるのである。