風伝おろしの「素」になる丸山千枚田の雲海
風伝峠を内陸の紀和町側に下っていくと、日本でも有数の美しい棚田が広がっている。
地元の言い伝えによると、ここに水田が拓かれたのは平安時代の末頃。武家の勃興により没落した藤原家の一族が入植し、こつこつと開墾していったのだという。太閤検地の際には2240枚を数えたという丸山千枚田だが、しかし、昭和30年代から一気に荒廃し、一時は520枚にまで数を減らしてしまった。
それを見事に蘇らせたのが、丸山千枚田保存会の初代会長・北富士夫さんらである。1993 年から始まった復田作業により、現在の数は千枚田の名に恥じない1340枚にまで回復している。そんな丸山千枚田が最も美しいのは、春の田植えや秋の稲刈りの季節。冷え込みの強い早朝に訪ねれば、風伝おろしの「素」となる雲海が谷をただよう、すばらしいシーンと出会うこともできる。
アクセスガイド
紀勢自動車道(紀伊長島から南は無料/尾鷲北IC〜尾鷲南ICは未開通)と尾鷲熊野道路(無料)ができたおかげで、熊野市周辺は中京エリアからのアクセスが格段に良くなっている。名古屋西ICから風伝峠までは東名阪・伊勢道などを乗り継ぎ約200km。和歌山方面からは阪和道を南紀白浜ICで降り、そこから国道311号(熊野街道・中辺路)で約80km。白浜〜熊野本宮間は快走路だが、そこから東には未改修の険しい山道も残っている。
Data【Spot 55 丸山千枚田】
雲海遭遇率 ★★
雲海の季節 通年
◎所在地/三重県熊野市
◎ルート/県道40号など
◎最高地点/標高約300m
◎冬季閉鎖/なし
観光情報
熊野市観光協会 TEL 0597-89-0100
文:佐々木 節/撮影:平島 格