100年以上にわたり、ハンティング、フィッシング、乗馬といった英国のアウトドアライフと密接にリンクすることで カントリージェントルマンの装いを彩り、タウンユースとしても愛され続けているバブアーのジャケット。 今回は、ブランドを代表するオイルドジャケットの定番モデルと、今シーズンに登場した復刻版をご紹介する。
※この記事はル・ボラン2018年12月号からの転載です。掲載商品は現在販売していないものもあります。
100年以上の歴史を持つ英国ブランドが醸し出すスタイル
編集者時代、担当だった自動車評論家が愛用していたのが、バブアーのハーフコートだった。クルマの取材撮影は運転するだけでなく、車外で過ごす時間も長い。とくに冬季などは峠や湖岸など寒風にさらされることも多く、優れた防寒着は欠かせなかったのだ。より実用的なダウンウェアもあったが、100年以上の歴史を持つ英国ブランドが醸し出すスタイルは、まるでカントリージェントルマンのようでいて、独特のワックスの薫りも英国車のレザーシートを思わせた。バブアーとは、つまりはそんなブランドだ。
あれから四半世紀が経ち、現代の冬のファッションは、軽量性や防寒性、撥水性といった機能性素材が主役になっている。たしかに快適だが、そこには厳しい寒さに立ち向かうダンディズムに欠けるような気もする。だからこそいまオールドスクールなバブアーが素敵に見えるのかもしれない。
今シーズンはそんな男の憧憬をさらにそそる名作『ウルスラ ジャケット』が復刻した。スタイルはベーシックなモーターサイクル用ジャケットをベースに、フードやチンストラップなどのアレンジを加えている。それにも増して心惹かれるのが誕生のエピソードだ。
第2次大戦中、英国海軍の潜水艦艦長だったフィリップ大佐は、ある時、部下の着ていたバブアーに目を止めた。大型ポケットやベルトを備え、じつに機能的だ。聞けば、本来はモーターサイクル用ジャケットなので防水性も完璧、と部下は胸を張った。
自身もバイク好きだった大佐はさらに興味を持ち、試しにジャケット姿の部下に散水ホースでさんざ水をかけてみた。いまだったらとんだパワハラだが、それでも着込んだ下は濡れず、大佐は早速バブアーに交渉し、独自の改良とともに、これを搭乗員ユニフォームとして採用したという。そしてモデル名も愛艦ウルスラ号から名付けたのだ。
そんな由緒あるスタイルは、スーツの上に羽織ればそれこそロンドンのシティを闊歩する銀行家を気取れるし、潜水艦搭乗員のユニフォームとして磨かれた機能性はドライブの時にも発揮される。田園の納屋に無造作に掛けられた作業着のように、トランクに突っ込んでおいても心強い。
ちなみにいまのバブアーは、かつてのようにワックスの強い臭いやギトギトにもならない。スタイルは変えることなく、実用性は進化する。それも好ましいのだ。
Barbour
バブアーは、1894 年、ジョン・バブアーによりイングランド北東部のサウスシールズで創業。北海の不順な天候の元で働く水夫や漁師、港湾労働者のために、防水性に優れたワックスをコットンに染み込ませた生地を開発したのが始まり。その革新的なオイルドクロス製の防水ジャケットは耐久性が高く、瞬く間にバブアーの名声を広めていった。現在ではアウトドアユースだけでなく、ファッションとして自分のスタイルにこだわりのある人々にも絶大な人気を誇っている。
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