清水和夫のDST

BMW 850i xDriveクーペ vs レクサス LC500h Lパッケージ、価値観の異なる日独クーペが真っ向勝負!【清水和夫のDST】#102-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)

Number102(SEASON.12):価値観の異なる日独プレミアムクーペが真のダイナミクス性能で真っ向勝負!

BMW 850i xDriveクーペ vs レクサス LC500h Lパッケージ

プレミアムクーペとして、高い評価を得ているM850i xDriveクーペ。ポルシェ911カレラをライバルとするだけに高性能かつ上質な乗り味が魅力だ。対するレクサスLC500hはV6ハイブリッドという、このセグメントでは稀有なキャラクターの持ち主。個性と個性のぶつかり合いはどちらに軍配が上がるのだろうか?

圧倒的性能のM850iに日本の精鋭レクサスが挑む

M850i xDRIVEクーペに搭載されるV8ターボは、燃費性能を意識しながらもフラッグシップモデルに相応しい530ps/750Nmのパワーとトルクを発生させる。まさにBMWらしいエンジン技術の本領を知ることができるモデルだが、ドライバーのアクセル操作に対して、アップ&ダウンともにスムーズに変速するZF製トルコンATの制御も見事だ。ドライバーが何をしたいのか。システムはスロットルの動き(ドライバーの右足の動き)を検知し、CPUはエンジン回転とギアシフトへ電光石火のごとく指示。まさに神業ともいえる芸術的なシフトワークだ。加えて、低速でクルージングする際は高いギアを維持してくれ、スイッチひとつで走行モードを変えることができるから、スポーツ+モードではエンジンサウンドが過激になるし、明確に変化する走行モードが設定されているから単に走ることが楽しい。

ビー・エム・ダブリュー850i xDriveクーペ/BMW 850i xDrive COUPE

高速周回路では、横風が吹こうが矢の如く加速していく。ハンドリングのフィーリングは良く、操舵時は実にマイルドだが、保舵時は“カチッ”とした剛性感があってダイレクト。操舵から補舵までのフィーリングが人間の感覚に合っている。だからブレーキテストやウェット旋回ブレーキでは好印象。秋に登場するM8に、さらに大きな期待をしてしまう。

レクサスLC500hはスポーツカー感覚で乗れるプレミアムクーペ

レクサスLC500hのダイナミクスは悪くない。ニュープラットフォームの先鋭として登場し、レクサスの総力が注がれて開発されただけあって、基本スペックとしては低重心化と前後重量配分の最適化、低いドライビングポジション、さらにダッシュボードを下げたことで、スポーツカー感覚で乗れるプレミアムクーペとなった。それでいて乗り心地が驚くほど良いのは、専用開発されたミシュランのランフラットタイヤのおかげだろう。サスペンションとタイヤがうまくマッチングしていて、ランフラットの常識を変えるような快適性だ。

レクサス LC500h Lパッケージ/LEXUS LC500h L PACKAGE

5L V8自然吸気ユニット+ハイブリッドシステムという、独自性の高さがウリの心臓部を持っており、存在意義は十分。高速周回路を走ると、コンフォートモードではスタビリティと乗り心地を両立しているが、ステアリングの手応えについては、もう少しメリハリがあっても良かったと思う。具体的には操舵時よりも保舵時の剛性感が重要だ。
登場から約2年も経過しているLC500hが苦戦するのではないかと思っていたが、そのキャラクターからして新しい価値観を提供するスポーツクーペなのだと再認識させられた。

総合力の高い M850i、独自性が光るLC500h

8シリーズは、ソフトトップのカブリオレもラインナップするが、オープンモデルでもボディ剛性が高く、パワートレインからサスペンションに至るまで一体感がある。クーペはさらにソリッドな印象だ。
LC500hの魅力はストロングハイブリッドの存在だろう。静かで高級感に富んだ加速性能は大きなアドバンテージ。ただしボディとパワートレインの揺れが感じられ、トヨタ車でよくみられるいなした後のフィールが残っているから、そこをブレイクスルーできるかが今後の課題となるだろう。

RESULT 総合力で勝るM850i、存在感を示したLC500h

レクサスLC500h Lパッケージ ●16/20点

BMW 850i xDriveクーペ ●18/20点

フォト:篠原晃一 ル・ボラン 2019年9月号より転載

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