量産車ベースが基本のボンドカーにあって、唯一の例外となったのがシリーズ24作目「スペクター」に登場したアストン・マーティンDB10。開発途上の車両をジェームズ・ボンドが勝手に持ち出したという設定のDB10は、ローマの街でカーチェイスを繰り広げた末、川に転落して水没。ボンドはその直前に射出シートを使って脱出し、ことなきを得るという筋書きだった。現行型ヴァンテージをベースに開発されたDB10だが、製作された10台のうち8台は撮影で使われ、2台のみが現存。うち1台は2016年にチャリティオークションにかけられて278万5500ポンド(約4億5000万円)で落札されたものの、当初からの映画製作会社との契約によりDB10が量産化されることはなかった。
ル・ボラン2020年4月号より転載