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映画「フォードvsフェラーリ」の主役GT40にまつわるエピソード

主役GT40にまつわるエピソード

フォト=藤原功三/K.Fujiwara
フォードがGT40を開発するにあたり、数あるイギリスのレーシングカー・コンストラクターの中からローラをパートナーに選んだ最大の理由は、彼らが1963年1月のロンドン・レーシングカー・ショーで発表した進歩的なレーシングスポーツ、ローラMk6にあった。フォードはすぐさまMk6を2台購入。徹底して分解、調査したうえ、後にFAVのマネージャーになるジョン・ワイア監督の元で1963年のル・マンに挑戦するなど様々なデータを蓄積。さらにローラのエリック・ブロードレイ自身も設計陣に加わりツインチューブ・モノコック、ミッドシップ・エンジン、イタリア・コロッティ製ギアボックス、4輪ダブルウイッシュボーンなどMk6の設計思想がそのままGT40に引き継がれることとなった。またGT40の製造もイギリスの子会社FAV(フォード・アドヴァンスド・ヴィークルズ)で行なわれている。

フォト=ピエール・イヴ・リオン/Pierre-Yves Riom、藤原よしお/Y.Fujiwara
今でも「フォードvsフェラーリ」の興奮を生で味わえるのが、ル・マンのフルコースを舞台に2年に1度開催されるヒストリックカー・レース“ル・マン・クラシック”だ。今年の開催は7月3~5日を予定。伝統のル・マン式スタートも、ナイトセッションも味わえる。また9月にイギリスで行なわれる“グッドウッド・リバイバル”でも多数のGT40が参加するレースを開催。昨年レッドブルF1のエイドリアン・ニューウェイも参加していた。

フォト=ピエール・イヴ・リオン/Pierre-Yves Riom、藤原よしお/Y.Fujiwara

1966年8月17日、リバーサイド・レースウェイでケン・マイルズが事故死した際にドライブしていたのが、通称“Jカー”だ。事故の原因を含め未だ謎の多い存在だが、MkIIの後継として開発された実験車で、アルミハニカム製のモノコックとブレッドバン風のボディスタイルが特徴。テストの過程ではオートマチックも試されたという。しかしマシンバランスの悪さなど諸問題が解決せず計画は中止。その経験はMkIVに生かされることとなる。

ケン・マイルズは1918年生まれのイギリス人。16歳からメカニックとして働いた彼は第二次大戦従軍後1951年に妻子とともにアメリカに渡り自身のガレージを開業。MG TDを改造したオリジナルマシンで、北米SCCAシリーズで多くの勝利を挙げその名を知られるようになる。その頃にレーサー仲間として知り合ったキャロル・シェルビーに誘われ’62年にシェルビー・アメリカンにテスト兼ワークスドライバーとして参加。1965年にシェルビーがGT40のワークス活動を請け負うようになると、46歳のマイルズもドライバーとして参画。開幕戦デイトナ・コンチネンタル2000kmでGT40に初勝利をもたらすなど、その開発に大きく貢献した。映画では気性の激しい男として描かれているが、コース上のマナーは非常にジェントルだったというマイルズ。GT40でのレースは2年間で7レースしかないものの、総合優勝3回、2位2回、3位1回という素晴らしい結果を残している。

フォト=藤原よしお/Y.Fujiwara
1966年のル・マンで3台並んでゴール(それが後に物議を醸すのだが)し、念願の総合優勝を果たしたMkII。優勝したNo.2、B.マクラーレン/C.エイモン組のシャシーナンバーは#1046、2位となったNo.1、K.マイルズ/D.ハルム組は#1015、3位のNo.5、R.バックナム/D.ハッチャーソン組は#1016であった。翌1967年も3台はデイトナ24時間に参加。#1015、#1016はル・マンにも参戦しているが、リタイアに終わっている。その後、一般に売却された3台は、いずれも1966年当時の姿にレストアされ現存。2016年のル・マンでは優勝50周年を祝い3台が久々に集結した。ちなみに#1016は2018年のRMオークションに出品されたのだが、その時の落札価格はなんと979万5000ドル(約10億8700万円)! 初期のフォードGTからMkIVまで各型合わせて102台が作られたといわれるGT40だが、4億円以上というのが現在の相場だそうだ。

 

ルボラン2020年4月号より転載
藤原よしお

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