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【ニューモデル情報通】アルファロメオ・ジュリアにGTA/GTAm復活! その歴史を紐解く

2020年3月、FCAは、アルファロメオのDセグメントスポーツセダン「ジュリア」にトップパフォーマンス版の「GTA」および「GTAm」を追加し、合計で世界限定500台生産すると発表した。この報を受け、アルファロメオファンが大いに沸いたのは記憶に新しい。ではなぜファンはGTA、そしてGTAmというネーミングに熱狂したのか?その理由を、歴代のGTAとGTAmから紐解いてみよう。

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新しく「GTA/GTAm」の名を引き継ぐにふさわしいパフォーマンス

新しい「ジュリアGTA」は、ジュリアでもっとも高いパフォーマンスを発揮する「クアドリフォリオ」をベースとするが、クアドリフォリオ自体がすでに2.9L V型6気筒ツインターボエンジンから510psもの最高出力を発生するモンスターである。GTAではさらに最高出力を30psアップの540psとしただけでなく、ボディ各部を軽量素材に置き換えることで車両重量を100kg削減。エクステリアではエアロパーツの装着、センターロック式アルミホイールやアクラポビッチ製チタンエキゾーストシステムなどが奢られる。一方、「ジュリアGTAm」は、基本スペックをGTAと同一としながらも、サーキットで走ることを主眼としたモデル。リアシートが取り払われカーボン製リアウイングなどが装着され、さらにアグレッシブに仕立てられている。

初代ジュリアのコンペティション版だった「ジュリアGT/GTAm」

GTA/GTAmのネーミングより先に、ジュリアという名前自体がすでに伝統・伝説を継承していることは、もはや説明する必要もないだろう。ジュリアはまず1962年に「ジュリアT.I.」という名称で生を受け、翌年にはベルトーネ(ジウジアーロ)による不滅不朽のデザインをまとったクーペ「ジュリア・スプリントGT」を追加。以降、排気量アップや車種追加・各部改良を行いながら1970年代半ばまでのアルファロメオを支え続けた。

高性能でスポーティなジュリアクーペを、イタリア人がレースで走らせないはずはなく、1965年にはコンペティション仕様の「ジュリア・スプリントGTA」が登場する。「A」とは、イタリア語で「軽量化=アレッジェリータ(Alleggerita)」という意味で、その名の通り各部が軽量化されていた。外観上ではグリル下2つの孔、そして棒を曲げただけのシンプルなドアノブなど以外に大きな変化はないが、ボディにはアルミが多用され200kg近い軽量化(!)を実現しており、サスペンションもアライメント調整が容易な設計になっているなど、通常のジュリアとは別物といっていいほどのクルマになっていた。1.6L DOHCエンジンもノーマルの106psから115psまで高められていたほか、1.3L版の「GTA1300ジュニア」も追って登場している。

GTAは、アルファロメオのワークスチーム「アウトデルタ」がさらにチューニングして参戦、レースで大活躍した。アルファロメオにETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)4年連続メイクスチャンピオンという偉業を与えることになった。

長い沈黙を破って登場した「155GTA」

ジュリアGTAがレースを席巻していた時代から約20年が過ぎた1992年。アルファコルセは「155」に懐かしいGTAの名を与え、CCIS(イタリアスーパーツーリングカー選手権)に投入した。155GTA最大の特徴は、ランチア・デルタ・インテグラーレの2Lターボエンジン+4WDを移植していたことで、さらに、ヘリコプター事故で右腕を切断してしまった元F1ドライバーのアレッサンドロ・ナニーニがステアリングを握ったことも、大きな話題になった。

同じく155GTAを駆るチームメンバーで、こちらも元F1ドライバーのニコラ・ラリーニは圧倒的な成績でドライバーズ・チャンピオンを獲得したものの、アルファコルセは1993年から活動の舞台をDTM(ドイツツーリングカー選手権)へと移したため、155GTAの活躍は1年のみで終わってしまった。DTMでも155は強かったが、マシンの名前からはGTAの文字が消え、「155V6TI」に変わっていた。

「147GTA」「156GTA」ではフラッグシップスポーツモデル的な扱いに

さらに時は下って2002年。アルファロメオの中核をなすスポーツセダンの歴史を刻んでいた「156」に「GTA」の名称が復活。さらに2003年にも、Cセグメントハッチバック「147」にもGTAの称号が付与された。156GTA、147GTAともに、250psという高出力をマークした3.2ℓV6エンジンを搭載。快音を響かせるV6とそのパワー、派手な外装、骨太なハンドリングによって、今なお高い人気を誇っている。

しかし、この2台のGTAは、エンジンをパワーアップして内装も上級に仕立てた「最上級スポーツグレード」というイメージで、車重もかなり増加していた。そのため「A=軽量化」という本来のGTAの趣旨からは外れていた。だが、小さい車体に大きなエンジンによる「絶対的な速さ」によって、相対的には軽量化していた……といえなくもない。
なおこのほか2009年に「ミトGTAコンセプト」というコンセプトカーも登場したが、こちらは発売されぬまま終わっている。

「新たなGTA伝説」に期待

このように、過去のGTAを見てくると、解釈の違いはあれども「GTAという称号」がアルファロメオで特別な響きを持っていることがわかる。とくにアルファロメオの真骨頂ともいえる「ハコのレース」で圧倒的に強かったGTAとGTAmの存在は、GTAの名を高めている所以であることは間違いない。

新しいジュリアGTA/GTAmは、これから先、どんな伝説を残すのだろうか。期待したい。

この記事を書いた人

遠藤イヅル

1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。

遠藤イヅル

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