各車の加速フィールは数値では語りきれない
そんなX7からカイエンに乗り換えると、SUVを運転していることを忘れるほど、スポーティな挙動が際立っていた。3台のなかでは最もコンパクト(!?)なボディを持つカイエンターボは、全高が1675mmと低め。これに加えて、標準のエアサスペンションや電子制御ダンパーのPASMなどの働きにより、ピッチングやロールといったSUV特有の無駄な動きはしっかりと封じ込まれ、クルマとの一体感が楽しめる。それでいて、快適な乗り心地を示すのもうれしいところだ。
PORSCHE CAYENNE TURBO
このカイエンのトップモデルには、最高出力550psの4L V8ツインターボが搭載される。車両重量2290kgの試乗車を加速させるには十分すぎるパフォーマンスの持ち主は、V8サウンドを響かせながら、3000rpmあたりから勢いが加速するメリハリのある特性で、ドライバーを刺激し続ける。その走り、そして、エンジンの感触はまさにスポーツカーそのもの。911や718だけでなく、パナメーラやSUVまでをもスポーツカーと位置づけるポルシェのクルマづくりは、このカイエンにも受け継がれているのだ。
PORSCHE CAYENNE TURBO
X7、そしてカイエンターボを置き去りにするハイパワーエンジンを手に入れたのがベンテイガだ。「スピード」という特別な名前が冠されたこのモデルでは、最高出力635ps、最大トルク900Nmの圧倒的パワーを誇る6L W12ターボユニットが搭載されている。
BENTLEY BENTAYGA SPEED
0→100km/h加速は、X7M50iの4.7秒、カイエンターボの4.1秒をさらに上回る3.9秒で、押し出しの強いフロントマスクとあいまって、獰猛なイメージに拍車がかかる。
BENTLEY BENTAYGA SPEED/“世界最速SUV”を標榜するベンテイガ・スピード。W12エンジンのハードウェアには手をつけることなく、ソフトウェア・チューニングで+27psの635psを実現している。
しかし、実際の印象はその逆で、どこからアクセルを踏んでも即座に加速し、緻密でスムーズな吹け上がりを見せるW12エンジンは上質の極み。フウォーンという快音とともに勢いづくエンジンを従えるシャシーも頼もしく、カイエンターボほどではないにせよ、SUV臭さを抑えた落ち着いた挙動とマイルドな乗り心地には好感を抱く。剥き出しのスポーティさとは違う、ベントレーらしい上質で高いクオリティの走りこそが、このベンテイガ・スピードの魅力ではないだろうか。美しいカーボンパネルやレザーを贅沢に配したコックピットや、時代に流されないアナログのメーターパネル、そして、アナログのクロックといった演出も心地がいい。
BENTLEY BENTAYGA SPEED/2.5トン超えの車重を受け止めるべく、大容量のブレーキシステムが備わる。
BMWらしいスポーツ性に余裕のキャビンを備えるX7、あくまでスポーツカーとして存在するカイエンターボ、極上のラグジャリースポーツのベンテイガ・スピード。異なる3つのキャラクターが、ラージクラスSUVの世界をさらに活気づけるはずだ。