コラム

1990年式のVWゴルフIIのメンテナンス、まずエンジン関係から【島下泰久のヤングタイマーダイアリー】

いま巷で、密かなブームを巻き起こしているヤングタイマー。ここでは、人気モータージャーナリストの島下泰久が、ちょっと古いクルマを通して、コンディションを整えていく過程や、その道の達人と出会い語ることで、すべてのヤングタイマーを愛するクルマ好きに向けて情報発信をしていく、というもの。さて、前回で車両チェックを行なったゴルフII。早速、修理を始めていきますよ!

※こちらの記事はル・ボラン2018年7月号に掲載されていたものを転機したものです。

○月×日今日はどこを修理しましょうか?

前回、要整備の箇所を洗い出した私の……いや私名義の1990年式ゴルフCLi。外装もあちこち気になるところがありますが、やはりそれより前に、安心して乗るため走りに関する部分にきっちり手を入れていくことにします。
そう意気込んでスピニングガレージさんを訪ねるとメカニックの中西サン、要交換のパーツをしっかり用意してくださっていました。うーん、さすが! 早速、作業開始です。

電動ファン、プラグ&プラグコード&デスビ、ヘッドガスケット、ベルト類といった、今回交換する新品パーツ。やっぱり新品ってなんだか嬉しいですね(笑)。

まずは回っていないラジエターファンを交換します。これが動かないと、すぐにオーバーヒートしてしまいますから。
エアコンを入れると強制的にオンになることもあり、ヘタリはそれなりにあるというこのパーツ。ホース、固定しているボルトを外して抜き出せば外れるのですが、実際の作業はエンジンルーム内のあれやこれやの隙間を、まるで知恵の輪のように引き出す必要があります。慣れていないと時間がかかるでしょうね。外したファンは案の定、固着してまったく回らず。新品に入れ替えます。

まったく動かなかった電動ファン。ゴルフⅡはエアコンをONにすると必ず回るので使用頻度が高いとか。ラジエターとの隙間に目張りを貼り付けて装着。こうするとエアコンの効きが違うのだとか。新品はちょっと加工。

装着の際に中西サン、カバー左右の隙間に目張りをしていました。これがあるだけで効率が全然違い、エアコンの効きにも影響するそうです。嬉しい気配りですね。
続いて、オイル漏れを起こしているヘッドカバーガスケットを交換します。これは結構大変な作業で……と思ったら、あれ? もう外れてる! カウンターフローのSOHC 2バルブというシンプルなエンジン、ヘッドカバーを外すのは実に簡単なのでした。

ヘッドカバーガスケットはオイルが滲み出てベタベタの状態でした。

元々のこのエンジンのヘッドカバーガスケットはコルク製です。耐久性は推して知るべし。ほぼ2年ごとの交換が必要だそうです。このクルマはすでにゴム製のものに替えられていましたが、それも賞味期限が切れていたのでゴム製の新品に交換にします。ついでに周辺の洗浄もしてもらいました。

ヘッドカバーをパカッを開けると、その下にはすぐにカムシャフトが……。なんだかとても新鮮な気がします。リブがつぶれきってしまいオイル漏れの原因に。新品のゴム製に付け替えて、ヘッド周りをお掃除して完成です。

ちなみにヘッドカバーはプレスのスチール製。錆びていますが中西サン曰く、それで正解なんだそうです。オイルが漏れていたらサビないわけで、つまりオイル漏れのない証だと。ナルホド……。
点火系のパーツもごっそり交換です。ディストリビュータはアークも少なく、それほど悪い状態ではありませんでしたが新品に。西ドイツ製と書かれた、つまり新車時から付いていたのであろうプラグコード、プラグも交換します。いずれも信頼の日本製です。

プラグコードは一度も交換していなかった!?

新車の頃から装着されていたプラグコードたち。お疲れ様でした。プラグも新品と比べるとヘタリ具合がわかります。デスビ内にはそれほどアークの飛んだ形跡もなく、状態は悪くなかったものの、新品の青いコードと一緒に交換。

Vベルトも交換します。オルタネータを駆動するベルトが一番ヒビがヒドいですが、他の2本も一緒に。こちらも標準はドイツ製なのですが、供給に難アリということで近いサイズの日本製を使います。こういうノウハウは専門店ならでは。ホント助かります。

ベルトはヒビ割れなどが気になるオルターネータ、ウォーターポンプ、エアコンプレッサーの3本を同時に交換。日本製のちょっとサイズが違うものですが、ベルトは張り調整機構があるので大丈夫。

二次エア導入経路のバルブキャップも要注意です。気づかないうちに経年劣化で砕けてしまうと、そこからエアを吸って調子を崩してしまいます。実は今回も作業中に触れた途端に脱落。新品に付け替えたのでした。最近、走りに元気がないなあという人はチェックしてみてもいいかも?
「これで機関的には不安要素はほとんどないと思います。ずっと走っていたクルマは大体この程度で済みますね。何年も動かず眠っていたクルマだと、やっぱりそうは行かないことが多いです」

このほかにもそろそろ寿命のバッテリー交換、抜け気味だったエアコンガスを補充。試乗時のエアコンは効き過ぎて寒いくらいでした。レギュラーガソリンに対応するため、やや遅らせていたらしいタイミングは調整したら走りが激変! さすがです!

さて、それでは早速、試運転に出かけましょう。そう思ったら中西サン、さらに確認を始めました。点火時期を見ているようです。
「3度くらい遅くなっていました。レギュラーガソリンで乗れるように、ディーラーでこう調整していたクルマは結構ありますね」
改めて路上へ。アレ? キ、キモチ良い! 前回走らせた時には、遅いけどまあこんなものかなと思っていたのですが、まるで見違えるほど元気になっていました!点火時期を調整したことと、安心してアクセルを踏めるようになった効果でしょう。なんだ、早く言ってよって感じです。

アクセルを踏み込んだ瞬間からしっかりトルクが出て、とても走りやすくなりました。何だか雑音の類いも減ったような……。ATのCLiでも、こんなに軽快で楽しいんですね!

いやー、ますます愛情が湧いてきちゃいました。困ったなあ、直ったら新しいオーナーを探すつもりなのに! これで外装に手を入れたら、いよいよ離れ難くなりそうですが、次回はいよいよ着手しちゃいますよ!

取材協力:スピニングガレージ ☎ 042-780-8198
http://www.spinninggarage.com/

フォト=佐藤正勝/M.Sato ル・ボラン2018年7月号より転載
島下泰久

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