海外試乗

【海外試乗】「アウディ A3 セダン」定番のバリエーションが追加設定

自動車先進国においては、いまやスリーボックス=セダンはミドルクラス以上が主流となっているが、安全性や上級移行への要求に合わせてボディはどんどん大きく立派になってきた。そこで見直されているのがコンパクトなスリーボックス。経験豊かな大人だからこそ、その価値を理解できる。

ワンクラス上を思わせるライドコンフォート

A3のスリーボックス版が登場してから早くも7年が経過し、5ドアハッチのスポーツバックに続いてフルモデルチェンジを受けた。フレキシブルな横置きエンジン用モジュール、MQB-IIが採用された2世代目は、ホイールベースは先代と同一ながら全長を4cm延長。エクステリアはスポーツバックと同様、ワイド化されたシングルフレームグリル、オプションのマトリックスLEDライトを内蔵したシャープな輪郭のヘッドライト、そしてバンパー左右の五角形フレームを持つエアインテークによりスポーティな表情を見せる。

サイドのブリスターフェンダー風の処理は、かつてのクワトロスポーツのオマージュ。躍動感と凝縮感を両立したグッドデザインだ。

トランク容量は425Lと先代モデルから変わりはないが、これはおもに空力特性改善とのトレードオフ。すなわち、トランクリッドスポイラーやディフューザー、そしてアンダーフロアをカバーする新デザインによってCd値を0.29から0.25へと向上、燃費改善に向けられているのだ。

スポーティとコンフォートをアウディ流に両立するとこうなるというライドフィール。クラスを超えた上質感がそこにはある。

インテリアもまたスポーツバックと共通で、ドライバーの正面には12.3インチのバーチャルコクピット、ダッシュセンターには標準で10.1インチのタッチスクリーンを装備。後席空間は着座位置を低めたことでヘッドルームに余裕が出ていると説明されたが、劇的に広くなった感じはしない。

35TFSIが搭載する1.5L 4気筒ターボは最高出力150ps、最大トルク200Nmを発生。48Vのマイルドハイブリッドが組み合わされる。

エンジンバリエーションもスポーツバックと同一で、2種類の1L3気筒と2種類の1.5L4気筒ガソリンのほかに、2種類のチューンを持つ2L4気筒ディーゼルが揃う。今回の試乗でもっとも長く乗ったのは、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.5L 4気筒の150ps仕様で、COD(シリンダー休止システム)も搭載。組み合わされるトランスミッションは7速Sトロニックだ。

運転席回りはスポーツバックと共通で、インフォテイメントはバーチャルコクピットとセンターのタッチパネルに集約。MMIは3世代目だ。

試乗は、アウディ本社のあるインゴルシュタット郊外のドライブセンターから一般路、ワインディングに富んだ郊外路、そしてアウトバーンを繋ぐおよそ250kmのコースを基本に行われた。まず好印象を受けたのはパワフルで静かなエンジンだ。特に48Vマイルドハイブリッドは、信号待ちや低負荷クルージングなどエンジン停止状態からの再スタートが非常にスムーズなので、ワンランク上のクルマを走らせているような上質さを感じさせる。特に3気筒の場合は、この利点が顕著だ。

室内の居住性は先代モデルからほぼ変わらず。シートトリムには、ペットボトル45個分に相当するリサイクル材料を使用しているという。

また、上質さでいうとアウディ独特の軽くシュアな電制プログレシブステアリングもしかりで、路面からのフィードバックは正確そのもの。スリーボックスならではの高いボディ剛性も、フラットで快適な乗り心地にきっちりと反映されている。車両の隅々にまで手が届きそうなサイズ感も、プレミアムカーとしてはいまや貴重。コンパクトクラスとはいえ、実はスリーサイズでいえばひと昔前のA4並み。毎日のパートナーとして乗るのに何ら不満はないはずだ。

新型A3セダンは、ドイツを中心としたEUではすでに4月から受注を開始しており、デリバリーは8月から順次スタート。日本市場への導入は2021年の半ばからを予定している。ドイツでの価格から予想すると、ハッチバックに対して約12万円ほど高くなるはずだ。BMW2シリーズ・グランクーペやメルセデス・ベンツAクラスセダンなど、徐々に増え始めたコンパクトでスポーティなフォーマルサルーンの中でも、ワンランク上の上質さを兼ね備えたモデルとしてお勧めの1台といえる。

425Lのトランクルーム容量は先代モデルとまったくの同一。全長は伸びているが、この分は空力改善に向けた対策に充てられている。

タイヤは16インチが標準でスチールホイールとの組み合わせ。もちろん、 17インチ以上の豊富なデザインをオプションで用意。

リポート=キムラ・オフィス/Kimura Office ルボラン2020年9月号より転載
LE VOLANT web編集部

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