本記事では、ドイツの高性能特殊部隊「AMG」、「M」、「RS」が手掛けるハイエンドスポーツを招集。孤軍奮闘で立ち向かうのは、英国のアストン・マーティン・レーシング「AMR」である。いずれ劣らぬ究極のパフォーマンスを発揮する強者揃いだが、その仕立て方やキャラクターにどんな違いがあるのか? ともに検証してみた。
ドイツ高性能車に対抗する英国スポーツカーの筆頭
「高性能ドイツ車の実力」を探るために、この項では伝統ある英国スポーツカーメーカーであるアストンマーティンとの比較を編集部が企てた。高性能スポーツカーの作り方に“ドイツ流”や“英国流”はあるのか? あるいは性能に大差はあるのか、その辺りを追求せよということらしい。
DB11AMRはDB11のフラッグシップモデルで、AMRはアストンマーティン・レーシングの略。V型12気筒ツインターボはDB11のV12よりも30ps上乗せされていて(700Nmの最大トルクは同値)、0-100km/hは3.7秒(DB11より0.2秒向上)、最高速は334km/hにまで達するという。トランスミッションやサスペンションのハードウエアはDB11と同じだが、ソフトウエアはAMR専用となっている。
DB11と共に登場したVHアーキテクチャは、FRのスポーツカーとしての理想的なパッケージを追求したプラットフォームで、前車軸より後方にエンジンを置き、トランスミッションを後車軸にレイアウトするリアトランスアクスル形式を採用している。ドイツの3強のようにFFの小さいクルマや何種類ものSUVを作る必要はなく、スポーツカーに特化した開発ができるのがアストンマーティンの強みである。
DB11の登場直後は、強力なパワーをふたつのタイヤだけで受け止める後輪のトラクション性能にやや物足りなさを感じたものの、その後に改良が施されたようで、フラッグシップのAMRでもしっかりと路面と捉えて胸の空くような加速を披露する。このような加速感に限らず、アストン・マーティンの乗り味は全般的にジェントルである。猛烈な加速に荒々しさや凶暴性はまったくなく、あくまでもスムーズに力強い。乗り心地も同様で、サスペンションのモード切り替えをスポーツ+にしても、助手席から苦情が出ないレベルの快適性が担保されている。
操縦性にしても、ステアリング操作に対する車両の反応は俊敏で切れ味鋭いナイフのようだが、その切り口(=旋回中の姿勢変化)は綺麗で滑らかで、荒削りな印象はない。こうした乗り味はDB11のみならずヴァンテージやDBSでも感じられる。エンジニアチームが統一感を大事にした味付けをしているからだろう。“ジェントル”という言葉で英国を象徴している様もなんとも粋である。