AMGが本気で仕立てたリアルスポーツ
スポーツカーをずっと手掛けてきたという点では、AMGもアストンマーティンに背景が似ているかもしれない。ベース車両にメルセデスがあって、それを改良することが主たる生業のAMGにとって、このGTはほぼイチからオリジナルの作品である。それを裏付けるのはDB11と同じトランスアクスル形式のパワートレインレイアウト。メルセデスにトランスアクスル形式はなく、GTの4ドアもトランスアクスルではない。現時点ではこのクルマ専用である。
V8ツインターボの排気量は4台の中でもっとも小さく、最高出力も唯一の500馬力台である(他はいずれも600馬力台)。いっぽう最大トルクはDB11と同じ700Nmを誇る。同じ最大トルクでも、両者の乗り味は対極にあるように思う。ジェントルなDB11に対してこちらはどう猛というか凶暴というか、だいたい音からしてかなり勇ましく、加減速の度に前後Gで身体が激しく動くような圧倒的パワーが感じられる。あえてそういう演出にしているのだろうし、このほうがエクステリアデザインとも合っている。
ドライブモードには6種類が用意され、パワートレインとサスペンションのセッティングが個別に変更できるだけでなく、ESPが3ステージあってOFFモードにするとトラクションコントロールが9段階でセットできるなど、レーシングカー並みに細かい調整が可能だが、これを余すことくなく使いこなすには相当走り込む必要があるだろう。ただ、AMGが本気でこのクルマをリアルスポーツカーとして仕立てたという気概は存分に伝わってくる。
ステアリングゲインが高くて瞬時に反応するハンドリングや、重心高が低く地面にピタリと張り付いたまま左右に動く旋回姿勢などは、まさしくレーシングカーそのものである。ステアリング操作に応じて右足で加減速を上手にコントロールしなくてはならないが、いざとなれば数多の電子デバイスが総動員で車体を安定方向に導いてくれるから心強く、こういうところにメルセデスらしさを垣間見る。