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【海外試乗】「フェラーリSF90ストラダーレ」スクーデリア・フェラーリ創立90周年のリファレンス

スーパースポーツのカテゴリーにも電動化の波は押し寄せており、今回、それに対してフェラーリが満を持して応えたのがSF90ストラダーレ。ソリューションはPHEVで、 V8ツインターボに3モーターを組み合わせたシステム最高出力は1000ps! 異次元のドライビングプレジャーに誘いかける。

その加速フィールはまさにワープ感覚!

昨年、フェラーリはF1由来のKERSを採用したラ・フェラーリに続き初のPHEV、SF90ストラダーレを発表、その量産モデルの試乗会を本拠地のモデナで開催した。SF90というモデル名は、いうまでもなく1929年に設立、今日にまで続く名門レーシングチームの90周年を意味するものだ。

モーターはフロントアクスルの左右に独立して2基、エンジンとギアボックスの間にもう1基の3モーターを搭載し162kWを供給。

本社の正門前で我々を待っていた最新の跳ね馬は、全長が4.71m、全幅が1.97m、全高が1.19mというボディサイズで、スタイリングはこれまでのV8モデル、488GTBやF8トリブートの流れを汲むものだが、ヘッドライトなど細部は一層シャープな仕上がりを見せる。個人的にやや残念なのは、リアコンビランプがアイコンである丸型から小さな異形の四角形になってしまったことだ。

ボアアップにより排気量を3990ccに拡大、リッターあたり195psを発生するV8ツインターボを搭載。トランスミッションは8速DCT。

従来のキーに代わって跳ね馬のエンブレムがついた金属製プレートをセンターコンソールに置いてセミバケットシートに収まると、正面のマルチファンクションスポーツステアリングが目の前に迫る。ここも電子化が進み、赤いスタータースイッチはタッチ式となり、最初のワンタッチで正面の16インチのデジタルバーチャルディスプレイが起動、様々な情報が表示される。そして再度スターターに触れると 「READY」 、すなわちスタンバイモードになり、セレクトスイッチで1速に入れてスロットルを踏み込むと、まずはフロントにレイアウトされた各135psを発生する2基の電気モーターによるEV走行でスタートする。

キャブフォワードなデザイン、極端に切り詰められた前後オーバーハングがミッドシップレイアウトを強調。前後重量配分は45:55。

このフェラーリ初のFFゼロエミッション走行は最大25kmで、その間の最高速度は135km/hに達する。そこからさらにスロットルを踏み込むと、背後から780psの4L V8ツインターボと、ギアボックスとの間に挟まれた電気モーターの出力がこれに加勢し、システム総合1000psのパワーが炸裂する。そして1570kgの跳ね馬を0→100km/h=2.5秒、0→200km/h=6.7秒で加速、最高速度は340km/hに達する。マラネロ郊外のワインディングではそこまでのパワーは必要ないが、フロント2基の電気モーターが最適なトルクベクタリングを行い、抜群の回頭性とオン ・ ザ ・ レール感覚のコーナリングを楽しませてくれる。

駆動レイアウトは4WDで、フロント左右のモーターが独立してトルクを制御するRAC-eを採用。トルクベクタリングの拡張技術だ。

フィオラノのテストコースでは、アセット ・フィオラノを試した。このライトウェイトバージョンは専用サスペンション、カーボン製フロア、チタン製マフラー、さらには250km/hで390kgのダウンフォースを発生するカーボン製リアスポイラーなどで計30kgの軽量化が図られ、その結果、スタンダードモデルよりも明らかにシャープなハンドリングと、ロードカーとは思えないほどのスタビリティを発揮。特にミシュラン ・パイロットスポーツ・カップ2は非常に高いグリップ性能で、サーキット走行を存分に楽しませてくれた。ちなみに、SF90をオーダーした方の50%は、この軽量バージョンを選択しているという。

ステアリング上のタッチパッドとハプティックボタンに車両の操作系を集約。ドライブモードはE、ハイブリッド、パフォーマンス、そしてクオリファイイングと、いかにもフェラーリらしい選択が可能。

SF90ストラダーレの日本での価格は、スタンダードモデルが5340万円で、アセット ・フィオラノは+570万円のエクストラ。2モーターのポルシェ918スパイダーが68万4800ユーロ、当時のレートで約8000万円だったことを考えると、リーズナブルな価格設定だといえる。これもバッテリーを含む電動化技術の進化の恩恵といえるだろう。

シートはセミバケットでホールド性とコンフォート性をハイレベルに両立。その左右センターの「ブリッジ」にF1コントロールを配列。

ボンネット下のトランク容量は74Lで、このほか容量20Lのリアシェルフも用意。スーパースポーツとしては十分な積載性といえよう。

タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2。冷却回路が完全新設計となるブレーキはブレンボとの共同開発になる。

細いスリットデザインのLEDヘッドライトにはアクティブビームコントロールを採用。リアコンビランプがスクエアなのも注目だ。

リポート=キムラ・オフィス/Kimura Office ルボラン2020年9月号より転載

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