小粒なボディでも上級クラスには負けないパフォーマンスが魅力のホットハッチ。見た目の贅沢さよりも中身で勝負するこの手の最新型は如何なる完成度を見せるのか? ドイツのup!GTIを軸に話題の2台を加えて、その実情を確認することにした。
人気の3台を徹底比較。もっとも刺激的な1台は?
その昔、ホットハッチだの、羊の皮をかぶった狼だの、いわゆるフツー車をベースにした高性能仕様に憧れていた世代は、その手の最新モデルに対して今どう思っているのだろうか? 若者のクルマ離れなどと言われはじめて久しい昨今ではあるものの、逆にクルマから離れられない昭和世代にとっては今でも気になっている方は意外に多いと察する。
今回、ここで取り上げる3台は、まさにそれ。フォルクスワーゲンの末っ子に設けられた高性能版のup!GTIに、相変わらず人気者のアバルト595コンペティツィオーネ、そして最強とも言われるミニ・ジョン・クーパーワークス(以下、JCW)を揃え、最新ホットハッチモデルの実情を探ることにした。
まずは、up!GTIから乗ることにしよう。高性能仕様とはいえ、この中で見ると、どうしても見劣りしてしまうが、元のup!から思えば、GTIと名乗るだけあり、かなり期待してしまう。それに、きっと多くの人は6速マニュアルのみの設定ということもあって、ルポGTIや初代ゴルフGTIにも通ずるものがあると気になると思うが(フォルクスワーゲン自体もそれをウリ文句にしているが)、どちらかといえばルポGTIに近く、今流の解釈として正統派らしい真面目さがup!GTIには感じるられる。
だから、それなりの速度で飛ばしても活気よりも先に安心感が伴う。もちろん飛ばすと言っても、1トンの車重にたかだか115ps&200Nmを発する1L 3気筒ターボエンジンだ。0→100km/h加速8.8秒と公表している通り、速いと感じることはほとんどない。しかし、不思議と高い満足感が得られる。それこそ200Nmという最大トルクを2000rpmから発するターボの恩恵による効果もあるが、それよりもボディ剛性の高さに心奪われる。
よって曲がることに対しても躊躇なく踏み込んでいけるところが最大の醍醐味。エンジン出力よりもシャシー性能が完全に上回っていることもあって、思い切ったドライビングが楽しめる。とにかくこのバランス感がイイ。フロントにマクファーソンストラット&ベンチレーテッドディスク、一方リアはトレーリングアームにドラムという簡素な組み合わせだからこそ、FFらしく積極的に“前だけで攻めてやろう”という気にさせる。スキール音を立てるくらいな勢いで突っ込んでいくと、ようやく“ホット”な一面を表すのは、かえってありがたいほど。普段の足として使っているときは、ちょっと乗り心地が硬いと思う程度で、基本は冷静でいられるため、時々ホットになりたい向きには最適な相棒となりそうだ。