ジープ全てに共通するのは本物を追求していること
グランドチェロキーの次はチェロキーだった。グレードはトレイルホークなので、当然そのフロントフェンダー上にはトレイルレイテッドのバッジが付いている。トレイルホーク専用の無塗装のバンパーやオーバーフェンダーのおかげでオフロードタイヤとのマッチングもいい。今回のコースに欠かせないHDCや4WD LOCK(リアデフロック機構)、アンダーガードの数々もチェロキーではトレイルホークのみの装備となる。
現行のチェロキーは2013年デビューで、決して新しいとは言えない。けれど今から2年前に行なわれたマイナーチェンジの際、それまで少し若向きで丸みを帯びていたフロントマスクをグランドチェロキー風の貫禄のあるものに変えたことで、今日でも瑞々しさが保たれている。
またこの時の改変により、3.2L・V6エンジンが最新のダウンサイジングユニットである2Lターボに交代。9速ATやオンデマンドの4駆システムと融合することでオンロードにおける伸びやかな走りも手に入れている。ちなみに別体の副変速機は付いておらず、9速ギアの1速目のレシオだけがガツンと低く、ローモード専用となる。つまり普段は2速発進となる実に賢いシステムを採用しているのだ。
件の直滑降では4WD LOW、4WD LOCK、HDCというセレクテレインをフル動員して挑んだ。だが重量級のグラチェロと違い、下りで少しペースを上げたくなるくらいチェロキーの走りには余裕があった。草原の下りでカウンターステアを当てる喜び! そんな想像もしないドライビングファンを提供してくれたのである。
優等生的なスタイリングのチェロキーと比べると、イタリア系の末っ子、レネゲード・トレイルホークは全身から溢れ出る遊び心を隠そうとしない。兄弟の中で最もコンパクトなこのクルマでオフロードに分け入ると、さらに険しい道はないかと探したくなる。図抜けたオフロードの走破性はラングラーに近いのだ。例えば今回の直滑降を逆に上れと言われたら、それが可能なのはレネゲードだけだろう。
性格的にもサイズ的にもチェロキーとレネゲードのちょうど中間、それこそコンパスというクルマの存在理由だと思う。だがオフロードに立ち向かう場合、トレイルホークだけが4WDモデルであることは理解しておくべきだろう。9速ATで横置きパワートレインはレネゲードのそれに近いがエンジンは2.4Lの自然吸気なので、1.4Lターボのレネゲードより走りに落ち着きが感じられた。おそらくオフロードでも自然吸気のパワー特性は有利に働くはず。
オフロード由来のモデルは一部の熱狂的なファンに支えられているイメージが強い。だがジープはとっくにそのマイナーな殻を破っている。何しろ今年の上半期、日本市場における輸入車のマーケットシェア率でFCAジャパンは10%越えを達成したのだ。その原動力がジープであることは言うまでもない。だが今回、タフなオフロードコースでその走破性を試して分かったのは、どのモデルも市場をよく見て導入されているというより、本物のジープとして作り込まれているという点だった。自らの精神に忠実、それが今日のジープ人気を支えているのである。