スポーツカーには乗りたいけれど、人も乗せたいし荷物も載せたいのでやっぱり実用性は捨てられない。でもSUVやワゴンで走りを楽しむのは……。という方にオススメなのがこのホットハッチ4台だ。ここでは各車のキャラクターを浮き彫りにしてみる。
かつてこのセグメントはVWの独壇場だった
高性能ハッチバックというだけで、この4台をひと括りにするのはちょっとばかり乱暴だ。たとえばゴルフGTI(432万9000円)とメルセデスAMG A35(634万円)を、誰が横並びで購入検討するのだろうか? ガチでぶつけるなら少なくともゴルフR(590万9000円)を用意するべきだが、価格だけで見るならそれでも足りない。A35に比肩し得るのは、M135i(633万円)だけだ。しかし、これができるからこそクルマ選びは面白い。
かつてこのセグメントはフォルクスワーゲンの独壇場で、その最も高みにゴルフGTIが君臨していた。庶民のアシであるコンパクトハッチに多大なる資金を投入し、規格外の品質を与えたゴルフの出来映えは当然歴代素晴らしく、世界のベンチマークであり続けた。
その潮流は今も続いているが、同時にこの流れを、実は同じ方法論で覆そうとしたのがメルセデスだ。プレミアムブランドの小型車参入は紆余曲折を経ながら4代をかけてAクラスがその基礎を築き上げ、金看板をもってここに決定打を放った。そう、庶民のアシではなく、小さな“超”高級車としてのAMGラインナップ。それはデフレ大国に住む我々にとって、もはや逆価格破壊とさえ言える。
実際、A35のプレミアム感は素晴らしく高い。レザー張りのセミバケットシートはボディを語る前にシート剛性でドライバーを圧倒し、上位セグメントと同じインパネの造形やワイドスクリーンのインテリアに心を奪われる。その乗り味は、やる気にさせるコンフォート。2L直噴ターボは400Nmのトルクをもって野太く吹け上がり、306psが発揮される5800rpmまで余裕で回しきる。
その速さは可変ダンパーを備える足まわりと4マチックによって支えられるが、そこに不快な硬さが全くないのは、上にA45というアンカーを据えているから。エンジンおよびシャシーにはまだまだ余裕があり、かつその余力がコンフォート性能に当てられるからこそ、快適なのに刺激的だ。