プロトタイプ試乗

【プロトタイプ試乗】「BMW・M3/M4プロトタイプ」正式発表に向けてカウントダウンが始まった

BMW M社は今年9月下旬、新世代のM3とM4の同時ワールドプレミアを予定している。今回はこれに先立ち、両車の最終プロトタイプをサーキットで走らせるという絶好の機会に恵まれた。ご覧のとおり全身は厳重にカムフラージュされていたが、そのパフォーマンスは期待を裏切らないものだった!

次期M3とM4のシャシー設定はほぼ共通

プロトタイプ試乗会の舞台は、ドイツ東部のザクセン州にあるザクセンリング。全長3.67km、14のコーナーがある高速サーキットで、パドックに到着すると、カムフラージュされた次期M3(G80)とM4(G82)のほかに、比較用として現行M4が用意されていた。

今回のトラックテストの時点では、エンジンスペック以外は非公開。写真はスタンダードM4で0→100km/h加速は約4秒とか。

試乗車のM3コンペティションが搭載するエンジンは、開発コードS58、2993ccの直列6気筒ツインターボで、最高出力は510ps/250rpm、最大トルクは600Nm/2600-5950rpmを発生。軽量化のために48Vのマイルドハイブリッドは採用せず、同様の理由で駆動レイアウトは4WDではなくFRが選択されたという。トランスミッションは8速ATで、0→100km/h加速は約3.9秒、最高速度は280km/hとアナウンスされた。

もう一台のM4も同じくS58を搭載するが、こちらはベースモデルで最高出力は480ps/6250rpm、最大トルクは600Nm/2600-5600rpm。なお、こちらには6速MTが組み合わされており、0→100km/hは約4秒フラット、最高速度は280km/hという。

試乗車のコクピット回りは基本的にベースの3/4シリーズのままで、見慣れた風景ながら操舵フィールだけダイレクトという不思議な感覚。市販車にはMのスポーティなトリムが施される。

まずはM4プロトタイプでコースインすると、あらためてS58ユニットの官能的な吹け上がりに頬が緩む。BMW M社の副社長で開発のトップであるディルク・ヘッカー氏は、「エンジンのクーリングとオイル潤滑はサーキットで開発とセッティングを行っているので思い切り回していいですよ」と自信満々だ。さらに﹁このエンジンには軽量な鍛造クランクシャフトを採用しているので、回転マスの低減によってスムーズで気持ちのいい回転上昇が楽しめるはずです﹂とも語る。たしかに、スロットルに対するS58の反応はまるで電気がスパークするかのように瞬間的で、2系統のエキゾーストシステムから奏でられるサウンドは、重厚な低音から金属的な高音まで、まるで管楽器の響きのように耳に心地いい。

続いてM3コンペティションに乗り換えて、こちらではおもにシャシーのポテンシャルを確認する。というのは、ヘッカー氏は2台の開発に際し、ボディ形状に関わらずほぼ共通のスポーティなシャシーを与えたと説明した。彼はこの時点では多くを語らなかったが、部分剛性を飛躍的に向上し、操舵そしてパワーオンに対して、一層ソリッドにボディが反応するように設計したとだけ教えてくれた。

S58ユニットはX3MおよびX4Mと同じチューン。スタンダードモデルは480psと600Nm、コンペティションは510psと600Nmを発生。

その成果は、ザクセンリングの各コーナーで実感することができた。コーナーに進入しステリングを切り始めると、リアアクスルはまるで極端なショートホイールベースのクルマのように一瞬のためらいもなく追従してくる。オーバステアのような感覚だが、あくまでコントロール下にあるので、ドライバーはまるで自分の腕が上がったかのようにリズミカルにコーナーをクリアしていけるのだ。

タイヤはF:275/35ZR19、R:285/30ZR20のミックスサイズ。カーボンセラミック・コンポジットディスクブレーキはオプション。

今回はサーキットでの限界性能を試せたが、はたして日常性はどうなのかをヘッカー氏に聞いてみたところ「私はいま、このプロトタイプでテストを兼ねて通勤しているのでご心配なく。9月以降の試乗会ではその成果も体験できますよ」と自信のほどを語っていた。

こちらはM4の予想CG。4シリーズクーペで導入されたメガキドニーは、M4だけでなくM3にも採用されるはずだ。

2020年9月に正式発表される新型M3/M4。ドイツでのベース価格は前者が8万ユーロ(約970万円)、後者は8万5000ユーロ(約1030万円)と予想される。

リポート=キムラ・オフィス/Kimura Office ルボラン2020年9月号より転載
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