現在、主戦場をコンクリートジャングルへと変えたメルセデス・ベンツGクラス。しかしそれは、リアルオーフローダーとしての牙を抜かれたわけではない。唯一無二の佇まいでそこらのSUVでは到底及ばない走破力があるから魅力的なのだ。
歴史と熱狂がこのクルマを現代に生きさせる
現代の硬派なクロカン4WDは性能だけでは語れない。ある種の建造物や文化遺産同様、歴史的な「必然」を必要とするからだ。
事実、2000年以降に生まれたSUVはポルシェ・カイエンやBMW X5のようなスポーツカーやサルーンを上げ底して作った快適かつ効率的なモノばかり。育んできた歴史や熱狂的ファンなどの「作る理由」がない限り、今のGクラスのような前近代的デザインの4WDは生まれ得ない。途中で「なぜあんなに空気抵抗が悪くて非効率なクルマ」と反対されるに決まってる。
Gクラスの魅力の本質は元NATO軍用という出自と硬質感にある。ボディは無骨すぎる箱型フォルムですべてに存在理由のあるパーツが付き、骨格は新しくなったとはいえ頑丈なラダーフレーム。ドア開閉感やロックのフィーリングはまさに金庫のごときオーバークオリティ。同時に適度な現代風アレンジもされており、現行型になって前輪サスは独立懸架になり、ラック&ピニオン式ステアリングを装着。エンジンも最新の3L直6ディーゼルやガソリンV8が選べてまさに新旧いいとこどり。
Gクラスはメルセデスの技術だけではなく、歴史の積み重ねで生まれた他ではあり得ないSUV。日本ブランドどころか他の欧米ブランドでも絶対に作れないのだ。
小沢コージ/K.Ozawa