
現在、主戦場をコンクリートジャングルへと変えたメルセデス・ベンツGクラス。しかしそれは、リアルオーフローダーとしての牙を抜かれたわけではない。唯一無二の佇まいでそこらのSUVでは到底及ばない走破力があるから魅力的なのだ。
歴史と熱狂がこのクルマを現代に生きさせる
現代の硬派なクロカン4WDは性能だけでは語れない。ある種の建造物や文化遺産同様、歴史的な「必然」を必要とするからだ。
事実、2000年以降に生まれたSUVはポルシェ・カイエンやBMW X5のようなスポーツカーやサルーンを上げ底して作った快適かつ効率的なモノばかり。育んできた歴史や熱狂的ファンなどの「作る理由」がない限り、今のGクラスのような前近代的デザインの4WDは生まれ得ない。途中で「なぜあんなに空気抵抗が悪くて非効率なクルマ」と反対されるに決まってる。
Gクラスの魅力の本質は元NATO軍用という出自と硬質感にある。ボディは無骨すぎる箱型フォルムですべてに存在理由のあるパーツが付き、骨格は新しくなったとはいえ頑丈なラダーフレーム。ドア開閉感やロックのフィーリングはまさに金庫のごときオーバークオリティ。同時に適度な現代風アレンジもされており、現行型になって前輪サスは独立懸架になり、ラック&ピニオン式ステアリングを装着。エンジンも最新の3L直6ディーゼルやガソリンV8が選べてまさに新旧いいとこどり。
Gクラスはメルセデスの技術だけではなく、歴史の積み重ねで生まれた他ではあり得ないSUV。日本ブランドどころか他の欧米ブランドでも絶対に作れないのだ。
小沢コージ/K.Ozawa
アナログ的でありながらしっかりと上質感で楽しい
変わらないために変わるというモデルチェンジ(ただし型式名称はW463で変わらず)を選んだGクラス。車台周りでは刷新されたラダーフレームもさておき、フロントサスの独立懸架化やラック&ピニオンの採用によって、オンロードでの扱いやすさは格段に向上。街中でも高速道路でも、限りなく普通のクルマと同じ感覚で日常を賄えるようになった。

MERCEDES-BENZ G350d/MBUXはないもの、12.3インチのワイドモニターが2枚備わった近代的なデザイン。3つの電子制御ディファレンシャルロックでセンター/リア/フロントのロックが可能。ローレンジモードでは通常の2倍以上の駆動力が発揮されクロスカントリーギアが可動する。
オフロードでの走破性は電子制御によるアシストを慎重に吟味して加えつつ、ヘビーデューティユースには必須の副変速機や、Gクラスにとっての「型」ともいえる3つのデフロックを任意選択する機能を活かしている。例えばGLEクラスは可動域の大きなエアサスやEアクティブボディコントロールを筆頭とした最新の電子デバイスで、このクルマに比肩するほどのオフロード性能を得ているかもしれない。でも、Gクラスはあえて前型と同様の仕様として、アナログ的なドライビングプレジャーを確信的に継承している。
グレード的にはシャシー周りの柔軟性が高まったこともあってG63級の動力性能でも受け止められているが、燃費やトルクバンドの広さのみならず、直6化で上質感をも高めたディーゼルのG350dが白眉。巷ではプレミアが乗るほどタマ不足なのが難ではある。
渡辺敏史/T.Watanabe
【Specification】MERCEDES-BENZ G350d
■全長×全幅×全高=4660×1930×1975mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=2460kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2924cc
■最高出力=286ps(210kW)/3400-4600rpm
■最大トルク=600Nm(61.2kg-m)/1200-3200rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:リジットアクスル
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/60R18:265/60R18
■車両本体価格(税込)=12,370,000円
お問い合わせ
メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610