海外試乗

【海外試乗】「メルセデス・ベンツSクラス」現代の最新技術が余すところなく投入された正真正銘のフラッグシップ

高速クルージングはすこぶる快適

最初に試乗したのは来年に発売予定のトップモデル、S580 4マチックのAMG仕様で、フロントバンパーの左右に設けられた大型エアインテークがスポーティな印象を与えているのが特徴だ。まだ正式なデータはないが、搭載されているパワープラントは排気量3982ccのV8で、最高出力は503ps(370kW)だが、48Vマイルドハイブリッドで搭載されるISGが20ps(15kW)のブースト効果を与える。一方最大トルクは700Nm、9速ATの9Gトロニックの組み合わせで最高速度250km/hに達する。

前後のシートは、まるでソファのような快適な掛け心地だ。

空港からアウトバーンに入り、コンフォートモードにセットしてしばらく南下すると、速度制限解除の区間が現れる。ここからアクセルペダルを踏みこんでみると、低速から高速までよどみのない加速で、リミッターの介入する250km/hまで到達するのはあっという間だ。

ダッシュセンターには12.8インチの大型ディスプレイを新たに設置。

アウトバーンの推奨速度である130km/hでは、標準装備の連続可変ダンピング機能を持ったエアマチック(エアサス)によって、路面からの余計な振動やノイズを伴わないクルージングを披露してくれる。これなら日本の高速道路でも余裕のクルージングを楽しめるに違いない。

レベル3の自動運転技術等、運転支援システムも充実

また高速上で渋滞に遭遇しても、レベル3に相当する「ドライブパイロット」でリラックスしたパーシャル自動運転も可能だ。現在ではまだ法制化されていないが、メルセデスでは2021年にドイツにおける法整備の下に、本格的な「レベル3」の導入を計画しているという。

進化したMBUXでは、個々のシートからの音声認識にも個別に対応することが可能となった。

このほか最新のアシストシステムは一時停止、横断歩行上の歩行者などの検知と自動ブレーキ機能を持っており、街中でも高い安全を保証する。さらにパッシブセーフティ「プレセーフ」では、Eアクティブボディコントロールシステムによって、車両側面からの衝突に際しボディを8cm上昇させ、サイドインパクトに対して乗員を保護してくれる。

ライトの操作スイッチはドアトリムに移設されている。

一方、緩やかなコーナーの続く一般道のルートで走行モードを「スポーツ」にすれば、フィードバックを正しく伝えるステアリングフィールに加え、わずかなスロットルワークでも、圧倒的なトルクを発生するV8ユニットを介してアクティブな運転を楽しむこともできる。
Sクラスはドライバーズカーとしても十分に通用するポテンシャルも持っているのだ。

新採用されたE-アクティブコントロールは、エアサスベースのアクティブサスペンションで、フラットな乗り心地を提供してくれる。

このニューSクラスはドイツではすでに受注が始まっており、発売当初に用意されるモデルは、3L直6エンジンを搭載したS450 4マチック(367ps)とS500 4マチック(435ps)、3L直6ディーゼルを搭載したS350d&S350d 4マチック(286ps)、 そしてS400d 4マチック(330ps)の5機種が用意されている。

トランクの容量は550Lと現行モデルよりも40L拡大された。開口部も大きく奥行きも長いため、ゴルフバックの収納には便利だろう。

価格はS350dのベーシックモデルが93438ユーロ(約1160万円)で、デリバリーは12月からと発表されている。
もちろん電化モデルも準備中で、来年には100kmのゼロエミッション走行が可能なプラグインハイブリッドのS580eが登場する予定だ。
一方、日本へ導入が予定されているモデルはS500 4マチックとS400d 4マチックが2021の前半に、今回試乗したV8を搭載するトップモデルのS580 4マチックは秋になる見込みで、価格はまだ公表されていない。

サスペンションはフロントが4リンクで、リアがマルチリンク、オプションでE-アクティブコントロールが装着可能。後輪を10度操舵できるリアステアも用意された。

こうして最新の安全装備に先進運転支援機能、一新されたインフォテイメントにドライバーズカーとしてのドライビングファンを備えたニューSクラスは、世界最高のラグジャリーサルーンの座を、再び揺るぎないものにしたといっていいだろう。

新型Sクラスでは、世界初の後席エアバッグをはじめ、安全装備も充実。側面衝突の危険を検知すると車高を瞬時に80mm上げ、サイドシルで衝撃を受ける機構も備わる。

従来モデルより60kgの軽量化が図られたボディは、バルクヘッドの開口部にダブルシールを採用することで遮音性を高めるなど、細部にわたって遮音/吸音が徹底されているという。

リポート=木村好宏/Yoshihiro KImura ルボラン2021年1月号より転載

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