マツダ独自のトルク制御でコーナリングが楽しくなる
マツダ3も、ワインディングロードを駆けぬけることが楽しくなるセダンだ。マツダ独自のGベクタリングコントロールにより、ステアリング操作に対してエンジンのトルクを制御。たとえば、コーナー進入時はトルクを抑え荷重をフロントに移すことでより正確な応答性を実現している。ただ、制御感はまったくない。それでも、ステアリングを切った通りに曲がってくれるため、マツダが追求する「人馬一体感」が確かめられる。
さらに、マツダは以前からシート設計にこだわっている。かつての日本車は、オーナーがどんな座り方をしても文句を言われないことを重視していたが、マツダのシートは違う。エンジニアが意図する最適な座り方に自然と誘うように、シートに深く腰をかけてしまう。結果的に背中から大腿部にかけてシートにフィットするので、後席を含めドライバーがコーナーを駆けぬけても同乗者の体がグラつきにくくなる。また、背もたれの下部で腰を支えるのでうっ血が抑えられ、長時間座っていても疲労度が軽減される。
静粛性が高いことも、マツダ3の特長だ。特に、ロードノイズの抑制はAクラスだけではなくCセグメントのドイツ系プレミアムを超えている。ザラついた路面を通過する際に聞こえるゴーッという感じのノイズの音量が低いことに加え、響きにくく異なる周波数が重なり音源が複数あるような印象とも無縁でいられる。そのため、聞こえても耳障りにならない。
ただ、制限速度が100km/hならエンジン音は耳に届かないが試験区間で120km/hになるとボーッという感じで聞こえてしまう。それは、遮音性の問題ではなく6速で2600rpmとエンジン回転数が高いからだ。一般路では、60km/h以下で6速までシフトアップされるのにその上にギアがないというのは機能として現代的とはいえないと思う。
エンジニアは、回転数が低ければいいわけではないという。とはいうものの、試乗車が搭載するマツダが世界に誇る火花点火制御圧縮着火式のスカイアクティブXは市街地で1500rpm以下を保つ場面が多くなっているのだ。
温泉と食事を嗜んだ後、帰路はクルージング&トラフィック・サポートにアクセル操作とブレーキ操作を任せる機会が多かった。だが、一定の速度を保つのに上り勾配で時に6速からダウンシフトされることが惜しまれる。中回転域にかけてのトルクは、2Lの直列4気筒エンジンとしてはより充実させたいところ。ただ、力強さの余裕を期待するなら1.8Lの直列4気筒ディーゼルターボのスカイアクティブDも用意される。
クルージング&トラフィック・サポートには、車線維持のためにステアリング操作をアシストする機能も含まれる。同種の機能は、Aクラスのアクティブディスタンスアシスト・ディストロニックとアクティブレーンキーピングアシストも備えるので、多くの場面でアクセル操作やブレーキ操作の必要がなくステアリングには軽く手を添えておくだけで済む。こうした制御の精度は、技術で先行するAクラスの方が高かった。それだけに、旅の余韻にも浸りやすかったこともつけ加えておこう。