国内試乗

【国内試乗】「ルノー・ルーテシア」全身に磨きをかけてクラスの頂点を狙う

RENAULT LUTECIA

ルーテシアは1990年に登場して以来、スモールカーの先駆者として、このクラスに数々の革新をもたらしてきた。初代から第4世代までのシリーズ累計で1500万台を販売。フルモデルチェンジを受けて第5世代となった新型もまた、すべてが劇的な進化を遂げている。

ついに先進安全機能が標準装備された

ヨーロッパでナンバーワンBセグハッチバックとして君臨するルノー・ルーテシアが、5代目へとフルモデルチェンジを果たした。 外観上で最も目を引くのは、メガーヌ譲りの大枠なLEDヘッドライト。しかしそれ以外大きく変わらぬ印象を受けるのは、あえてのキープコンセプトを貫いたから。なぜならそのスタイリングはルーテシア人気を支える最大の理由となっており、プラットフォームから刷新したにも関わらずこれが受け継がれることになったのである。

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エクステリアは先代モデルで好評を得た「LOVE」をテーマとする官能的なデザインがベース。精密さやダイナミズムをもたらす直線や精緻に作り込まれたディテールが特徴だ。

対してインテリアと、それに伴う装備は大きく変わった。少し寂しく感じるほどシンプルだったダッシュボードは立体的な造形となり、2トーンのソフトパッド仕様に(インテンス/インテンス テックパック)。シフト周りのオレンジトリムなどはなんだか日産車に乗ってるような気持ちになるが、せり上がったコンソールによってシフトノブは手を伸ばせばすぐ手が届く配置となり、ナビや各種操作系、水平基調の空調ルーバーまでもがわずかに傾斜して、ドライバーをまるっと取り囲むようになった。またメーターも、今回から流行りの液晶タイプとなっている。

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パワートレインは全グレードで、131ps/240Nmを発揮する1.3L直列4気筒ガソリンターボエンジンと7速DCTの組み合わせ。

肝心な走りは、語るべきことがふたつある。ひとつはACCを基軸とした先進安全機能が、ようやく標準装備されたこと。ルーテシアのグレードはゼン(受注生産)/インテンス/インテンス テックパックの3種類となっており、テックパックを選ぶとここに「360度カメラ」と「レーンセンタリングアシスト」がアドオンされて、いわゆる日産的な先進安全支援による運転が可能となる。

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タイヤサイズは205/45R17。試乗車はコンチネンタルの「エココンタクト6」を履いていた。

生身の走りはというと、シャキッとした乗り味が印象的だ。ルノー・日産・三菱のアライアンスによって今回からスタートする「CMFーB」プラットフォームは剛性感が高く、かつ軽量な印象。ここに割とソリッドな足まわりとクイックなステアリングが組み合わされることで、誰もが直感的に運転できる、オンザレールなハンドリングが実現されている。

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インテリアは乗員が触れる部分に高品質なソフト素材を採用するなど、従来モデルよりも全体の質感が向上している。

ダンパーで“ため”を作らない走りは、いわゆる「フランス車的な乗り味」ではない。ステアリングの切り始めにタイヤの接地感を得にくい部分があり、玄人肌にはゲームのような運転感覚に感じられてしまう部分も多少あるだろう。また初期減衰力が高い分だけ、17インチの低燃費タイヤからロードノイズも遠慮なく入って来る。

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インテンス テックパックにはフルレザーシートが標準装備。

それでも排気量が1.3Lとなった新型直列4気筒ターボ(131ps/240Nm)に鞭を入れると、その理由が分かる気がする。特にスポーツモードに転じるとこのエンジンは快活、いや数値以上の速さを感じさせるのだ。

RENAULT LUTECIAそこには先代比で13ps/35Nm向上した出力&トルクと、7速化したDCT、据え置きされた車重によるピックアップ力が効いている。普段はタイヤを転がすようにスーッと走り、エンジン回転を抑えてエコに徹する。しかしいざ走らせれば抜けるような気持ちよさで加速するこのエンジンに対して、ややソリッドな足まわりでスタビリティを確保するのは納得が行く。そして速度が上がるほどにその乗り味は、フラットになって行く。

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メーターパネルは7インチの液晶表示タイプ。

総じて新型ルーテシアは、同階級のライバルというより、ひとつ上のクラスに闘いを挑んでいる気がした。それもヘタにプレミアム化するのではなく、Bセグのサイズ感や魅力を活かしたままで。

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荷室容量は従来型の330Lから391Lに拡大し、クラストップレベルのスペースを確保。後席は40:60の分割可倒式となる。

フォト=宮越孝政/T.Miyakoshi ルボラン2021年1月号より転載

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