国内試乗

【比較試乗】「BMW・3シリーズ vs アルファロメオ・ジュリア」スポーツセダンのエントリーモデルで走る愉しさを満喫する旅

ベーシックなジュリアでも走りの世界へと誘う

非の打ち所のないベーシック感をこれでもかと打ち出してくる318iから乗り換えると、ジュリアはスプリントでも“エモい”。見た目こそ3シリーズのような押し出し感はないけれど、それはアルファ・ロメオの美意識であり、走らせればドライバーの気持ちを、本当に上手にくすぐってくる。

ALFA ROMEO GIULIA 2.0 TURBO SPRINT/搭載するパワーユニットの2Lターボは、低回転域から豊かなトルクが立ち上がり、高回転域では伸びが良くワインディングでもファンなドライビングを提供してくれる。ギアボックスは8速ATとで、Cd値はわずか0.23という空力性能も身軽さに貢献している。

乗り心地はマイナーチェンジを経てさらにコンフォート性を増したと感じていたのだが、318iと比べれば断然スポーティ。そしてステアリングを切り始めると、鋭くノーズが切れ込んで行く。

ALFA ROMEO GIULIA 2.0 TURBO SPRINT

これは11.8:1というクイックなステアリングギアレシオだけでなく、シャシーの躾けそのものが前のめりだからだと思う。318iはステアリングを切っても、車体が水平なまま曲がろうとする。対してジュリア・スプリントは、絶妙に前下がりなロールセンター軸にそって、ボディ全体で曲がって行こうとするイメージ。その際リアサスがほどよく伸びてコーナリングにキレ味が増す。

ALFA ROMEO GIULIA 2.0 TURBO SPRINT

エンジンもわかりやすく吠える。DNAモードを「N」(ナチュラル)に入れる限りは猫を被っているけれど、「D」(ダイナミック)モードでブーストを引き上げれば、ガロガロと乾いたサウンドでマフラーを鳴らす。そこには自然吸気ユニット時代のような高密度感はないが、現代のユニットとして乗り手を喜ばせようとするアルファの気概が感じられる。レブリミットは5500rpmと318iに比べて低めだが、トルクがピークに達する際のパンチが効いており、積極的に回したくなる。そういう意味ではMTに乗りたくなるが、このパンチ力は8速ATのギア比にも助けられているはずだから、これはひとつのまとまったパッケージングなのだと思う。

ALFA ROMEO GIULIA 2.0 TURBO SPRINT

そんなシャシーとエンジンが組み合わさるわけだから、走らせて面白くないわけがない。ビーナスラインに着いてからはまさに独壇場で、小さなステアリングを切り込みながら、気持ち良くワインディングを泳ぎ周ることができた。

ALFA ROMEO GIULIA 2.0 TURBO SPRINT

もちろん318iも走りの偏差値は高かった。スポーツモードで電動パワステを座らせてやれば格段にその操作性が落ち着きを見せ、セオリー通りにブレーキでフロント荷重を保ち、ステアリングを切り込んで行けば、4ドアスポーツセダンと呼ぶに相応しい、お手本通りの奥深い走りを見せてくれる。

ハイキングコースでもある車山湿原近くの車山肩駐車場はレストランもあり絶景も楽しめるので休憩にオススメ。気温はマイナス1℃で粉雪が舞い始めていた。ここからさらに標高が高くなる美ヶ原高原は大丈夫かと不安に……。

しかし318iと比べれば、ジュリア・スプリントはもはやちょっとしたスポーツクーペだ。そして318iにこの走りを求めるようとするならば、BMWは「それなら420iクーペをどうぞ」と言うのではないか? と思えた。そういう意味でいうとBMWはすでに住み分けを完了しており、318iは4ドアセダンの役目をまっとうしていると言えた。

確かなスキルで走ることを楽しみ、そのアウトプットも分かりやすくドライビングファンに溢れる山田氏にナビゲーターを依頼。11月初旬だったが、美ヶ原高原手前でひと足早い積雪に見舞われてしまい途中で断念。

ショート・トリップとはいえ今回のように600km近い距離を走るとき、家族がいるならば、その安定感やリアの居住空間の広さも含めて、間違いなく318iをお勧めする。逆を言えばふたりで熱い時間を過ごすなら、断然ジュリア・スプリントだ。

SUVが全盛の今、4ドアセダンの見方を変えること、つまりはクーペ的な乗りこなしをすることは、ひとつのヒントなのではないか? と、アルファロメオには教えられた気がする。どちらが優れているというよりは、どちらを選ぶかだ。この2台のスポーツセダンは、素晴らしいライバル関係にある。

フォト=安井宏充/H.Yasui(Weekend.) ルボラン2021年1月号より転載

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