高級車の素質は一緒。違うのはそのベクトルだ
その秘訣のひとつは、ノーズが伸びてフロントミッドシップとなったことでバランスが向上したシャシーだが、そこに搭載された48Vシステムのアクティブ・アンチロールバー、3チャンバーエアサスペンション、そしてフライングスパーで初採用された4輪操舵システムが織りなす軽快でシュアなハンドリングと滑らかで安定した乗り心地は見事のひと言に尽きる。
もちろんオートマモードもいいのだが、レスポンスがよくスムーズな8速DCTとW12との相性がよく、スポーツモードと標準のベントレーモード、コンフォートモードとのメリハリも効いているので、パドルシフトで操りながら、ついついペースを上げてしまう自分に気づく。運転を飽きせないというか、しっかりと集中できるので結果として余計なストレスが少ない。まさにドライバーズカー、スポーツサルーンの理想型というべき姿に仕上がっているのだ。
対するマイバッハS650は、Sクラスの良さはそのままに、ひたすら静かに滑るようにゆったりと走っていく。ノーズに収まるV12気筒エンジンは2360kgの車体に対しても十分すぎるパワーを発揮するが、声高にその存在を主張することなく、終始黒子に徹している印象だ。スムーズで滑らかな7速トルコンATもそのキャラクターによくマッチしている。
センターコンソールのスイッチで、「スポーツ」「コンフォート」「カーブ」と3つのドライブモードを選択できるものの大きな味わいの違いはなく、MBCの旨味を活かしたコンフォート寄りなセッティングになっている。特筆すべきはカーブモードで、高速コーナーでもタイトカーブでも2.5トンの巨体をロールさせることなく、フラットな姿勢を保ち続ける見事な制御ぶりには驚いた。
また決してスポーティではないものの、ハンドリングは想像以上に素直で気持ちよく、思いのほか小回りも効くので、ショーファーは必要以上にリアシートに気を配らなくてもスムーズな運転ができるはずだ。
今回、強く印象に残ったのは、それぞれのブランドのスタイルやスタンスが、この2台に想像以上に色濃く反映されているということだ。それこそが、この両車がハイエンドサルーンを名乗る所以といえるだろう。
一口に“超高級車”とカテゴライズするのは簡単だが、このように実際に触れ、乗ってみると、それぞれのブランドのスタイルやスタンスが、想像以上に色濃く反映されていることがよくわかる。
それこそが、この両車がハイエンドサルーンを名乗るに相応しい理由といえるだろう。
そしてそこには、世のハイパースーパーカーにも劣らない世界観と魅力が確実に存在する。