スマートフォンにクルマが近づいていることを警告してくれる!
急な飛び出しにヒヤリとした経験を持つドライバーは少なくない。例えば、横断歩道がない道路で、歩道から高齢者がいきなり出て来る。また、住宅地の狭い路地から電動アシスト自転車の前後に子どもを乗せた主婦が、左右を確認せずにいきなり出て来る。さらには、街灯が少ない夜道で、ネコがいきなり飛び出して来る。
もしもこうした状況を先読み出来れば、ドライバーのストレスは大きく減ることは間違いない。また、注意喚起に次いで衝突被害軽減ブレーキが効けば、さらにありがたい。そんな世界が、もうすぐやって来そうだ。
ホンダが「人研究(ひとけんきゅう)」の領域で、AI(人工知能)を活用し、運転行動に対して潜む危険を予知する研究開発を進めている。その実物を体験することが出来た。
設置されたカメラが人や自転車を画像認識する。画像認識については既に、HONDA SENSINGでも単眼カメラで採用している技術で、人や自転車を他の物体とは違うと昼間だけではなく夜間もしっかりと識別し、衝突被害軽減ブレーキをかけることができる。そうした技術をさらに進化させ、人や自転車が動いている状況をリアルタイムで観測して、これから先どのように動くかを予測することができるようになった。
具体的には、人の場合は、背骨を中心に手を足の関節の曲がり方から人全体の動きを把握し、その上で顔の向きと下半身の動きそれぞれの方向を検知している。また、歩いている状態や立って止まっている状態だけではなく、スマートフォンを持っている状態、さらに”歩きスマホ”の状態なども識別することが可能だ。
また、人が歩道で車道を並行して動いている場合、車道に向かって歩いている場合、横断報道を渡っている場合、横断歩道がない車道内にいる場合など、位置によってもドライバーに対するリスクの度合いを示すことができる。人よりも動きが速い自転車の場合でも、乗っている人の顔の向きと前輪の動きなどによりリアルタイムで検知できる。
この研究を進める担当者に聞いたところ、この技術は犬や猫などの小動物にも対応は可能であるという。HONDA SENSINGに限らず、現在量産されている全メーカーの先進運転支援システムでは、地上から1メートルていど以下の動くモノや動物についての検知性能は、人や自転車を検知する性能ほど高くない。そのため、小動物との接触を避ける技術とは言えないのが実状である。
新技術によって多くの命が救える時代はもうすぐやって来そうだ。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。