メルセデス・ベンツ

これはSUVとワゴンのいいとこどりだ! 「メルセデス・ベンツC220dオールテレイン」国内試乗

Cクラス初となるオールテレイン

セダンに遅れること数か月。待望のCクラス・ステーションワゴンが上陸した。さらに今回は、これまでにEクラスにしか設定のなかったオールテレインを導入。SUVの特長を持ちながらステーションワゴンの使いやすさを両立したというこのモデル。さてその仕上がりとは!?

エクステリアはオフローダー的なグリルやバンパー、アンダーガードといったSUVデザインが特徴だが、ボディサイズは一般的な駐車場に入るサイズに収めている。

新型Cクラスからは、これまで以上に積極的にシェアを拡大しようとするメルセデスの気概が感じられる。例えばそれは、昨年の新型Cクラスの発表会に窺えた。Cクラスの歴史上初めて、セダンと同時にワゴンもお披露目したのである。

セダンとワゴンの開発は通常ほぼ同時進行で行われ、でも戦略的に発表時期はずらしてきた経緯がある。その慣例をわざわざ壊すに至った社内事情は定かではないけれど、「出来上がったものは出し惜しみせずどんどん売っていこう」みたいな現実路線に切り替えたのかもしれない。

もうひとつ、積極的な姿勢として感じたのはオールテレインの追加とその導入の早さである。昨年2月の発表に続き、秋にはオールテレインをデビューさせた。その上、そもそもオールテレインはこれまでEクラスにしか設定されていなかったモデルで、Cクラスでは初となる。発表から1年を待たずして、現行Cクラスはセダンとワゴンとオールテレインの3タイプを取り揃えるに至ったのである。

オールテレインには2ℓターボディーゼルエンジンを搭載したC220dを用意。ステーションワゴンにはC180、C200、C220dをラインナップ。

オールテレインはワゴンをベースに、エクステリアに専用の加飾を施し、全高を40mm上げることでロードクリアランスを拡大、そこそこのオフロード走破性を備えたモデルである。サスペンションも独自のセッティングとし、ダイナミックセレクトには「オフロード」「オフロード+」のふたつを追加している。日本仕様では2Lの直列4気筒ディーゼルのみ。

このエンジンは「OM654M」と呼ばれ、これまでの「OM654」の改良型であり、ISG仕様となっている。実はOM654よりも排気量が44cc増えていたり、出力/トルクも増強されるなど、モーターを組み合わせてもポテンシャルが存分に発揮できるよう手が加えられているのである。

インテリアの意匠などは基本的にCクラスセダンに準じるが、オールテレインでは、オフロードモードなどの設定画面が表示される。

今回は同じパワートレインを積むワゴン(駆動形式はFR)と乗り比べることができた。ワゴンはアヴァンギャルドなのでスポーツサスペンションが組み込まれており、ばね上の動きが少ない引き締まった乗り味。

いっぽうのオールテレインはアヴァンギャルドではないし、オフロード走行も想定したサスペンションストロークとなっているので、ばね下はよく動くしばね上もそこそこ動く。それでも高速巡航ではスタビリティが高く直進安定性も高い。ハンドリングもワゴンのほうがややスポーティである。ステリングを切ってから車体が向きを変えるまでの時間はオールテレインよりも早いが、だからといってオールテレインがダルなわけではなく、ドライバーの意志通り正確に曲がる。

車重は4WDのオールテレインのほうが50kg重い(車検証値)ものの、ISG仕様の直4ディーゼルは低回転域から潤沢なトルクを発生するので、両車の動力性能に大きな差違があるとは思わなかった。参考までに、オールテレインの試乗車はほぼ満タンで走行可能距離が「822km」を示していた。アシの長さはディーゼルならではの魅力である。

ラゲッジルーム容量はCクラスステーションワゴンと同様の490~1510Lを確保。リアシートは分割可倒式を採用する。

自分は海外試乗会で、歩くこともままならない急勾配などを難なく走ってのけたオールテレインを知っているので、そんなオフロード走破性とオンロードでの乗り心地を両立させたサスペンションにいたく感激し、そのセッティングやオフロードモードの開発をGクラスのチームが監修していると聞いて思わず膝を打ったから、ワゴンよりはオールテレインのほうが好みである。

ところが同行した編集のK女史は「ワゴンでしょ」と即答し「だって乗り味がすごくスッキリしてるから」と言った。彼女の意見もまったくその通りである。いまのCクラスなら、このふたりともこぼさず顧客として取り込める。ラインナップ拡充の効果はすでに出ていた。

【Specification】C220d 4マチック オールテレイン
■車両本体価格(税込)=7,960,000円
■全長×全幅×全高=4760×1840×1495mm
■ホイールベース=2865mm
■トレッド=前1590、後1590mm
■車両重量=1870kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=OM654M/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1992cc
■エンジン最高出力=200ps/3600rpm
■エンジン最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■燃料タンク容量=66L(軽油)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前4リンク/コイル、後5リンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後245/45R18

【Specification】C180ステーションワゴン アバンギャルド
■車両本体価格(税込)=6,250,000円
■全長×全幅×全高=4755×1820×1455mm
■ホイールベース=2865mm
■トレッド=前1580、後1590mm
■車両重量=1690kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=M254/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1494cc
■エンジン最高出力=170ps/5500-6100rpm
■エンジン最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1800-4000rpm
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前4リンク/コイル、後5リンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後225/50R17

メルセデスベンツCクラス・オールテレイン公式サイト

フォト:郡 大二郎/D.Kori ルボラン2022年5月号より転載

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