モデルカーズ

多彩なシートアレンジに昇天必至!ニチモ製プラモ「タウンエース1800グランドエクストラ」が魅せる!【モデルカーズ】

レジャーブームの盛り上がりに対応した初代・後期型

今もその名が続くワンボックス車、トヨタのタウンエース。その誕生は1976年のことだ。当時のトヨタのワンボックスには、パブリカをベースに生まれたライトエースと、コロナのエンジンを使用するハイエースがあり、その中間を埋める車種として開発されたのである。実際にエンジンはカローラのものを搭載していたが、ボディパネルは一部をライトエースと共用。スタイリングにどことなくライトエース似のところがあるのはそのためである。

当初からバンとワゴンの2種類があったタウンエースだが、装備などにあまり変わりはなく、ワゴンに力が入れられていたとは言い難い。しかし、1970年代も終盤を迎えるとレジャーユースが高まり、これに対処する必要が出てきた。タウンエースもハイルーフやサンルーフを導入するなどしていたが、日産のバネット3兄弟(サニーバネット/チェリーバネット/ダットサンバネット)に大きく差を付けられてしまう。バネット3車が1980年のマイチェンで国産車初の回転対座シートを採用、これがかなりの成功を収めたのである。

これに対抗する形でタウンエースも同年末にマイチェンを実施、上級グレードに対面式シートを導入した。2列目シートのシートバックを前方へスライドさせ、後ろ向きにも座れるようになるという仕組みである。ヘッドレストは向きを逆にして差し込み直し対処。また、シート自体も前方にスライドし、対面時の足元スペースが確保できるようになっていた。

2・3列目シートはフルフラットにすることも可能で、その際は2列目シートのヘッドレストを3列目シート下のスペースへ収納するようになっていた。さらに空調についても充実を図っており、オーバーヘッドタイプのエアコンを注文装備として設定。これは運転台上のルーフにクーラーの吹き出し口を設け、2・3列目席へと冷気を送るものだ。さらにこれとセットで、助手席後ろに装着されるクールボックスが用意されていた。

エクステリアではこの時の変更で、ワゴン全車を角型ライトとしている。これは上級モデルのみ角型ライトとしていたバネットへの対抗策と言ってよいだろう。
さて、ここでお見せしているのは、ニチモ製1/24スケール・プラモデルのタウンエース・エクストラである。当時はレジャーブームに乗ってワンボックス車のプラモ化が多く、バネットやライトエースなどもキット化されていた。タウンエースでは、同じ初代後期型がバンダイからもキット化されている。

このキットは当時のニチモの優れた技術力が注ぎ込まれており、圧倒的な再現性の高さを見せている。すでに写真を示した通り、実車そのままのシートアレンジが可能なインテリアはまさに圧巻だ。またシャシー裏面も非常に緻密なモールドがされており、モーターライズ可能ながらも後輪デフをシャシーとは別体とするなど、同社の「史上の栄光車」シリーズより上を行く充実度を見せている。マフラーはサイド出しとノーマルが選べるが、ホイールは社外アルミ(ボルク・メッシュ)のみだ。また、残念ながらブレーキパーツは付かない。

バリエーションとして、3列目シートを取り払いチェストを据え付けた「カスタム」、同じく後部スペースにテレビやオーディオをセットした「スーパーカスタム」の2種類のキットがあったが、ここでお見せしているのは、実車そのままの室内からも分かるようにノーマル版だ。ただし、前述の通りホイールは社外アルミのみ、またルーフラックやリアラダーが装着されている。なお、リアクオーターパネルのドアレールのパーツはそのままではドアをスライドさせることは不可能で、ドアを開ける際には取り外すという構成。

別体ルーフは固定して仕上げる
このキットは「完成後もインテリアが鑑賞できる」という触れ込みで、ハイルーフ部分がボディとは別体となっている。スライドドアの開閉を活かすなら(キットは切り離し式)、強度の面からルーフ別体は諦めねばならないだろう。作例ではルーフを固定、左側には隙間ができるので光硬化パテで埋めている。また、中央部のサイドシルがないので、そのままではボディサイド前後が開いてしまう。そこで、プラ板でブリッジを渡して対処した。スライドドア開口部にはプラ板でフランジを設け、ドア側には浮きを抑えるためツメを付けた。

サンルーフは塗装の厚みを考慮して、横幅を0.4mmほど詰めた。リアハッチも同様の理由から、外周をひと周り削り込んでいる。当時のキットらしく車名ロゴのバッジなどはモールド表現だが、これはキットを活かしてそのまま仕上げた。ホイールアーチはヘリを削って薄く見せている。

サーフェイサー、Exホワイトで下塗りした後、ボディをイエローに塗装。ガイアカラー025黄橙色をそのまま使用した。デカールは経年劣化で使用不可能だったので、スキャナーで取り込み自作デカールを起こした。ボディ内側には内装色を吹くが、窓開口部をマスキングテープでベタッと覆えばOK。キットではルームミラーが再現されていないので、プラ板で自作した。マフラーはサイド出しを選択、メッキは質感が軽く感じたので剥離してスターブライトシルバー(ガイアカラー)を吹いている。

リアウィンドウには熱線のモールドがなく、カッターなどでケガいてディテールアップせよと説明書では指示しているが、あまり良い結果にはなりそうにないので作例では省略している。今や非常に貴重なキットなので、「参考にして作ってみてください」と言えるものではないのだが、モチーフに相応しい楽しさを持った傑作キットであることを感じ取って頂ければ幸いだ。

作例制作=北澤志朗/フォト=羽田 洋 modelcars vol.171より再構成のうえ転載
CARSMEET web編集部

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