モデルカーズ

歯切れの良いボディを切り刻んで再現、とは!? イマイ/アオシマの「初代シルビア」プラモを徹底改修!【モデルカーズ】

1960年代国産車中随一の美クーペ

今では走り屋のイメージが強い日産シルビア。車種消滅後の今も、最後の3世代、すなわちS13~S15の各モデルは人気が高い。その中でも、特にスタイルの美しさで評価の高かったのはS13型だが、そのスタリングが初代シルビアへのオマージュとなっていたことは、今ではあまり意識されていないようだ。初代シルビアは、1964年の東京モーターショーでプロトタイプが発表された後、翌1965年に発売された。1960年代の日本車では屈指の美しさを誇る瀟洒なクーペである。
このスタイリングについては、長年「BMW507を手掛けたアルブレヒト・ゲルツによるもの」という説が流布してきたが、ゲルツはあくまでアドバイスを行ったにすぎず、実際には日産の社内デザイナーによるものということが明らかになっている。「クリスプ・ルック」と称したように、エッジの利いた歯切れの良いボディはどの角度から見ても美しいが、パネルの継ぎ目を全て埋めるなど、その仕上げには細心の注意が払われていた。
この美しいボディは専用のシャシーに架装されたのではなく、機構的にはダットサン・フェアレディ1600(SP311)のものをそのまま利用していた。そのため、OHV 1.6Lエンジンと前ダブルウィッシュボーン/後リーフリジッドのシャシーがもたらす乗り味は、繊細なボディに似合わず硬派なものだったようだ。ただし、クルマとしての性格付けはあくまで高級パーソナルクーペであり、インテリアにもそれは強く表れていた。

しかし、いかにクルマそのものが良くても市場のニーズに合致しなければ成功とはならないのが悲しいところで、初代シルビアのコンセプトは当時の国内市場には早すぎたのだろう、3年後の1968年に生産を終了している。シルビアの名が復活するのは、それから7年後のことであった。

初代シルビアのプラモデルはイマイの1/24スケールのものがよく知られており、このキットは現在もアオシマに金型が引き継がれて何度も再販がされている。これは実車のムードを程よく捉えた好キットなのだが、基本設計が古いこともあり、やはりそのままではイメージ通りとはいかないようだ。そこで、このキットをベースに徹底的に手を加えてみたのが、ここでご覧頂いている作例である。簡単に組み立てたキットのままのものと比べて見て頂くと、その変わりようが分かるだろう。

ボディをバラバラに切り刻んでの大手術!
まず、各種写真からボディ形状検証用のテンプレートを自作した。「日産1/4」とあるのは、実車デザイン過程で作られた1/4スケールモデルを日産ギャラリーの展示で撮影したもの(真上の写真がそれ)から。「品川」とあるのは、品川で開催された実車イベントで撮影した写真から。「G-W」とあるのは、某旧車雑誌の誌面から。それぞれを1/24スケールに合わせて透明プラ板に転写した。これを使ってボディ形状を検証してみると、色々な部位のズレやラインの違いが見えてくる。赤がボディのモールドをなぞった線だ。

検証の結果から改造の概要を決めた。真ん中が制作の芯とするボディで、両側は部分的に活用するためのもの。つまり、3コイチだ。リアデッキ上面は張りが足りないがパテ盛りなどで造形するのは手間なので、ボンネット部分をトランクの形に切り出し(青いマーキング)、移植することにした。まず、フロントウィンドウ下のラインを前進させ、ノーズを3mm伸ばす。このため窓枠およびワイパーカウル部分をヤスリで削った。Aピラーの太さも気になるので、削ってウィンドウを拡幅。

そして各ボディを解体。左のボディはフロント下部/トランク上面(ボンネットを転用)、左右ドア切り出し用。右のボディはボンネット、フロントエンド切り出し用。ドアも切り出したのは、左右で形に差があるのを修正するため。まずリアフェンダーのボリューム増しだが、ここは当該部(赤斜線でマーク)を削除し、ドナーボディから前輪とドアの間を移植する。リアパネルも一旦切り離し、テールランプ位置を基準に上へずらした。裾が寸足らずになるがパネル自体の角度を起こして対処。裏の不要なモールドを削っておく。

リア左右の角はゼリー状瞬着と硬化スプレーで固める。リアウィンドウとトランクリッドの間のボディパネルは、エバーグリーンのプラ材で。トランクリッド上面はボンネットからの転用、エッジから下の部分(「B-2」と書かれている箇所)はトランクからで、両者を組み合わせている。リアエプロン(バンパーより下の部分)の厚みを増すため、1mm厚のエバーグリーンを接着して成形、バックランプ取り付け穴の箇所を切除しておく。

ボンネット/ボディ前端の不要箇所を切除し、エプロンパネルも取材写真を見ながら不要箇所を削除する。ボンネットと前端パネルを切り離した上でボディに接合、青くマーキングした箇所が延長部分となる。ホイールアーチ形状も修正、まずゼリー状瞬間接着剤+硬化スプレーで裏打ち後、表面をフラットに削る。さらに、同じく瞬着+硬化スプレーでパネルを延長し、テンプレートを元に正しいアーチ形状をマーキング。リューターで削って整え、最後にプラ材でフェンダーリップを作り直した。

サイドウィンドウの形状をテンプレートで検証、リアクオーターが小さすぎるようなので修正する。これも赤ラインがキットのモールド。実車写真(カメラをウィンドウ面と平行にして撮影したもの)を1/24スケールとなるよう調整、その上に0.2mm透明プラ板を仮止めし、プラ角棒接着して窓枠を作る。固着したら、枠の部分だけ残し周囲と内側をカットしてドアサッシの出来上がり。クオーターウィンドウの窓枠も同様にして作った。

これ以上詳述していくとスペースが足らなくなるので、この辺で止めておこう。一旦削除したワイパーカウルはフジミ製S30Zから移植するなどしてボディを仕上げた。シャシーはフジミのフェアレディSR311(旧日東の金型)から流用、マフラーのエンドパイプを作り直している。インテリアはキットのものを使いつつ、シートはタミヤのアルファロメオGTAのパーツにインサート部を組み合わせて自作した。

作例制作=坂中善之/フォト=羽田 洋 modelcars vol.196より再構成のうえ転載
CARSMEET web編集部

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