発売されたばかりの新型Zは、歴代Zを彷彿させるデザインが採用され、テールランプにはZ32をモチーフとしたLEDライトが採用されていたことでも話題である。ここで紹介するのは、そんな懐かしきZ32をベースに90年代初頭に販売されたコンプリートカー、ZEEK 300ZXを再現したモデルカーだ。ミントグリーンのボディにポルシェ928のコンビネーションランプを埋め込んだ衝撃のモンスターマシンを、みなさん覚えていらっしゃるだろうか?
欧州の公認チューンドカーを日本でも!
自動車文化が成熟してきた1980年代後半から90年代初頭、クルマは生活の道具だけではなく自分を表現するひとつのアイテムとなり「他人と違うクルマに乗りたい」という願望に応えるべく、カスタム、チューニングといった文化も大きく成長してきた。しかしまだ、改造という行為が暴走族と同義語というような認識のされ方だったのも事実。そこでいよいよ産まれてきたのが、公認チューンド・コンプリートカーという存在だ。自動車文化が早くに成熟していた欧州では、アルピナやAMGといったこの手のジャンルは古くからあったが、そんな概念が日本にもやってきたのだ。輸出仕様の300ZXをベース仕立てたチューンドカーその口火を切ったのは、当時BMWハルトゲのノックダウン生産を行っていた、京都のトミーカイラではなかったかと記憶している。
今回制作させて頂いたのはZEEK(ジーク)300ZX。先述のトミーカイラ等と比べれば、その事業規模は小さく、クルマの雰囲気にもやや荒削りな印象を受けるが、れっきとした公認チューンドカーである。ZEEKという名はアゲイン・コーポレーションが送り出すチューンドカーのブランド名であり、輸出仕様の300ZXをベースに仕立てられていた。まず目を引くのは、ポルシェ928のコンビネーションランプを咥え込んだフロントマスク。大抵、他車のレンズ類を移植すると違和感が伴うものだが、このクルマでは見事なまとまりと迫力が実現されていた。リアには大きく拡幅されたオーバーフェンダーが備わり、滑らかにリアエンドへと繋がっている。リアバンパーもマフラーを避けるように両側が大きくえぐられたデザインだ。ミラーはECワークス製と思われるGr.Aタイプが奢られている。これらのアイテムをホイールごとミントグリーンで包んだこのデモカーは、絶対的な特別感を漂わせていた。エアロパーツはアブフラッグ製を使用したと思われるが、ZEEKブランドのコンプリートカーにはよく見られた手法だ(同時期に存在した70系スープラベースのZEEK3.0iは、西独ポステルト社のワイドボディキットを使用していた)。更に数値的にも特別な存在で、最高出力510ps、最高速度305km/h、お値段1095万円とされていた。
タミヤのZ32にフジミ製928から移植
作例はベースにタミヤのZ32を使用。フロントのコンビランプをフジミ製928から移植、形状変更が必要なフロントスポイラーは、プラ板で要所要所のアタリを付けた後、瞬着パテの盛り・削りで形を出していく。この時、削る限界を見極めるのが、先に貼り付けたプラ板。これを基準に、それ以上削り過ぎないよう作業する。リアオーバーフェンダーもプラ板で張り出し量を決め、それをガイドにパテで仕上げた。パナスポーツG7はそのものズバリがなかったため、似た形状のアオシマ製インパルR5から加工。リムはオレンジウィールズの17インチを使い、キットのRE71と組み合わせた。元々キットの状態で配管やホース類が不足しているエンジンルームは、最小限の改造で済ませている。エンジンベイが白いのは、実車のベースがパールホワイトであったことに由来する。カーモデルの改造であっても、実在のチューニングカーの再現は、実車という明確な答えが存在するので、好き勝手に弄れないのが歯痒くもあり、また挑戦の甲斐があるところだ。