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“聖地”ディエップで発表されたアルピーヌA110のジャン・レデレらしい限定車!

“聖地”ディエップで発表された、創業者生誕100周年を記念する限定車『アルピーヌA110 GTジャン・レデレ』。その仕立ての意味を理解するには、ジャン・レデレ氏がどんな人物であったかを紐解いていく必要がありそうだ。

生誕100周年イベントで発表されたジャン・レデレ氏の名を冠した限定車。左が妻のミシェルさん。

2022年5月28~29日、アルピーヌが生産される”聖地”フランス・ディエップにおいて、創業者ジャン・レデレ氏の生誕100周年を祝うべく、1000台以上のアルピーヌが集結する一大イベントが開催された。そこでワールドプレミアとなったのが限定車『アルピーヌA110 GTジャン・レデレ』だ。

ジャン・レデレ氏は1922年5月17日、ディエップで生まれた。ディエップでの高校時代を経て、1945年11月にパリのHECビジネススクールへ入学。翌年10月ルノー・ディーラーの経営に関する論文で優秀な成績を収め卒業。それを当時ルノーのナンバー2だったピエール・ドレフェス氏へ送り評価を受けたことがきかっけで、当時フランスで最年少となる若干24歳でディエップのルノー・ディーラーを父エミール氏から受け継ぐことになり、彼の自動車人としての人生が始まった。

フランスの北、イギリス海峡に面した港町ディエップに1000台以上のアルピーヌが集結した。

彼は優秀なビジネスマンである一方、才能あるレーシングドライバーでもあった。ルノー4CVで出場した1950年のモンテカルロ・ラリーとディエップ・ラリーで優勝しているのだ。翌年には4CV1063で各レースに出場し実績を残すのだが、「アルプスを4CVで運転するのが一番楽しかったです。山道を運転する楽しさを発見しました」と、1955年に地元ディエップで立ち上げた『アルピーヌ』の名を予感させるコメントを残している。

彼の人物像が見え隠れする、こんなコメントが聞こえてきている。まず今回のイベントにも登場した妻のミシェルさんは「彼は非常に人望が厚く、多くの人々に愛される魅力的なキャラクターの持ち主でした」と語っている。また彼に選ばれた男たちは忠実であり続けたそうで、レーシングドライバーの故ホセ・ロシンスキー氏は「夕食やイベントの招待を拒否できなかったのは、ジャン・レデレだけでした」と信頼関係を称えたという。

今回限定車のデザインを担当したアルピーヌのチーフデザイナーであるアントニー・ヴィラン氏も、こう語っている。

「ジャンをよく知る人々からは、彼は本当にエレガントな人だったと言われています。当時の写真にもあるように、どこに行くにもきちんとしたスーツ、ネクタイ、そしてチーフを合わせていました。”The Gentleman Driver”と言うニックネームもありました」

アルピーヌを1955年に創業したジャン・レデレ氏。常にスーツ姿のエレガントな人物であった。

ビジネスにもドライブにも才能があり、人を惹きつける人間性があり、そしてエレガント。確かに当時のジャン・レデレ氏の写真を見返すと、ほとんどがネクタイ姿で、そのスーツの仕立てはいかにもよさそうだ。ジャン・レデレ氏の名前を冠する限定車は、そんなキャラクターに見合う必要がある。ヴィラン氏が続ける。

「今回採用したグリモンテベッロ Mはジャン本人がとても気に入っていた色であったことと、1963年に初めて個人の方が登録したアルピーヌ・ルノーA110のボディカラーであったことが決め手となりました。ジャンはアートに造形が深く、自身のルックスだけでなくクルマの細かいディーテルまで非常にこだわっていました。当時のアルピーヌにはデザイン部門はなく、全てジャンがデザインを考え、部下に指示を出しいたのです」

イベントでは限定車と一緒にF1マシンが走るデモランも行われた。

グリモンテベッロは、グリ=グレー、モンテ=山、ベッロ=美しいを意味するイタリア語。アルプスに魅せられ『アルピーヌ』をブランド名に冠したジャン・レデレ氏らしい色と言える。そして外装を合わせてブラックレザーとグレーステッチを採用、マイクロファイバーのトリムを追加したスポーティかつエレガントの内装もまた、いかにもスーツ姿のジャン・レデレ氏が似合いそうな組み合わせだ。

そんなキャラクターに合わせてベースモデルにはA110 GTが選ばれており、ウィークデイはエレガントに、ウィークエンドはスポーティに使い分けるのが、限定車『アルピーヌA110 GTジャン・レデレ』の正しい乗り方なのかもしれない。いずれにせよ、創業者の名前を冠したモデルを手に入れるなんて、アルピーヌ・ファンにとってはこれ以上ない喜びと言えよう。

平井大介

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