
1960年代日本のスーパースポーツカー
「マツダ」と言えば何を思い浮かべるか。「三輪トラック!」と言う人はかなりのご年配だろう。多くの人は、「ロータリーエンジン!」と答えるはずである。そのロータリーエンジンを搭載した初のマツダ車が、1967年に発売されたコスモスポーツだ。これはマツダ初の、と言うだけでなく、世界初の量産ロータリーエンジン搭載車であった。
【画像108点】見事前期型にモディファイされたコスモスポーツとその工程を見る!
マツダ(当時は東洋工業)におけるロータリーエンジンの研究・開発は1961年に始まった。チャターマークを始めとする数々の難関に悩まされながら、東洋工業の技術陣はその実用化に成功。その搭載車であるコスモスポーツは、1964年の東京モーターショーで、最初の試作車(ネーミングは「コスモ」)が発表された。翌年のモーターショーなどにもさらなる試作モデルを出展し、とうとう正式に発売となったのは1967年5月のことである。
夢のエンジンであったロータリーに相応しく、当時のSF的なイメージも併せ持つボディスタイルは、シトロエンDSや1953年型スチュードベーカーにインスパイアされてデザインされたという。サイドのルーバー部分のディテールにはフェラーリ、リアビューにはフォードからの影響も見受けられるが、円盤のようなルックスは今見ても魅力的だ。初代サバンナRX-7をはじめとして、後々のマツダ車にも大いにその残響を感じ取ることができよう。
コスモスポーツは発売翌年の1968年に早くもマイナーチェンジを実施、前期型L10Aに対し、後期型はL10Bとなる。最大の変更点はホイールベースの延長で、全長はほぼ変わらぬまま後輪が後方へ150mm移動。フロントフェイスも冷却効率向上のため開口部を大きくした。その後ウィンカー形状の変更など小改良も挟み、コスモスポーツは1972年まで販売されている。
前期型フェイスは丸っこさがカギ!
現在、コスモスポーツの入手しやすいプラモデルとしては、ハセガワ製1/24スケールのL10Bがある。優れた内容を持つ名作キットなのだが、できれば前期型もキット化してくれたら……と思う人は少なくないだろう。そこでこの作例では、ハセガワ製L10BをベースにL10A型へと改造を行ってみた。制作にはかつて限定販売されたメタル製エンジン付き”スーパーディテール”を使用。
フロント周りは作者の好みにより、『国産名車コレクション』のダイキャストモデルを利用。このミニカーを分解、ボディを複製し、当該部を移植している。丸みの表現に注意してみた結果なのだが、これは作る人各自の好みによるので、必須というわけではない。ハセガワのボディをベースにパテやプラ材で形状を変更してみても勿論よいだろう。また、今では貴重品に属する日東の前期型キットを改造に活用したが、工程レポートをよく読むと分かるように、このキットがなくても前期型の制作は可能であるので、読者の皆さんにもぜひ挑んでいただきたい。
最後に、制作した坂中氏からのコメント。「プラモ、ミニカーとも後期型が多いので、前期型の決定版プラモがほしいです。プロトタイプに改造しやすくなるし、もちろんプロトで出してくれても大歓迎」とのことだ。
- やはり新規設計のキットでL10A型が出てほしいものだ。
- 前期型特有のホイールは、なんとポンティアックGTOのパーツを利用して自作。
- フロント周りをナンバーステーに至るまで作り変えている。
- ホイールベースが短くリアオーバーハングが長い、独特のプロポーションがよくわかるサイドビュー。
- ワイパーはスーパーディテール版(エンジン付きキット)に付属のエッチングを使用。
- フェンダーミラーの鏡面はメタルインレット(これは通常版にも付属する)。
- ボディサイド下側にシャシーパネルのプレスが覗くのがコスモスポーツらしい特徴。できればシャシーは黒く塗りつぶしたくないところだ。
- ダッシュボードはほぼキットのままだが、メーターのデカールには手を加えている。
- いかにもスポーツカーらしいシフトノブ。サイドブレーキの取り付け位置は前期型のものに変更している。
- シートは後期型と差はないようなので、キットのものをデカールともども使用している。
- 室内用にもメタルインレットが付くとありがたいのだが。
- パーセルトレイは前期型らしく網目のモールドのない状態に改修。
- リアウィンドウから助手席型ダッシュを見たところ。
- ドア内張のプレートには糊付きアルミ箔を貼り込んだ。
- オリジナルデザインらしくまとまりの良い後ろ姿。
- スーパーディテール版を使用してエンジンも再現した。
- エンジンパーツはホワイトメタル製。エアクリーナーは前期型にするためノズルを2本から1本に変更した。
- イグニッションコイルの取り付け位置も変更している。
- ヒンジはスーパーディテール版キットに付属するエッチング。エンジンフードは前端の形状を前期型のものに変更している。
- フード裏側のフレームもキットに付属。
- ホイールベースを短縮し、後端を作り足したシャシー。
- ただしサブマフラーの取り回しは若干違っているかもしれない。
- アメリカ車的な趣もあるリアビュー。
- ハセガワ製コスモスポーツ。エンジンを載せたかったのでハイディテール版を使用した。
- 『マツダ・ロータリー・スポーツ』(弊社刊) より、側面写真を1/24に拡大。透明プラ板に転写してテンプレートにする
- 左右の写真が掲載されていたので、両方テンプレ化した。基になる優れた写真が複数ある場合、テンプレも面倒がらずに複数作ってみると良い。
- 同書初版(1979年10月)付録のセクション図と照合した結果、右アングルの方が有用と判明。
- テンプレートとハセガワのボディを照合してみる。
- 最新の1/24スケール製品(ただしダイキャスト製完成品)、『国産名車コレクション』Vol.04。
- これを分解・レジン複製したボディをテンプレートと照合。ヘッドライト周りはこちらに置き換えることに決定。
- 前期型コスモの特徴のひとつ、フルホイールキャップの再現。形状の似ているモノグラム1/24 1964ポンティアックGTOからホイールを流用する。
- タイヤにはまっているのが、メッキを落としたGTOのホイール。これにハセガワ後期ホイールからリムと取り付けピンを切り出して組み合わせる。
- 裏側をリューターで削る。
- このホイールはあくまでキャップなので、放熱孔のヘリを薄く見せたいのだ。
- キットのタイヤは後期用のラジアルタイヤ。L10Aには、同社S30Zのタイヤに替えるほうがバイアス感が出る。
- 中央のメッキ部分は日東L10Aのものを切り出して複製して使う。
- そのパーツ。
- レジンで複製したホイールパーツと、S30Z流用のタイヤ。
- 上面のセクション図からもテンプレートを作り、ノーズ先端入れ替えのための切り離し箇所選定に活用する。
- ボディに中心線を引き、テンプレを反転させて左右に描き込む(セクション図は左半身のみのため)。写真右が『国産名車』の複製ボディ。
- 金切りノコで切断。
- ボディ側、先端側、どちらも引いたラインをしっかり守って整形。
- 同じく。
- 今度はフロントエンドも含めたノーズ全体のテンプレ作り。上面図が半分しかない場合、中心線を引いて透明プラ板を反転し再度描く。
- 仮接ぎしたボディを照合。ボンネット先端のラインはもうすこし前だ。
- フロントエプロン(バンパーより下)は、シャシーとの合いを考慮しハセガワ製を組み合わせる。そのため、両者を上下に切断。
- 同じく。
- ハセガワのエプロン左右ダクトを瞬着と硬化剤で塞ぎ、縦スリットの開口部を下描き。
- 透明プラ板でエプロンの不足分の型紙を作る。正面図で横幅を決め、
- 上面図で尖り具合いを決める。
- 0.5mmプラ板に描き写してカット。
- 中央に2.0×15×6.3mm平板を貼り、その上に切り出したプラ板を接着。
- マーキングした箇所、後期型特有のマッチョな部分を削ってシャープに。
- ヤスリで削る。
- 1mm角棒をまず真ん中に貼り、
- 続けてそれぞれ左右を貼る。ひと皮剥く感じで再度ヤスリがけし、左右外側の角にゼリー状瞬着を爪楊枝で盛ってスリットを半月状にする。
- スリット内側は中央方向へ向けて風が通るようになっているので、
- 正面からは塞がれているように見えるさまを再現する。
- 表からも瞬着を微量盛り足してアールを表現。デリケートな表現につき、硬化剤を使わず自然乾燥で。
- 開口部のモールを0.25×0.5mmプラ帯を貼って再現。テンションの掛かる両端は折れ防止のためゼリー状瞬着で固定。
- ナンバーステーを作る。1×3.2mm平板をノギスで3.0mmに調整、0.8mmドリルで開孔。
- キットパーツのナンバープレートに両面テープを貼りステーを仮止めし、
- ゼリー状瞬着で位置決めし、瞬着を流して固定。
- プレートを剥がし周囲を精密ヤスリで調整。
- ジャンクパーツ(ベレットGTRのフォグランプ)をヘッドライトに活用。内側モールドをカットする。
- 猫の開いた瞳孔のようなパッチリお目々に。
- ライト基部を拡げる。
- キットのL10Bは全長4130mm、対してL10Aは4140mm。L10Bバンパーは少し短いので日東のパーツを使いたい。
- 日東製バンパーは幅が広いので、1mm洋白線で足を付け中央でカットして詰める。
- テンプレのボンネット部分をカット。フード取り用にもうひとつ用意したハセガワのボディに描き写す。赤色がキットのモールドライン。
- フードを切り離し、モールドをエポキシパテで埋める。
- ボディ、ノーズ先端上下の3つのピースを瞬着で接合、繋ぎ目を成形する。
- 切り出したボンネットがはまるように開口。カットラインをひき、
- リューターで大まかに開け、ヤスリで成形。
- ホイールアーチ部分の隙間に、プラ材を曲げながら瞬着で固定。
- 削って仕上げる。
- フードの受けをプラ材(0.4×4.8mm平板)で作る。余裕を持たせて接着し、開口部の形に合わせて削り込んだ。
- スペアタイヤ収納部の出っ張りは前期にはないので、裏打ちして削る。
- ハセガワL10Bのバンパー中央は緩やかなアールが付いているが、L10Aの図面にはほぼない。リア中央を平らに削れば、日東のバンパーをそのまま移植できる。
- ホイールアーチを前にずらす。テンプレを基に不要な箇所をマーキングし削り取る。
- 複製した日東のボディからリアオーバーハング下部を切り出し、図面を両面テープで貼り付けて不要箇所を削る。
- 側面のみ切り出しハセガワの当該箇所と入れ替え。
- このようになる。
- リア中央をフラットに近く削ったので青線箇所をスムージング。キーホールも約1mm、トランク寄りに移動する。
- 日東バンパーは1mm洋白線で脚付けし、取り付け可能に。
- ホイールベースの差は150mm。÷24で6.25mm切り詰める。
- 詰める前(上)との比較。
- リアオーバーハングを延長、スペアタイヤハウジングも不足分を作り足した。
- 後半を前方へ移動した分、この出っ張りが邪魔になってくる。この部分は前期には存在しないことを資料から確認、切除。
- プラ板で塞ぐ。
- 型紙を作って谷になる部分のパネルを自作、
- 塞いだ部分の上に斜めに接着する。
- サブマフラーをプラ板の積層から削り出し、排気系全体を前期仕様のシャシーに合わせて改造。
- オルタネーターをデスビの左へ移動、ベルトの一部を自作。
- エアクリーナーも2本ノズルから前期の1本ノズル(プラ材から自作)に変更。
- 前期ラジエターには大きなシュラウドが付くが、1/20のジャンクホイールからリムを2個組み合わせて再現。
- エアクリーナーの下地にはファンデーションクリームを塗装した。
- 前期の場合、シート後ろのパネル/パーセルトレイには網目がない。キットパーツは上下に切り離し、タイヤハウスが当たる箇所を削る。透明プラ板にトレイとサービスリッドの形状を転写、
- パーツの上に貼る。下方のリッドはバッテリーの蓋だが、前期ではバッテリーはトランクに収納されており不要なのでモールドを埋める。下側のパネルはプラ板で作り直した。
- 前期はサイドブレーキがフロアトンネル中央に位置するので、プラ板を貼り、開口して取り付け部を自作。
- 前期型のタコメーターにはイエローゾーンがなく、レッドゾーンも細いので、ガンダムマーカーでデカールを修正。
- インパネには計器類のモールドが入っているが、軽くヤスリ掛けしデカールを貼り、マークソフターで密着させた。