50年以上に渡り自動車市場で独自のポジションを築いてきたレンジローバーがフルモデルチェンジ、第5世代へとバトンタッチされた。完全新設計となるアーキテクチャーをはじめ、全身まるごと最新技術のショーケースという趣だが、当のレンジローバーはどこ吹く風。「SUVなんて軽々しく呼んでくれるな」。そもそもレンジローバーとは、そういう“乗り物”なのである。
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レンジローバーの哲学が全身に貫かれる
クルマのデザインに関しては、余程のことがない限り意識的に言及しないことにしている。デザインに関する印象は個人の嗜好が大きく支配する。自分なら見たくもないと思うようなデザインでも、それが月に1万台も売れたりするものだから、自分ごときの戯言など意味がないと悟ったからだ。
しかし新型レンジローバーの内外装のデザインについては、ひと言いわずにいられない。これほど「上品」とか「品がある」という表現がピッタリなデザインは稀ではなかろうか。特に昨今の高額なモデルには過度な装飾や誇張が散見される。ひるがえってレンジローバーは、極限までシンプルさを追求したようなデザインである。テールライトをブラックアウトして存在感を消すなんて、そのアイディアと潔さには感服する。
たとえば自分は、エクステリアから「シンプル&クリーンな品のよさ」という印象を受けた。すると、ドアを開けて目に飛び込んでくるインテリアの雰囲気、そしてステアリングを握ってドライブしている時に五臓六腑に染み渡ってくる乗り味まで、ずっと同じ印象で繋がっている。ずいぶんとスポーティな格好をしている割に乗ると普通とか、大人しいスタイルのくせに過剰に反応するとか、デザインと乗り味が微妙にズレているクルマが少なくない中にあって、このクルマの入口から細部に至るまでの統一感は見事だと思った。