遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!? 今回は当連載初登場となるメルセデス・ベンツから、普通に考えればW124、W201あたりが順当ですが、そこはこの連載。ちょっとだけ捻って!? C123に行っちゃいますヨ!
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コンパクトなメルセデス・ベンツ……って、全長4.8mくらいあるじゃん! 全然小さくないじゃん!
日本市場でメルセデス・ベンツも今やすっかり”普通のクルマ選びの選択肢”になりました。現在では、Bセグメントでスタートしてフォルクスワーゲン・ゴルフ・イーター最右翼となったAクラス(W168、169、176~)など価格的に求めやすい車種も登場。ワイドバリエーションを展開しています。
しかし190クラス(W201)が登場する直前のメルセデス・ベンツの乗用車は、片手で数えられるほどの種類しかありませんでした。しかも一番小さいモデルが現在のEクラスだから驚きです。初代EクラスたるW124は当初”ミディアムクラス”と呼ばれていましたよね。その前身W123は1976年登場ですが、W123のさらに前のW114を含め、W201が出るまではなんとコンパクトと称していました。全長4.8mくらいあるじゃん! 全然小さくないじゃん! ってツッコミ入れたくなりますが、それはSクラスに対してなので仕方ないです(笑)。”ボディは50年、エンジンは100年もつ”と謳われたほどの耐久性、華美とは違う上質さと高品質を持つことから高級車というよりは”究極の実用車”と呼ばれるW123は、メルセデス・ベンツがオーバースペックでクルマを作っていた印象とともに、現在でも中古車市場で一定の人気を持つのはご存知のとおりです。
ところで、メルセデス・ベンツはセダンをベースに常に魅力的なクーペモデルを用意しているのですが、その文法どおりにW123にもクーペ版の『C123』が存在しました。サッシュレスドア、Bピラーなし、85mm短縮した全長とホイールベース、50mmほど低められたルーフによってグッとパーソナル感が増していることが特徴です。あくまでもセダンに対する上位版2ドアクーペという位置付けなので、スポーティさを売りにしていないのもエレガント。1977年の登場時は2.3リッターの230C、2.8リッターの280C、そして2.8リッター+インジェクション版の280CEがラインナップされていました。エンジンはいずれも直6、2.8リッターはツインカムヘッドを持ちます。のちに2.3リッターもインジェクション化され、バリエーションは230CEと280CEに集約されました。日本では280CEのみが輸入されましたが、そのプライスタグは900万円以上。1970年代後半でその額はかなりの高級車になりますよね。
そういえばこれ書きながら思い出した! 確か実家に、小学生の時買ってもらった『ニッコーセミデラコン』というラジコンの280C E(レース仕様)がまだ残っているはず。C123でのレースは当時も今もあまり強い印象がなかったので、ネットでそのラジコンの写真を見たら、当時のメルセデス・ベンツのセミワークス的存在? で1980年のモンテカルロ・ラリーなどに280CEを送り込むなどして活躍していた『スクーデリア・カッセル』仕様だったことが判明。なんてマニアックなラジコンだったんだ!(笑)
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。