遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るのがこのコーナー。今回は数あるイタリア車の中から、まさかのブラーボ/ブラーバを選びましたヨ!!
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“ゴルフと本当に勝負する気があるのか!?”というデザインを纏うあたり、さすがイタリア車!
フィアットといえばパンダ、プントや500が日本ではよく知られています。ところがそれはフィアットの車種のごく一部。日本に入ってきていないフィアットは膨大にあります。今回取り上げたのはそんなフィアットの中から、『ブラーボ/ブラーバ』です。ブラーボ(Bravo)は3ドア、ブラーバ(Brava)が5ドアハッチバックでした。厳密には一部が日本の地を正規で踏んでいます。そう、アレです。3ドアが『ブラビッシモ』として販売されていました。ブラーボという車名で販売されなかったのは、単に三菱に『ブラボー』という車種があったからでして……(涙)。
そのブラーボ/ブラーバは1995年に登場。初代フィアット・ティーポの後継モデルにあたるCセグメントのハッチバックです。巨人、フォルクスワーゲン・ゴルフに真っ向から当たるモデルなのにヌメッとしたボディラインで、ブラーバに至ってはスリットのようなテールランプ、ずんぐりとしたフォルムを持ち、”ゴルフと本当に勝負する気があるのか!?”というデザインを纏うあたりは、さすがイタリア車だなと感じるポイントです。
日本では3ドアのごく一部グレードが売られただけのクルマなので、情報が著しく少ないブラーボ/ブラーバ。下は1.2、上は2リッターまで数種のガソリンエンジンと1.9リッターのディーゼルエンジンを横置き搭載する定石どおりのFF車です。さすがにブラーバを運転したことはありませんが、右ハンドル+1.6リッター+4速A/Tというフツーのスペックを持つブラビッシモは、ソツのないとてもよくできた実用車でした。
フィアットって、グランデプントなどもそうなのですが、非走り系の地味~なモデルでも広い車内を持ち、走る、曲がる、止まるという基本的な性能がしっかりしていて、実用車として必要なツボを高いレベルで抑えているのが好きなのです。古のフィアットではリトモのセダン版『レガータ』あたりがそんなクルマでした。あれはシートが抜群に良かったなぁ。まあ、かつてはどんなに実用車として素晴らしくても品質が伴っていないという欠点がありましたが(涙)。
ところで、ブラーボ/ブラーバは2001年にフルモデルチェンジして、エッジが立ったデザインのスティーロにバトンを渡しました。で、そのスティーロの後継はというと、これがまたブラーボなのです。2007年登場の2代目は、ドア数に関係なくブラーボです。でもそのデザインがパッと見グランデプントにそっくり。トリノに行ったらひとまわり大きくてやたらにカッコいいフィアットが大量に走っていて、”これはなんだ!?”と驚愕&混乱した記憶があります。そしてご存知かどうかわかりませんが、その後継の車名にはティーポが復活……。このように、本国フィアット道は奥深く険しいのでありました。
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。