遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回はポルシェ! と思いましたが、924、944あたりでは普通すぎるということで!? ちょっとだけ目線を変えて、ロードカー・ロスマンズ・ポルシェ詰め合わせですヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第37回『いすゞ・ピアッツァ・ネロ』の記事はコチラから
平べったいスポーツカースタイルに不釣り合いなタイヤと凄い地上高にエレガントな雰囲気のロスマンズ・カラーというアンバランスさ!
1980年代に活躍したレーシングカー、ラリーカーの印象的なカラーリングでも特に人気が高いのが(遠藤イヅル個人の印象・笑)『ロスマンズ・カラー』です。ロスマンズはタバコの銘柄で現在は存在しない……という話はさておき、ロスマンズといえばポルシェのグループCカー『956』、『962C』のイメージが強いですが、砂漠を駆け巡ったラリーレイド仕様の『959』を思い出す人も多いことでしょう。平べったいスポーツカースタイルに不釣り合いなタイヤと凄い地上高、おまけにエレガントな雰囲気を漂わせるロスマンズ・カラーというアンバランスさ。にもかかわらずめっぽう速い、パリ〜ダカール・ラリー仕様959のかっこよさたるや! ということで、今回は『ロードカー・ロスマンズ・ポルシェ詰め合わせ』でございます。
959の原型はポルシェがWRC(世界ラリー選手権)のグループB参戦に向け開発した試作車『グルッペB』(1983年)で、その量産ホモロゲーションモデルが959だったこと、そしてグループBが1986年で終わってしまったため959がWRCを走れなかったことは有名です。450psを発生する956/962C直系のDOHCフラット6ツインターボエンジン、ゲトラグ製の6速M/T、トルクスプリット式のフルタイム4WD……という当時最先端のメカニズムを搭載し、それでいてスパルタンなマシーンというよりは911の延長にある快適なGTカーだった959は、本当に衝撃的なクルマでした。グループBこそ参戦できなかったものの、そのポテンシャルはラリーレイドで遺憾なく発揮され、1986年のパリダカでは1-2フィニッシュを含む3台が完走。ポルシェの技術力を見せつけました。
しかし、実は959が勝つ前にもポルシェは『953』でパリダカを優勝しています。953とは聞きなれない名前ですが、開発途上だった4WDシステムを911に組み込んだ実証用モデルでした。こちらも911なのにやたらに地上高が高く、そしてロスマンズ・カラーのためシビれるほどのカッコ良さです。ちなみにロスマンズ・カラーのレーシング/ラリー・ポルシェは他に『954』があります。これもまた”なにそれ!”なのですが、別名は『911SC/RS』というラリー用のグループBモデルです。駆動方式は通常のRRのままで、WRCではなく主にERC(ヨーロッパ・ラリー選手権)で戦っていました。ランチア・デルタS4を駆り、そしてレース中に亡くなった、あのヘンリ・トイボネンも乗っていたんですよね。
そうそう、ロスマンズ・ポルシェはまだあります。959のル・マン参戦版『961』も忘れてはいけません。ロスマンズ・カラーだったのは参戦2年目だけで、しかも成績は残せませんでしたが、959、956/962Cとも違う迫力あるスタイルが特徴的でした!
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。